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シアノ

 場所は変わって、再び王城……


「シアノ、これからどうするのだ?お前の指示通りの行動をしたが、あの二人はこちらの指示に従うどころか、国内の貴族共の結束まで乱したではないか!」


 キューガスラ王国を統治する国王を前に、敵意を隠そうともしない二人の貴族バージルとユルゲンに我先にと助力を求めていたのだ。


 その二人が勝手気ままに言いたい事を言った後に通信を遮断したので、助力を求めてバッサリと断られた貴族達はバツが悪くなり、その後は誰も発言する事が無く話は終了している。


 こうなってしまうと、国王としてのメンツだけではなく、求心力、最終的には王族としての立場すら危うくなる。

 今までは最強である王都所属の騎士隊がおり、都度地方領主に派遣して外敵を排除するために動いていたので、誰も王族に対して異を唱える、いや、唱えられる者はいなかった。


 しかし今回の会議でその体制は脆くも崩れた。

 これまで培ってきた体制、安定が完全に崩れた瞬間でもあるので、国王の怒りは相当なものだ。


 見た事も無い程に怒り狂っている国王であるドロニアスを見た第一王子のケイオスは、妻であるシアノを庇う事もせずに距離を置いている。


 言い訳であればいくらでも出て来るのだが、流石に改善できる一手など思い浮かぶわけもなく、当然スキルからの指示も無い。

 そのため、怒れる国王に対して明確な返事が出来なくなっていたのだ。


「お前のふざけた指示を聞き続けていたおかげで、我がキューガスラ王国はこのざまだ。疫病神め!即刻この王城から立ち去れ!ケイオス!貴様もその疫病神を庇うようであれば共に出て行け!」

「いえ、私は父上と共に……」


 簡単に切って捨てられたシアノ。

 今までメンタント公爵領では蝶よ花よと育てられ、王城に来てからも統治術があると言う事で過分な扱いを受けていた。

 

 ここまで露骨に敵意を向けられる事は今まで無かったのだ。

 しかし、誰の目から見ても状況の改善は見込めない。唯一の頼みの綱である夫も、迷う素振りすら見せずに自分を切り捨てて見せたのだから。


 シアノは大人しく国王の指示に従うのだが、ただでは転ばないのがこの女の凄い所だ。

 自分の益になりそうな事は相手がどうなろうと一切関係なく、平然と行えるようになっていたシアノ。


 レトロのスケジューラーで判明している通り、残り少ない騎士を懐柔して、この王都を離脱する事にしていた。


「騎士隊長、私はこのキューガスラ王国の王都を見限りました。貴方も既に打つ手がない事位は理解できているでしょう?これから私は祖父であるユルゲン男爵領に向かいます。道中の護衛をお願いできますか?」


 キューガスラ王国の国内で、二つの領地だけが安定していると理解している騎士隊長。

 そのうちの一つに向かうと言っているので、この場に留まるよりも遥かに安全で生活環境も改善されると理解している騎士隊長は、二つ返事で了承する。


「ですが、王族には気取られてはなりませんよ?あなたはご存じないかもしれませんが、先ほど行われた魔道具による会談で、ユルゲン男爵領と陛下との間には埋められない溝ができていますから。万が一気取られれば、王都から出る事は出来なくなります」


 軽く脅しをかけられた騎士隊長。


 本来は騎士隊長になれる実力はないが、人材不足によって強制的に騎士隊長になっている男は、シアノの指示に従って極秘裏に部下を集め、その日の夜にひっそりと王都を後にした。


 王族ともなれば、個人的に魔除けの魔道具程度は手に入れている。

 永続的に高ランクの魔獣に対して効き目が有る訳ではないが、一時的には問題ないだろうと判断して、人目の無い夜に出立したのだ。


 こうしてシアノ一行は、一路ユルゲン男爵領を目指していた。

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