<こんな故郷の片隅で> Have You Ever Seen The Rain
再掲出部です。
あなたが淹れてくれるお茶、本当に美味しくなったね
きっと、それはあなたの心の積み重ねの現れだと思うの。
それが私はとても嬉しい。
だから、本来なら決して話してはいけない、それこそ灰になるまでしまっておかなければいけない私の胸の内の秘密を話してあげても、
あなたはそれを自分の糧にすることができると、信じている。
でも、もうこれ以上聞きたくないなら、
しばらく私一人で
お茶をいただくわ
そう… ありがとう。
次の話は…どこまであなたに話そうか、今も迷っているのだけど
それは話の流れが、決めてくれるでしょう
その前に…そこのふきんを貸してもらっていいかしら
きっと、ハンカチでは
足りなくなってしまうから
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実際に事務所に顔を出すのは久しぶりだった。
で、出されたお茶も飲まずにマネージャーとテーブルをはさんで押し問答をしている。
すく隣で経営している、表向きの看板はエステクラブの『百合関係』のお店の顧客の件でだ。
「私は“女”はダメだって!」
「お前ならできる!」
「なんだよ!それ」
「百戦錬磨だろ」
「女はゼロ戦だ」
マネージャーは茶をすすって私を説得にかかる。
「そう言うなって。お前をご指名なんだよ」
私はタバコの煙を吐き出す。
「“向こう”の客なんて、会ったことない」
「心当たりあるはずだ!目立つお客だから。ロリータファッションの」
あぁ! エレベーターで乗り合わせた。
レースやフリルが盛りだくさんのワンピースに、賑やかに造花のくっついたストローハット、エレベーターに充満する喧嘩腰の強く甘い香り。
「あの時の私、ほぼ作業着だったよ。アルバイトの。店の女の子の雰囲気じゃない」
「所属の女の子と分かったのはお客様の眼力じゃねえのか?」
「ふざけんなよ」
テーブルに上にはかなり厚めの銀行の封筒が2つ置かれている。
こいつ、現金前払いで既に仕事請けてやがるな。
「条件は?」
「昼間デートして、ホテルで1泊」
「私、常識的な事しかできないけど」
マネージャーはお茶を吹きそうになってむせた。
「常識的って、お前、何よ、それ」
「人を非常識の塊みたいに言うな!」
「まあ、あちら基準でのアブノーマルな事はしないよ」
「あと、ロリータファッションはダメだ! 勘弁してくれ! 無理!」
「分かった」とマネージャーはスマホをいじる、と即レスで来た。
スマホの画面を私に見せる。
『服の件、了解しました。 いつデートしていただけるか、ご都合をお伺いしたいのですが』
私はバイトのカレンダーと体調のカレンダーを頭の中で広げてみた。
「なるだけ早い方がいいかな…今週の土曜日くらいまでで、できれば平日で」
『木曜日はいかかでしょう?場所は“港街ゆうえん地で”』
遊園地かよ… ま、いいか
私はマネージャーのスマホから『OK』のスタンプを送った。
「よし!契約成立な!!」
とマネージャーは封筒の一つを私に渡した。
「良かったよ。“向こう”の女の子、みな怖がっててさ!どんな理由かは言わんのだけど…」
「そんな事今更言うか??」
「大丈夫!お前逞しいから」と軽口を叩いたマネージャーはふと真顔になる。
「でも、カードとかは、気をつけてな」
「ああ」
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待ち合せの場所へ自分の足で行くときは、私はかなり早めに到着して、実は様子を見ている。
“港街ゆうえん地”のエンランス脇のちょっとした植え込みの前に彼女は立っていた。
オレンジのワンピースに大ぶりのピアスで、シンプルなストローハット。
ただ、緩くウェーブを掛け、流してはいるが前髪パッツンと姫カットの名残りがあるのと
風に乗って、あの甘い香りがしたので、それと分かった。
私はと言えば、彼女の“お好み”に合いそうな白シャツにケミカルウォッシュのジーンス、キャップにポニーテールだ。
と、彼女と目が合った。
彼女の表情全体が、パーっと明るくなったのが遠目からでも分かった。
『なんだ。普通にしてれば、可愛いじゃない』
それが彼女の第一印象だった。
駆け寄ろうとしてちょっとギクシャクした彼女を私はベンチに座らせた。
「あのさ!サンダルは慣れたのを履かなきゃ!」
舌を出す彼女に、
「テヘペロはいいから」と
背負っていたリュックを下ろし、私は仕事用の絆創膏セットを出す。
彼女のサンダルを脱がして親指に触れると、足をピクン!と揺らした。
「動くと貼れない。踵にも貼った方がいいね。もちろん両足」
彼女が少し悲しそうな顔をするので
「なるだけ目立たない大きさのを貼るから」となだめた。
ベンチに座ったままでサンダルの具合を確かめる彼女に私はようやく聞くべき事を思い出した。
「初めまして、冴子です。あなたは何とお呼びしますか?」
肩に小さなショルダーバッグを掛けただけの彼女は、その肩紐に両手でつかまったまま小さく答えた。
「あかりです。あかりちゃんと呼んでいただけると、嬉しいです」
「ん、あかりちゃんね! さて、あかりちゃん何から始める?」
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コーヒーカップのグルグル回るやつ。
私は苦手だ。
なんだか自分が洗濯機に放り込まれている気がする。
それから次はジェットコースター。
彼女はノリノリで叫んでいるが、私は安全バーが冷や汗でじっとりするほど握り締める始末だ。
降り口のモニターで先程の私の情けない表情が写っている。
「それ!買うの?」
すっ飛んで行く彼女を引き留めようとしたが、さっさと写真を買われてしまった。
「冴子さんは買わないんですか?」
「誰が! あの顔は私の黒歴史!」
彼女はクスクス笑って、私の腕につかまって来る。
「そうなんですか~? 見たくなったら言って下さいね」
と憮然とした私を見て面白がった。
最後に乗ったのは大観覧車だ。
平日の午後で拍子抜けするくらい空いていた。
青空の中に、観覧車のカゴが浮かぶ。
対面で座っているあかりは空を見上げている。
「こんな空の日に、飛びたいなあ」
その言葉で彼女の目を覗き込んだ私にあかりは言葉を続けた。
「空を飛ぶ夢を見たことはありませんか?」
無いかも?
「私はこんな青い空の中、飛んでる夢を…見たいかな… あ、あれ、ちょうど真横のあのホテルに部屋取ってます。だから私は手ぶらなので~す」
あれは五つ星ホテルだったなとぼんやり考えていると今度は彼女が私の目を覗き込んだ。
「ハイ!告白タイムです!」
「えっ?! 何?」
「二人っきりの観覧車は告白する場所なので~す」
「いやいや決まってないって」
そんな私を無視して彼女は手を挙げる。
「まず私から! 冴子さんの嫌いなロリータファッション、実は私も好きではありません」
「なぜ?」と目で問い掛ける。
「あれは私にとって仮面と鎧です」
「?」
彼女はすぅーっと息を吸って私に言葉を投げかけた。
「3年前のコンパの席で、私は強姦されました。 マワされました。 でもその最中、感じてしまいました。何度もイキました。しかもそれをビデオに撮られました。
そのせいで刑事事件として立件されませんでした。
どうしようもない、ホントどうしようもない、女です。私は
だから仮面と鎧で、オトコを遠ざけてま~す!」
明るい口調でぶつけられて、私はなんて返していいか分からなかった。
すると彼女は自分のスマホを取り出した。
「嘘ではありません。そのビデオ、このスマホの中にもあります」
それからウィンクして私ににじり寄った。
「次は冴さんの番ですよ」
「私は…無いよ」
「嘘です!丸わかりです」
「ホント無いったら!」
「嘘をつきとおすなら」と彼女は私の隣にグイッ!と座ってスマホを立ち上げ、
「私のビデオ、見せますよ!」と私の目の前にスマホのサムネイルをかざした。
私は観念してため息をついた。
「分かったよ。
…私は…援交かな…
それはもう、果てしなくやった。
怖い目にも何度かあった。
一番酷かったのはどこかのジュニアの絡みでボコボコに殴られて…鼻も歯も折れて、あごも砕けて半年以上、顔がまん丸に腫れたこと。
でもこういう相手の時にやるいつもの用心でビデオカメラを仕込んでおいたので、その一部始終をネタに顔もIDも別人の自分を手に入れた。
せっかくただれた自分からクリアになれるチャンスだったのに… いつの間にか自分の故郷であるここに戻ってきて、相変らずな事をしている」
ふと彼女をみると目からいっぱい涙を落としている。
ちょっと違うだろ! 私なんかの為でなく、自分の為に泣くべきだ。
「無理に聞いて、ごめんなさい でも…」
と彼女は私の手を取り、“恋人繋ぎ”をした。
「私達って鏡みたい」
カゴは頂上まで来て、青い空から降り注いでくる光をまんべんなく受け止めていた。
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ルームサービスのディナーはワインとちょっとした物以外は下げてもらった。
あかりは置いてあった大きめホテルの紙袋を二つ、私の目の前に提げて来て、中身を出して見せた。
「色違いのバスローブ、備え付けのは嫌だから、下のショップで買って届けておいてもらったの。どっちの色?」
私が取った色を見て
「だと思った」と彼女はいたずらっぽく笑う。
「じゃあ、先にお風呂入るね」
ともう一つのバスローブを座布団のように胸の辺りでパフパフさせながら行ってしまった。
。。。。。。。。。。
私が戻って来ると、部屋の電気は消されていて、あかりはカーテンを開けた窓際にいた。
「外は満月だよ」
月明かりの陰影に縁どられたあかりは、ほぼスッピンのはずなのに、昼間よりずっと大人びて見えた。
「きれい…」
思わず口をついて出てしまった。
「満月、きれいよね」と振り返ったあかりは顔にあどけなさを残したまま言葉を繋いだ。
「せっかくの月明りなんだから… 静かに踊らない?」
「私はダンスなんて知らないよ」
「私も知らない。でも…こうすれば」と彼女はスリッパから足を抜いて裸足でつま先立ちして私の肩に手を掛けた。
「大丈夫」
私は軽くため息してみせた。
「曲はどうするの?」
あかりは左手に隠し持ったスマホを私に見せた。
「今はスマホですぐ曲が買えるんです。やっぱり“ムーンライトセレナーデ”かな… 冴さんのリクエストは?」
リクエスト? そう言われても私にはさしたる引き出しが無い…
「月だからロケット、“ロケットマン”かな…」とうろ覚えの映画のタイトルを口走ってみる。
「オッケー!」
あかりは音楽を奏で出したスマホをベッドに放り出して、私の背中に手を回してピッタリと体を寄せて来る。
確かに足を踏んでも、裸足だからご愛敬。二人して曲に身を任せて静かに揺れる。
あかりはトロンと私の胸元に顔を埋めた。
「今は同じ匂いだね」と、胸元にキスしてから
潤んだ瞳で私を見上げた。
「?」と目で尋ねると
彼女はその瞳を閉じて唇をとがらせてキスをせがんだ。
自分でもびっくりするくらいぎごちないキスをしたら、彼女は私の首に両腕で抱き着いて激しく唇を奪って来た。
体をくっつけてグイグイ押され、ベッドに彼女ごと倒れた私はまるで彼女に押し倒されたようだった。
離れた唇から少し荒い息が洩れる。
「ねっ! 冴さんがされて気持ちいいこと 私にして」
気持ちいいこと?…
何をどうされていたんだろう? 自分でも分からない…
それでも耳たぶを噛んで耳を吐息とともに舐めてみた。
あかりは細く呻きながら私のバスローブに手を差し入れ、肩を脱がせた。
彼女はそうして脱がせた私の肩から首筋に唇と舌を這わされて行ってから耳たぶを甘嚙みして耳の中を舌先で舐めた。
私は叫んでしまった。
おそらくその瞬間に私を覆っていた余分な鎧や仮面が砕けた。
むき出しになった私に、彼女の指はまるでベルベットの人形に触れるように優しく、彼女の口はまるで新鮮な果実のように私を味わった。
。。。。。。。。。。
彼女のきれいな線に沿って顔を埋めて、おへそのくぼみまで来たときに、「明かりをつけて」と彼女は呻いた。
「明かりをつけて、私を見て」
彼女の下腹部は刃物で付けた傷だらけだった。
特に切ないのは、一番敏感なところから恥骨の辺りまでザックリ切られたもので、縫合が引きつれていた。
仰向けになっている彼女は私を見つめた。
「全部、自分でやったの」
彼女の姿がぼやけた。
私が人の為に泣くなんて
観覧車で彼女が私の為に泣いてくれたから?
そうじゃない。
その刹那に分かってしまった事、愛しく想っている人だから、涙がこぼれるのだ…
彼女の付けた傷の上に、ハラハラと涙が降り注ぐ。
その傷のひとつひとつをキスで辿ると
彼女は呻くように泣き、泣くように呻いた。
その後で、彼女の涙の味をすっかり飲み込んでしまえるよう、長く長く深いキスをした。
。。。。。。。。。。
あかりの足の指にいたずらをしたくなって
咥えてみたら、仕返しされた。
いたずらのし合いっこが、足をドンドン上がって行って 二人してお互いの行きつくところまで行ってしまう。
快楽の幸福なのだろう…
私、女の子の味 はじめて…?
あかりは 今、私を…
でも…あかりは?
もやがかかった奥の方に嫉妬の快楽がチラリと覗く。
涙、にじむ
「中… 触って…」あかりに言われて
嫉妬の力を借り、指を
挿し入れてみる。
指に感じる熱さと彼女の叫びが私の全身を痺れながら貫いて行き
絶え絶えに「私も」と言葉を洩らしてしまう。
それなのに彼女は
「ダメ!ダメぇ!! 冴はダメ~!」と叫び続ける。
堪らず私が「イヤーっ!!」と叫んだ瞬間、
“私の中”のほんの入り口辺りを、何かが暴れ回って
私は叫んだ空気のすべてを肺に引き戻すように「ヒューッ!」となった。
快楽の幸福が私たちの体を突き破ってしまわないよう、蓋をしてしまうように、裸の体をピッタリくっつけて、私たちは抱き合った。
。。。。。。。。。。
「そうなんだ… 冴はオトコだとお腹いっぱいになるんだ…」
「うん… 」
「そんな感じ方って、冴自身が男の子みたい」
あかりは枕に半分顔を埋めてクツクツと笑う。
「今は?」
「全然いっぱいにならない」
「でも、冴、さっきすごくなってたヨ」
いったい私はどうなってしまったんだろう
私は中坊か? 自分でも訳が分からない。
「さっき どうやったの?」
あかりは私の頬を両手で包んで、キスしながら舌を挿し入れて、した。
私の中を頭の先まで快楽の幸福が貫いた。
と「クゥ~」って、お腹が鳴った。
「あ、冴、お腹が空いてる」
「ホント」
二人同時に吹き出して
ケラケラ笑って
またキスをして
またケラケラ笑って
こんな遊びを繰り返した。
。。。。。。。。。。
二人一緒にお風呂に入って
色んな話をして
またシて
洗いっこして
また色んな話をして
結局、またシて
また
洗いっこ
幸福は尽きることなく
クタクタになって
ようやく二人抱き合ってベッドに入った。
。。。。。。。。。。
一夜にして、どっぷり恋に落ちた私は
今まで味わったことのない切なさに取り付かれた。
「アドレス交換しよ!」
QRコードを出してあかりとアドレス交換する。
「冴ちゃん。バスローブ紙袋に入れてもらっていい? 処分するから」
「持って帰るよ。あかり!私の部屋に遊びに来て! またお揃いで着よ!」
あかりは唇をキュッ!と結んでから、顔いっぱいの笑顔を作ってみせた。
キスをした後、「見送られると、行きたくなくなってしまうから」と、私を先に行かせようとしたのに
袖を掴んで引き留めた。
「もう一度」
長く長く熱いキスを交わして 二人 身を分けた。
しかし…
ずっと待っていたのに、
あかりからの連絡は
無かった。
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やっぱり私は金で買われただけだったのだろうか?
鳴らないスマホを眺めている時だけでは無く、修理で機械を抱きかかえている時にも、不意にこの言葉が現れる。
当たり前の事じゃん。
それが私の生業だったでしょ?
なのに、今の私は、悲しくて悲しくて
泣いてしまっている。
なんて弱い私
これから先、こんなんで生きていけるのかなあ
とりあえず、住むところは持っている。
慎ましくしていれば、何年かは食い繋げる。
でもそれは生存の可否の話
幸せってなんだろう?
縁のないことだったけど
知らない方がいい事はあるけど、知ってしまった事が幸せだったのかどうか、分からない。
やっと鳴ったスマホに飛びついたら
マネージャーからだった。
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重い足取りで事務所に来てみると、
マネージャーは赤で囲んだ新聞を放り投げて寄こした。
『ロリータ“少女”死のダイブ』
全身の血の気が引いた。
「?!!?!!?!!!」
ジュニアにボコられた時のように、私の中の無機質の機械が動作し始めた。
マネージャーの言葉と活字を拾う。
『マッポ』『丸く』『伏せる』『新聞沙汰』『ホテル』『裏階段』『飛び降り』『裏取り』
「裏取りで呼ばれてる。まあ却って簡単だよ。金つながりなだけだから…」
「…で、いつですか?」
「今から。ここに来られても困るからよ。サツまで送って行ってやるから。あと、ウチとの契約は終了な。お前もしばらくは大人しくしてな!」
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警察での事情聴取は、確かに裏取り程度のものだった。
私にとって、悲しい“証拠”があったから…
うらぶれたサラリーマンみたいな捜査官がホテルの紙袋から、1枚の写真とストローハットを取り出した。
「ま、あんたへの遺品という事らしい。写真はコピーを取らせてもらった。証拠だからな。まあこれ以上の事件性が無ければ提出する必要は無い」
ストローハットはあかりが被っていたもの。そして写真は、あのジェットコースターの時のだ…
裏に、あかりが書いていた。
最初で最後の彼女の筆跡。
そう思うだけで、悲しみの淵に落ちそうになるのを必死に堪えた。
警察を出て、一番最初のコンビニに飛び込んで、イヤホンを買った。
歩いて歩いて、観覧車に辿り着いた。
カゴが私を青い空へ持ち上げて行く。
私は、写真の裏に書かれた、最後の文字をスマホで検索する。
『Have You Ever Seen The Rain ♪』
『今はスマホですぐ曲が買えるんです』というあかりの言葉が耳に残っていて、私は涙を落としてしまう。
ダウンロードした曲をPLAYにして、歌詞も表示した。
それからもう一度最初から、写真の裏に書かれたメッセージを、読み始めた。
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ずっと眠れなかった私が、少しの間だったけど、あなたの腕の中でまどろむことができました。
目が覚めて、あなたの顔が見られたのがとても幸せで、キスをしました。
あなたの寝顔、とてもかわいいんだよ。あなたの腕からそっと抜け出して、今、これを書いています。
たった1日のお付き合いだったけど
心からあなたを愛しています。
あなたが寒そうにしているので、腕の中に戻りますね。
あなたからアドレスを交換しようって、ウチへおいでって言われて、
嬉しくて嬉しくて嬉しくて
決心が揺らぎました。
あなたのところへ今すぐ飛んでいきたい!
でも、私はきっと、もうすぐ、壊れます。
そしたら、自惚れかもしれないけど
あなたも
壊してしまう。
だから、行きます。
あなたにたくさん迷惑をかけてしまいます。
ごめんなさい。
でも、あなたの壊れたものもまとめて持っていきますから
だって私はあなたの鏡だよ
ふたつからひとつになって
またふたつになって
ひとつになるの
幸せってなんなのか、私もわからないけど、
あなたの幸せはきっと叶います。
私が叶えます。
だから心配しないで
愛するあなた
愛しいあなた
いつもそばにいて
守っているよ
P.S. もし生まれ変わりがあるなら
色々考えてみたけれど、あなたの子供になりたい
もちろん 女の子で
Have You Ever Seen The Rain ♪
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カゴの外にあのホテルが見える。
あかりが飛んだ、裏階段が
見える
晴れた青い空の中
『こんな空の日に、飛びたいなあ』
というあかりの言葉と歌詞のフレーズが重なる。
鍵が開いた。
誰もいない青い空の中
私は
私は!
慟哭した。
空が割れて、
あかりが戻って来られることを
ただ
ただ
祈りながら
あかりのラフ画です。
2022.5.9
イラスト追加変更分
少し大人っぽくしました。
あかり(彩色)
紅を差そうと思いましたが、スッピン感と…あかりちゃんには可哀想ですが、もう“命”が消えかかっている様を表したくてやめました。画力の無さ、申し訳ございません。
冴子(彩色)
今、書きなぐったばかりのものをすぐUPしています。
恥ずかしくも自己満足的なのだけど、涙、ダラダラです。
かなり落ち着いた機会に書き直しできればと思っています。
拙い私にお付き合いいただきありがとうございました。<m(__)m>
(2021.9.14掲出時のあとがきです。)