表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒楓は工事中  作者: 黒楓
6/8

形のいい胸 ②

私の恋心や、私の大切にしている“洋輔くん”に散々な事を容赦なくする黒楓…


お陰で私はもう(/_;)です。


黒楓!!

だからせめて、この冴子さんに言ってあげて欲しい。


「あなたは愛が分からないと言うけれど、あなた自身がそれをたくさん持っている。そしてそれを目の前に取り出して見せてくれる未来が待っている」って事を…

部屋は取っているのかと聞かれて、まだだと答えたら、この部屋を予約された。


入ってみると、同じラブホとはいえ、この間、先輩に連れられていった所とは明らかにグレードが違った。広くてシアタールームや天蓋ベッドまである。


バスルームの造りも違うし、このバスローブだってペナペナじゃなくふんわりと柔らかい。

明らかに女子ウケを狙った部屋だ。


また、()()()()とした考えが頭に浮かぶ。


佐藤さんが昨日泊まったホテルはどんなのだったのか?


前の所みたいなのも見窄らしい…だからといって今日みたいな所でも、相手に篭絡されている気がする…


バカだ!


オレはバカだ!


なのに次々と事柄がアタマをもたげて来る


佐藤さんは“初めて”を盗られたのだろうか


佐藤さんは簡単にしてしまうのだろうか


でも、少なくとも


昨日オレが佐藤さんと会えていれば

『初めてあった人と寝てしまった どうしよう』

という事にはならなかった。


逆にオレは佐藤さんを抱けたのだろうか


オレはもう、自分の中で常に押し殺そうとしていた欲求と対峙するしかなかった。


“佐藤さんを抱きたい”


相手の男はオレ以上に佐藤さんを大切にするのだろうか


でも…

オレはカノジョに何をしたというんだ?


現に、カノジョの誘いを断ったじゃないか


それは仕事だったから…


ふいにチャイムが鳴る。


“別の佐藤さん”が来たようだ。


“佐藤”を名乗るオンナを呼んだオレはカノジョを大切にしているのか?


アタマの中をグルグルさせながらもドアを開ける。


「外、雪降ってきたよ。トートバッグの中にも雪が舞い落ちた」

そう言いながら入って来たオンナはハイネックのセーターの上にいかにも作業用のジャンバーを羽織りデニムにごついスニーカーを履いていた。


そして、オレの顔を思い出したようだ

「ああ、キミか… もう呼んでくれたんだ。アリガト」


「オレは別人かと思いました」


オンナは自分の恰好に肩をすくめた。

「ごめんね~ バイト先から直接来ちゃったからさ。しかし、キミあれだろ? ウチのマネージャーに部屋取らせただろ? ダメだよ、たかだか2時間くらいの事でこんな高い部屋取らせちゃ! アイツ、このホテルとニギニギでさ、『店の女の子の職場環境の向上』って名目で高い部屋に客を送り込んでんだから」



バカにされた気がした

こんなオンナに!


オレはオンナの腕を掴んで荒々しく引き寄せた。

「ちょっと待って! 私、カラダ冷え切ってるから、シャワーで温めさせて」


オレは構わずオンナの唇を奪おうと()()()()()、顔を背けたオンナのポニーテールを右手で掴んだ。

オンナはオレの胸に両手をついて押し戻そうとするが、そうはさせるか! こっちは鍛えているんだ。左腕一本でオンナを捉え、ポニーテールを手綱のようにしてオンナの顔をこちらへ向かせる。


「嫌だってば!!」

抵抗するオンナと『凌辱』という言葉がオレを呷る。


動物の息を吐いて露わになったオンナの左耳に嚙みついた時、向う脛が激しい痛みに見舞われてオレは思わず身を離した。


オンナのごついスニーカーで蹴とばされたのだ。


「そんなにヤりてえか!!?」


オレから逃れたオンナはジャンバーを脱ぎ捨てて床に叩きつけた。


「だったら、ホラッ!」

オンナはニットの裾をその中身ごと掴んでゴソッ!と引き上げて顔を覆い隠す覆面にし、その下のブラのホックを外し胸も露わにベッドに身を投げた。

「ヤレ!! この野郎!!」


オレは我に返った。

顔が青くなる


「ヤレって言ってんだろうが!! このフニャチン野郎が!!」


オレは膝をついて土下座した。

まったくのフニャチン野郎だ。


「申し訳ございませんでした。オレ、帰ります。お金はお支払いします」


とにかくもう、逃げたかった

色んな事から

財布から札を抜き取り、テーブルの上に置く。

パンツは履いていたので、バスローブのままズボンに足を突っ込み引き上げる。


「待て!! 落とし前付けねえのか??!!」


オレは両手で引き上げたズボンのウエストを握ったまま凍り付いた

「あ、あの…」


「まずはシャワーを浴びさせろ」

ベッドから身を起こしたオンナはニットの覆面だのブラなどを取り外して上半身むき出しのままバスルームへ歩いて行った。



--------------------------------------------------------------------


天蓋ベッドの脇のソファーにくっつくくらいに並んで座らされたオレは一連の事をゲロさせられた。


冴子さん(そう呼べと言われたので)はタバコを咥え、火を点ける。

ざっくりと着たバスローブの合わせから形のいい胸が見え隠れする。


こんな時にも目が引き寄せられる…

オトコはホントにもうどうしようもない


伏せてしまった視線に気づいた冴子さんは、バスローブから両腕を抜いて胸を露わにしてくれた。


「抱かれるオンナには何らかの理由がある…私のように“お金が理由”って他にも色々とね… 残念ながら今のキミにはそれ以外の理由も魅力もなさそうだ」


分かってはいたけど、口に出されると

やっぱり落ちる…


「私には心が無い。だからキミの欲望に応じて服も脱ぐし、サセるよ。

でもきっと、心のある人は結局、キミには心を寄せない。 

それはね、キミが自分自身を嫌いで、大切な事はいつも人任せだから…

キミの話を少し聞いただけの私が、そう感じるんだ。

キミの親しい人が感じない訳は 無いよ  

これ、私が間違ってるかな?」


冴子さんはオレに目を向けてくれたけど…

何も言い返せない…


「キミも面倒なコだね。でもキミは私には無い物を持っている」


冴子さんは立ち上がって自分のトートバッグから銀行の封筒を取り出し、さっきオレがテーブルに置いた札の倍の枚数を重ね置いた。


それからフロントとお店に電話してALLの契約を作り上げてしまった。


「キミが私を買った様に私もキミを買うよ」


「…どうして?」


「キミがその手に確実に持っているもの 

それはそのコの事を本当に好きだと思っている事。それは確かだと私は感じた。

私は愛もよく分からない。

なので、愛することのできる心を持っているキミをとても羨ましく思う。」


「そんなの…女々しい事言ってしまうけど、苦しいだけだ…」


「そうだね… もし私がキミのように愛に苦しむ事に巡り合えたら、やっぱりそう思うのかもしれない。

でもね、それでも、そんな心を持っているキミがとてもとても羨ましいんだよ。

だから私はキミを買う」


そう言って冴子さんは両手を広げて、形のいい胸をオレに向けた。


「こんな“人間モドキ”だけど…血は通っているから、人肌だよ」


オレは引き寄せられて

ゆっくりと

形のいい胸に顔を埋めた。


冴子さんの腕が

オレの頭を抱きかかえてくれる。


「私たち、二人とも 今は1mmも動けないけれど…


キミは一所懸命そのコの事を想い続けるんだ


ストーカーになれって事じゃないよ

わかるだろ?


今のキミじゃまだまだ中途半端


とことんまで想い続けてこそ

1mm進むことができるんだよ


キミなら


それができるよ」



今日、オレは


男にも泣ける場所があることを知った。


それは形のいい胸の中だった。




。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



イラストは、一夜明けて別れ際の冴ちゃん


「じゃあね」のひとことで背中を向けて去っていく感じです。



挿絵(By みてみん)







あ~ またしろかえでを泣かせてしまった(^^;)


この“美咲ちゃん”を発端としたバタフライエフェクトはもう少し続きます。


感想、レビュー、ブクマ、評価、切にお待ちしています!!<m(__)m>



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 冴子さんの堂々っぷりがカッコいい♡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ