晴れの日のレインコート
大雪回。寒くなってきましたね~! 皆さんも体調にお気を付けて! ではでは。
カンカン照りの冬景色。吹雪いた後の路地に颯爽と光の矢が反射する。こんな日に他の冒険者は冒険になどいかないであろう。しかし、私はご存知の通り人間ではない。
わずかに残る緑の茂みを搔き分け、真っ白い雪景色をひたすら朝から進んでいた。
(ピイピイピイ・・・)
山鳥の声が響いている。恐らくかなり近くに巣でもあるのだろう。なんだろう。この道は先ほどにも見た気がする。
ようし、もう少しだけ進んでみるとしよう。どうせ寒さも感じず、空腹で死ぬこともないのだ。何故なら私はあの伝説の口裂け女なのだから。
そうこうしているうちに、1週間がたってしまった。どうしよう。流石に長靴の中まで雪が入って来ていて、気が滅入ってしまう。
「そろそろ認めても良い気がしてきたのじゃ。我遭難中なのじゃ。」
救助なんて必要ないし、目的地にはそもそもたどり着けていない。もはや雪景色に目を毒され、山道を徘徊している。
「我もしかして、隣国まで行ってしまったりしてな。」
クスリと思わず笑みがこぼれる。しかし、ギルドの依頼失敗料が嵩んでしまっていないかだけが恐怖の要因だ。
我からお金を取ろうとすれば、皆○しにしてくれようか。一つのきっかけにしても良いかもしれない。
そんな悪い事を考えながら、地面を踏みしめて行った。
*****
今晩も野宿か。わずかばかりの薪をくべ、焚き火を試みる。私は何故この世界に来たのか。
なんてこった。まだ一人の人間も〇してないではないか。気が緩んでおったな。世界最恐の怪異になっておばあちゃんに会いに行くのじゃ!
明日から大量殺戮を計画することを決め、私は今晩も雪に埋もれて行った。
*****
ズボリ。雪の中から腕を掘り当てられる。
「あのお。私、グールの冒険者なので、別に救助いただか無くても・・・。」
「もしかして、ご迷惑でしたか口裂け女様。」
「え、お主がなぜここに。」
「口裂け女様が何日も戻って来ないので、もしや雪で遭難して、怪我でもされてないかと思いまして。」
「大丈夫ですか。」
「お主の大事なタンポポはどうした? 見ておかなくても良いのか?」
「今の季節は魔獣が少ないですし、あなたの事が心配でしたから。」
少し怒った調子で彼は見つめて来る。
何だ。何だというのだ。この男は。自らの命を危険にさらしてまで、怪異である我の身を案じて探してくれていたというのか。
こやつまさか我の身体が目当てで、接触を図って来ているのか? もう一回手で触れでもしたら、すかさず鎌で肉をはいでやる。
「もう道に迷わないように、よかったら町まで手をつないで行きましょうか?」
おずおずと出された手を気づくと握ってしまっていた。
あれ。思ったより嫌悪感を感じない。ま、まあ、町につくまでじゃからな。
夕焼けに染まった雪景色を2人の足跡が刻んで行った。
ううん。口裂け女さんなかなか気難しいですね。でもこっからです! どうやって攻略するかを考えるのが楽しいですからね!