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第3話 戦闘 新参 女子トーク

フウマとガラは海沿いの街道を歩いている。目指す

メイランまではあと少し。


「お! ガラ見ろよこの枝! かっこいい」

フウマは落ちている手ごろな枝を拾って振り回し始めた。ヒュンヒュンと風を切る音がする。


「お前の腰に下げてる剣の方がかっこいいだろ。いらんもん拾うなガキ」

ガラは呆れて遠巻きにフウマを見ている。


「はあ……ガラが子ども心を失ってしまって悲しい……昔は拾った枝でチャンバラごっこしてくれたのによお……」

フウマは溜め息をついて枝を放り投げた。


「チャンバラごっこっつっても結局お前が一方的に俺をボコボコにしてくるだけだったろ」


「そうだっけ? あ、あそこなんか光ってるぞ!」

フウマは海岸に向かって走り出した。


「だからいらんもん拾うなって……」


ガラがフウマの方へ歩こうとした時、海の中から魔物が飛び出し、フウマに襲い掛かった。

波打ち際にしゃがみこんでいたフウマは反応が遅れる。

しかし、魔物の鋭い爪がフウマに届くよりも、フウマが剣を抜く方が速かった。

フウマは迷わず魔物を一刀両断する。魔物が飛び掛かる勢いと、フウマの瞬激の居合切りの勢いがぶつかり、魔物は派手な音を立てて左右に飛び散った。


「おい! 油断してんじゃねえ!!」

ガラは急いでフウマの隣に行く。


「悪い。ちょっとビビったな」

フウマは余裕の表情でニヤリと笑っている。


二人が話している間にも、海の中から先ほどと同じ魔物が次から次へと現れる。周りは激しい水しぶきの音と、魔物の唸り声で満たされた。


「アクアグールの群れだな。ったく! お前が街道から外れるから面倒なことになったんだぞ」

ガラはフウマの隣で杖を構えた。


「だから悪かったって……」

フウマは苦笑いで答える。剣を握り直して一歩踏み出した。


「僕がほとんど倒すから、許せよな」


フウマの一撃がアクアグールの首をはねる。フウマの剣圧がかまいたちとなり、剣の届かなかった後ろの魔物の胴を両断した。

フウマは姿勢を低くして体の向きを変える。体を動かした勢いをそのままに跳躍し、背後の魔物に切りかかる。

フウマの動きに着いて行けない魔物は成すすべもない。魔物は次々にフウマに切られ、黒い煙のようになり消えていく。

魔物の首と煙が舞う。


ガラは自分に攻撃しようとしてくるアクアグールに対してだけ、魔法で応戦する。

「荒唐無稽に駆け巡れ サンダラ」

青い稲光が魔物の上に落ちる。

フウマが激しく舞い、跳躍しながら戦うのに対して、ガラの戦闘スタイルはその場からほとんど動くことなく戦うものだった。その地に足のついた安定感のある戦い方は、フウマの心の支えにもなっていた。


アクアグールは海の中からとめどなく現れていたが、形勢不利だと判断したのか、やがて海の中へ退却し始めた。水しぶきを立てて海の中へ戻っていくのが分かると、ガラはフウマに叫ぶ。


「フウマ! もういい!」


フウマは魔物の喉元で剣をピタリと止めた。魔物は命からがら海の中へ戻っていく。


「やれやれ」

フウマは剣を振るって汚れを飛ばす。腰の鞘に剣を戻した時、遠くから声が聞こえた。


「大丈夫ですかああああああ!!」


叫びながら女性が一人走ってくる。フウマはその女性に飛び掛かられ、ゴロゴロと二人は転がっていく。


「うわああああ……」

フウマの弱弱しい声が聞こえる。


「な、なんだあ?」

ガラは呆気にとられて転がる二人を見ている。


二人の動きは止まり、フウマの上に馬乗りになった女性が慌ててフウマに話す。

「大丈夫ですか!? 私遠くから二人が魔物に襲われてるのが見えて、走って来たの!! 私も加勢するよ!!」


「あ、ありがたいんだが……」

フウマは女性の下敷きになりながら言い淀んでいる。


女性はキョロキョロ周りを見渡してガラに叫んだ。

「もう終わっちゃったみたいだね!?」


「……一足遅かったな」

ガラは杖をコートにしまいながら言った。


「と、とりあえずどいてくれえ」

フウマは女性の下から言う。


「わ! ごめ~ん!! 勢い余っちゃった!!」

女性はフウマの上から飛びのいて手を差し出す。


フウマはその手をとって引き起こされるが、我慢の限界だというようにお腹を抱えて笑い出した。

「あははははは!!」


「な、なんで笑ってるの?」

女性もつられてニヤニヤ笑いだす。


「な、なんかびっくりして、ツボに入った……!」

フウマは、大口を開けて大爆笑している。


女性もつられて笑い出す。

「あはははははは!」


二人はお腹を抱えて、波打ち際に崩れ落ちて砂浜を叩きながら笑っている。


ガラは苦笑いをしながら二人を遠巻きに見ている。

「なんだこいつら……」


二人は笑い疲れて砂浜に寝転がっている。

「はあ……なんか疲れたけど、楽しかったな。よく分からねえけど」

「私も……」


砂浜に起き上がった二人はガシッ! と握手を交わす。


「僕はフウマ。冒険の旅をしている。あっちのでかい男は幼馴染のガラ。助けに来てくれてありがとな」


「私はルーシェル! 探し物をしてて旅をしてるの。助けようとはしたけど、間に合わなくてごめんね」


「ルーシェル! 一人旅か? 僕たちはこの先のメイランって町に行くんだが、一緒に来いよ!」


「え……」

ルーシェルは驚いてフウマを見ている。


「な! ガラ! いいだろ? 女の一人旅は危ないしな!」

フウマはガラに問いかけるが、ガラが「勝手にしろー」と返事をする前にルーシェルに言う。


「いいってさ! ルーシェルはどこの町を目指してるんだ?」


「え、えっと……」

ルーシェルはもじもじしながら答える。

「特に行先は決めてないの。まだ手がかりが見つかってなくて……。一人じゃ寂しいなって思ってたの。私も一緒に行ってもいい?」

ルーシェルは小首をかしげてフウマを見た。桃色の髪が、ふわりと揺れる。


「ああ! 一緒に行こう!」

フウマはニッと笑ってルーシェルに言った。


「ありがとう!」

ルーシェルは感極まってフウマに飛びつく。フウマはルーシェルを抱えてグルグル振り回した。

二人は子どものように楽しそうに笑っている。


「変なやつが仲間になっちまったなあ」

ガラは楽しそうなフウマを見ながらやれやれと溜め息をついた。





三人は連れ立って街道を歩く。新しい仲間のルーシェルは、フウマとガラに興味深々だ。


「ねえねえ! フウマは男の子っぽいけど女の子なんだよね? さっき転がった時に胸触っちゃった」


「う、うん。そうだけど」

フウマは居心地悪そうにもじもじと答える。


「ガラは幼馴染って言ってたけど、もしかして二人はお付き合いしてるの!?」

ルーシェルは頬を赤くして、嬉しそうに聞く。


「し、し、して、しし……」

フウマはわなわな震えながらどんどん顔が真っ赤になっていく。


「してなあああああい!! 断じてそんなんじゃなああああい!!!」

フウマは首がちぎれそうなほど、頭をブンブン左右に振る。両手をバタバタ振って必死で否定している。うわあああと叫んだ後、一人で街道を突っ走って行った。


「ああ! フウマ待ってえ!」

追いかけようとするルーシェルをガラが止めた。


「ほっとけ。どうせちょっと行った所で待ってる」


「そ、そうなの? ……でもあんなに必死で否定されると逆に疑っちゃう。フウマって可愛いね! ニヤニヤしちゃう!」

ルーシェルは楽しそうにガラを見る。


「ねえねえ! 本当は付き合ってるの?」


「しつこいぞ。まだ付き合ってねえ」

ガラはそっぽを向いてルーシェルに言う。


「ほほう。“まだ”付き合ってない、か……。なるほどね……」

ルーシェルは、うんうん、と一人で納得したようにうなずいた。


「あ、フウマいた! ねえねえ! フウマは何色が好き? どんな食べ物が好き? 心がときめく物なあに? 私はね、ピンク! スウィーツ! ヒラヒラワンピース!」


木陰に隠れて二人を待っていたフウマに気づき、ルーシェルは矢継ぎ早に質問を浴びせかける。


フウマはさっきの“ガラとお付き合いしてるの?”という問いについては考えないようにして、何食わぬ顔で二人と合流する。


「そうだなあ、僕は……空色、オムレツ、うろこ雲!」


「うふふ! フウマと話してると楽しいな」

ルーシェルは楽しそうに笑う。

フウマもニコニコ楽しそうだ。


「(なんかマイナスイオン感じるな)」

二人の会話を黙って聞いているガラも、なぜかほんわかした気持ちになってしまった。


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