ドミノみたいな勢いで
ドミノみたいな勢いで
実技とは、体力と身体機能や知能。
そして、もう一つ独自の項目を図る為の機会である。
その独自の項目を、神崩しや狭間木高校では、特別な名を付け呼ぶ。
その名を――――――。
「じゃあ今から神形の実技を始めっから、口上。えっと、今日の蟹座の占い順位5番で、貝塚! 読み上げて〜」
学校の体育館に教師である戸部敦恵の声が響き渡る。
毎度の事ながら予測の仕様がない生徒当てをする戸部と、哀れな生徒、貝塚の間に奇妙な時間が僅かに流れた後、余りにも奇抜な当て方をされ思考停止していた貝塚が立ち上がり、この行事では本来教師が読み上げる口上を述べる。
「我らか未来の神崩しと成る為にこの様な機会を設けて頂き、それに関わる全てに、心からの感謝を! 真の勇気は真の危機からを胸へ抱き、これより我ら一同神形強化を開始する!」
「はいオッケー、じゃあ次は向上2ね。それじゃあ私のお母さんが魚座だから今日は1位で1番の相澤! テキパキ読んでこう〜」
誰も戸部の親の星座など興味がないし、口上2なんて物は、存在しない。
戸部が勝手に自分のクラスのみに実装した物であり、自分が思い出す為か、生徒に再認識させる為か、神形とは何かを説明させるという面倒極まりないものだ。
「えっと………………最初なんだっけ?」
「はい相澤は後で居残りね。じゃあ相澤の次の2番、雨宮が言って」
「ハイっ!」
雨宮千歳―――彼女は学級委員長を務めるなど、こと真面目においては右に出る者がいない人物だ。
いつもは伸ばしっぱなしにしている腰まである髪を一つに纏めて動きやすくした彼女は声高らかに、暗記している教科書の一文を読み上げる。
「一般には第六感や超能力、魔法や妖術などとして扱われるこれらの力を、我々は神形と呼ぶ―――名前の由来は、人が神を倒すための技術の新たな形だったり、神経の様に元から人に備わっている物だったりと、諸説ある。神形は人によって違うものが多く、
火を吹く、宙に浮く、心を読むなどが世間一般ではよく知られている」
「はいありがとう。流石、優秀だ」
戸部が拍手して、それに雨宮は少し照れ臭そうに首を掻く。
「じゃあ面倒な前置きも終わったし、これより実技を開始とする! くじ引き用意してるから、男は青の箱、女は赤の箱から出席番号順に引いてってね。みんな引いたら教えてちょーよ」
「戸部ずりーよ、職務放棄じゃん〜!」
「私はいいんだよ、優秀だから!」
生徒のブーイングに戸部は一見冗談かの様な反論をするが、誰一人優秀という点について言及する者は居なかった。
それもその筈―――優秀というのは、事実なのだから。
変えようのない、事実。
戸部がこの学校で教師を始めたのは5年前だが、彼女の担当した生徒は、漏れなく学年で上位の成績を収めている。
「いや、優秀でも職務放棄はおかしいっしょ。だべ? あーちゃん」
「まあ、いいんじゃない? それでまた変な生徒当てしてその人に仕切れとか言われたら面倒じゃん」
「一理ある。やるな、あーちゃん」
歩鹿乃と檜山がくだらない話をしていると、その声が戸部の耳にも入ったのだろう。
戸部は歩鹿乃に向かいズンズン進み、肩をガッチリ掴む。
「歩鹿乃、お前ぇっ!」
歩鹿乃は冷や汗を垂らして、何かが戸部の逆鱗に触れた可能性のある状況の解決策を探る。
「すみませ――――――」
「お前、私のこと分かってるじゃないか。今晩抱いてやろうか?」
「今晩淫行で教育委員会に訴えてやりましょうか?」
「おっと冗談だ。2度目は流石に不味い」
1度目もダメだろう。
そんな言葉を、生徒全員が飲み込んだ。
言えるとしたら、勇者だけ――――――。
「いやいや戸部ちゃん、1度目もダメよ」
勇者は、檜山だった。
檜山に歩鹿乃の肩から手を引っぺがされた戸部は、とぼとぼと元居た位置へと戻っていく。
「ほら、くじ引き行ってきな。あとあーちゃんだけ」
「ありがと、教師に勝訴するところだった」
「前提なのな」
急いで残りのくじを引くと、出てきた紙には6と書いてある。
「はい、そしたら男女で同じ数字同士組んで、それが今回のペアね―――集まったら、7番に移動。さあ急げ!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
第7体育館。
この学校の体育館は合計10個あり、全てが別々の特性を持っている。
例えばこの第7体育館は、広くて硬い。
中は体育館というよりも倉庫を連想させる様な見た目で、床や壁はコンクリート製、中にはいくつもの鉄骨が埋め込まれている。
「揃ったかな? 今遅れてる奴等は問答無用で失格だよ〜」
当然、全員揃っている。
この実技は言わば飛び級のチャンス、遅れる者などいる訳がないのだ。
「それじゃあ始めるけど、今回は変則の自由組手ね。1番の組みから出てきて〜」
「「はい!」」
男女一人ずつが体育館の中央に居る戸部へと近づく。
男子は檜山で、女子は伊藤沙月という者だ。
「ごめんね天宮さん、仲良い人が良かったでしょ?」
「ううん、なるべく沢山の人と一緒に戦ってみたいし、嬉しいわ」
「良かった」
2人は檜山達の様子を見守ることなく、自分達がどう攻めるかの話し合いをする。
何せ、時間がないのだから。
2人の順番は6番目、その前の5人など、あっという間に消費されてしまうのだから。
「はい終わり。次2番の組み、出てきて〜」
ほれ見たことかと、瞬く間に檜山と伊藤を組み伏せた戸部が叫ぶ。
歩鹿乃達まで、残り4組。
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