063 怪獣、現る2
水走月の十三日。
霊猫神社に寝泊まりして四日目の夕方。いよいよ兜鎧傀儡の乗りこなしを身に付けた千軽ちゃんたちがやって来た。これで五領が加わって戦力は倍増。
御神座に集った神々を前に、私は下見の成果を語って聞かせた。なんと言っても語り草はあの怪獣との戦いだ。尾ひれ羽ひれを織り交ぜて、如何にこの九代皇大神が活躍したかを、時に鼻息荒く、時に座卓を叩いて、えいっ、やぁ、とぉ、と大いに打った。
「貴女それ、所々私と立ち位置が入れ替わってない?」
「うん? そういう説もあるにはあるね」
「寧ろその説以外はないですけれど」
「お姉ちゃん?」
夕星の冷ややかなツッコミに切り返せば、愛発姫が無情にピシャリ。聴き入っていた阿呼までもが疑いの目を向けて来た。
いいじゃん、ちょっとくらい! 私だって頑張ったんだよっ。そんな開き直りを胸に収めて、仕切り直しの咳払いを一つ。
「ウホンッ、とにかく最後まで聞いてよ。続きが凄いの。本当に大変だったんだから」
そう切り出して、私は怪獣との決戦第二ラウンドを騙り始めた。訂正。語り始めた。
***
常なる森であったなら、鳥たちが一斉に飛び立っただろう。
常ならざる森から不死鳥の如く返り咲いた超弩級兜虫は、学年に一人は居る機敏なデブキャラのお株を奪って敏捷極まる翅繰りで向かってきた。
夕星から八雷を撃ち込まれた身体は焦げ目が付き、所々の裂け目からは若草色の星霊が血の帯のように流れ出している。私が石化した後肢も第二関節から先が取れていた。
「放谷、行けそう?」
「試してみるかー」
人型に移姿た放谷は糸のブランコを編んで腰掛けると、狭い槽内でひっつき虫のように身を寄せて、手甲に覆われた私の右手に褐色の右手を重ねた。少し高めの体温と共に慣れ親しんだ太鼓のリズムが流れ込んでくる。ここぞ阿吽の呼吸と、私は捉えた波長に自らの星霊を繰り絡げて織り成した。
それはかつて痲油姫と知泥を編んだ時のような粗削りではない。二つうねりの星霊はイメージの中で高速に絡まって一本の糸になる。その勢いを殺さぬように、私は引き金を放谷に預けた。
「やって!」
「ほいきた。喰らえーっ、八方紮!!」
想起を込めた星霊を向かい来る怪獣目がけて解き放つ。ぶわっと視界を覆い尽くす糸の束が末広がりに放たれた。どっから出たって? 聞いて驚け、鼻からだ!
「なんで鼻から出したの!?」
「だって穴ぼこから出す方が想起しやすいー」
「だからって絵面がひどすぎる!」
鼻血ならぬ洟糸を噴かされた不知火から猛烈な抗議の思念が流れて来る。当たり前だ。四代皇大神の手になる神宝が披露していい姿ではない。
などと揉めている間にも歌舞伎、蜘蛛絲梓弦を思わせる八方広がりの糸集りが大怪獣の進路を覆うように遮った。
果たして敵は突き進む。角先が触れた途端、御業の糸は意思を持つかのようにまとわり付き、顔面から分厚い胸甲の半ばまでを覆い尽くさんとする。
「やったじゃん!」
「どうかなー?」
期待と不安を混ぜこぜに相手の挙動を注視する。少なくとも勢いは削いだ。怪獣は前肢に生えたトゲトゲで邪魔な蜘蛛糸を引っかけようと躍起になっている。
「滅紫!」
そこへ響いたのは愛発姫の声だ。見れば御業比べの為に作られたのだろう大きな色札が胡爪鬼の眼前に浮いていて、それがサラサラと風に崩れ始めた。流れる粒子は蛇行しながらぬらりと奔り、巻き付いている純白の糸を滅紫に染め上げて――。
「うわっ!? 溶けた……」
深く染まった糸が内側に撓んだと思ったら、ドロッと溶けて兜虫の頭も角も形を失いながら落ちて行く。
思わず目が点。御業を戦いに用いるとこうも恐ろしい様になるのかと、背筋を蟻が伝う気分になった。
ともあれ終わった。そう思った矢先に今度は斑良ちゃんの疾風が元気よく吶喊。
「がーおーっ!」
豹紋の傀儡は肩口から垂れる帯を風にはためかせ、グンッと沈み込んで錐揉みしながら腹の辺りに突っ込んだ。
「牙鳴!!!」
紡いだ星霊に狩猟豹の面皰を大きく写し取り、巨大な咢で怪物の中肢二本を掻っ攫う。これまた情け容赦のない駄目押しだ。
「みんな離れていいよっ」
降って来た声を仰げばお次は夕星。段切丸を動かしもせず、四つ揃いの刀を操り、キンッと鯉口鳴らして抜身を捌く。刃紋煌めく御神刀はそれぞれ鋭く回転しながら飛来して、大怪獣の四隅を囲むと独楽のように回り続けた。
「忌籬!」
それは覚えのある御業。初めて目にした霊塊の化け物を南風さんが四角四面の結界に封じ込めた技だ。となれば次こそ神手還で全てが終わる。そう思って、私は吐き出す息とともに気の張りを緩めた。
大地の支えがない空中で、忌籬は結界を立体ではなく平面に取って、胴枷のように怪獣の動きを封じていた。けれど明らかな致命傷を受けても残る三本の足は動き続けている。兜虫の心臓に当たる器官は背面下部にあって無事とはいえ、怖気の走る生命力だ。
「あ、ダメだわこれ」
「おん?」
突然の夕星の弱気にぴょこんとクエスチョンマークを浮かべる私。
「こいつ、まだ抑え込めるほど弱ってない」
「嘘でしょ!?」
あの見てくれで弱ってないとかあり得るの?
「行けるって! 神手還! はよっ」
「だからっ、無理だっ……てぇ――」
パァン! 裂帛音と同時に忌籬が砕け散った。御神刀も勢いよく弾けて、一本は不知火の兜を掠めるようにふっ飛んで行く。
「あっぶぶ、あぶ、危ないじゃないの!」
「当たってないでしょ! もう一度やり直しだよっ」
あわや剣難。これぞ銛鋒の暗示かと、気が立って喧嘩腰になる。そんな諍いを断ち割るように独角仙が突っかけた。
「いざ参りますわっ」
輪を描く遠巻きの位置から敵との距離を半ばに詰めて、振り回すかと思われた大鉞は背に担いだまま、腰回りを鎧う草摺の下から、じゃらんと垂れた鉤付きの鎖を幾本も繰り出した。
「鉤舞!」
それ自体が御業の鎖なのだろう。生き物のようにのたくり、自在に伸びて、八岐大蛇の襲来もかくや、雁字搦めに怪獣を締め上げて行く。
次から次へと繰り出される烈々とした御業の数々。神々はこうして霊塊の化け物を打ち負かし、大嶋の平和を守って来たのだ。そして今やその場に私も名乗りを上げた。それでも心のどこかで、戦うことを厭う気持ちが付いて離れなかった。
「唯光!」
「牙鳴!」
悉平丸は両の手首を合わせて構えた虎口からレーザービームのような光を放ち、その射線を縫うように際どい機動で疾風の牙が襲いかかる。その間も締め上げる鎖の金擦り音が獣の耳をざらつかせ、怪獣と恐れ戦いた相手の変わり果てゆく姿に「早く終わって」と慈悲に縋るような思いが湧いた。
だかしかし――。
「はへっ!?」
食い込む鎖がベキベキと硬い上翅を砕いた次の瞬間、バツンバツンと鎖が千切れて、大怪獣の数多の傷口から一挙に星霊が溢れ返ったではないか。
「何これぇ!?」
エメラルドの宝石が砕けて中に封じ込められていた輝きが解き放たれたかのように燦々とした緑が辺りに降り注いだ。その輝きの中で信じ難いことに失われた三肢が再生し、次いで溶け落ちた筈の頭と角が現れる。怪獣、ここに復活!
「うわー。厄介なことになったてきたなー」
「どうすんのこれ!? こんなのもうっ」
手に負えない。
余りと言えば余りの現実に、先刻降って湧いた慈悲心もどこかへ消え去ってしまって、咄嗟の身動きすらままならない。
茫然と宙に佇む私に代わって動いたのは高天の夕星。逆髪の馬神は再び四振りの御神刀を操って、敢然、大怪獣に攻めかけた。
「乱朽葉!」
本来、枯れ葉を剃刀に変えて操るというその御業を、刀に替えて鋭く攻める。旋回し、弧を描く刀は乱断の御業を掛け合わせているのか、斬撃を放っては触れもせず矢継ぎ早に斬りかかった。
最初は掠り傷程度に見えた切れ込みが、同じ箇所に重ね撃つことでみるみる溝を深めていく。再生した部位が生白く、ちぐはぐな色の怪獣は見る間に星霊の噴血を放ち、明らかに夕星の勢いに押されていた。
味方の優勢に「これならば」と勇気も湧いて、私は援護をしようと星霊を練った。今か、まだかと機会を窺う。
一振りの刀が豪壮な角又に螺旋に切り込んでねじ山を築く。眼前に気を取られた怪獣は別の二振りに両脇から目と触覚を狙われ、そこで大きく姿勢を崩した。ここだ――。
「今度は外さないっ、石凝!!」
生命を石に封じ込めるこの御業ならば、上手くすれば忌籬のように結界の役目も果たすのではないか。しかしその思惑を達するには夕星の封印を撥ね付けた相手を上回らねばならない。だがそれがなんだ。私は八大神をも統べる皇大神だ。例え技巧で及ばずとも星霊量では後れを取らない。それを今、見せてあげようじゃないか。
私は眉間に皺寄せ渾身の力で星霊を放った。
「おおっ、すごいぞ首刈ー。これなら行けるかー?」
耳元の感嘆に勇気付けられ、目標を窺えば尾骶の辺りから灰色に泥んで石化が始まっているのが見えた。そのまま覆ってやれと重ねて力むのだけど、そこは敵もさる者で、大怪獣は再びあの輝きを放って石化の波を押し返そうとして来る。
「くうっ、そう来たか。そっちがその気なら力比べだっ」
奥歯噛み締め押しに押す。それをまた向こうが押し返す。絶息するほど力を込めれば髪は逆立ち目はチカチカして、体がはち切れてしまいそうな錯覚に陥った。
「これはっ……無理だっ」
「ここで諦めんなー、頑張れ、できる! 頑張るんだー!」
どこぞのテニスプレイヤーみたいなことを口走る放谷に思わず笑いが込み上げる。堰を切ったら一気に脱力する未来しか見えない。私は魔の手から逃げ出すように風声で叫んだ。
「援護! みんな援護してっ」
上ずる声で助けを求めれば間髪入れず小さ神たちは動いた。御業を放ち、攻めかかり、怪獣の抵抗を阻害する。それに合わせて夕星の繰り出す刀も勢いを増した。
緊張が戻ると、張り詰めた体に放谷が寄り添う。相棒から流れ込む太鼓のリズムが「さあもう一度」と背中を押した。
「行くよ、放谷、力を貸してっ」
「おー、まかせろー!」
疲労に霞む視界の中で石化と再生が鬩ぎ合う。
霊塊に冒されても生きようと藻掻く生命の抵抗は生半可ではない。当然だ。誰だって生きたいに決まってる。けれど、それもやがて私の全身を賭して全霊を尽くす力に呑まれ始めた。
「石臥女さん、ごめんなさいっ」
生き物を石に封じて守る御業だと教えられた。それを今、打ち倒す為に使っていることが哀しかった。でも今は今だ。この怪獣をなんとかして赤土を、大嶋を守る。それこそが皇大神の使命だと私は信じた。
「くひぃぃ、かったっまっれぇぇぇぇぇ!!」
例え力尽きて不知火共々落下しようと、ここで決めるんだ。そう腹を括って、ありったけの星霊を殴りつけるようにブッ放す。
「行けるぞ首刈ー。あたいの分も全部持ってけー!」
「任せな、さーーーい!!」
最後にドカンと合わせ技の塊りをぶつけて、角の先まで石と化した兜虫はそこから真っ逆様に落ちて行った。
見回せば鉀兜姫、愛発姫、馳哮姫に斑良姫。それぞれの傀儡から伸びていた星霊の帯が解けて行く。みんなも力を貸してくれていたのだ。上空に一筋たなびく帯は段切丸に繋がっていて、これぞ出発前の同調の成果だと、力を合わせてやり遂げた達成感がしみじみ五体に広がった。
「やるじゃない首刈。後は神手還で土に還すだけ。今更霊塊を取ったりはしないでしょ?」
隣に降りてきた夕星に、私はただ「うん」とだけ答えた。クタクタだ。霊塊の回収なんていう元気が残ってる筈もない。
「後は任せて」
そう言い残して降下して行く夕星を見送り、私は力の抜けた体を鳥居型の背もたれにぐったりと預けた。
そして思うのだ。
何もかも巨大に狂った景色の中で拗けてしまった命も、本を正せば掌に乗る一匹の兜虫。暦を追えば芽吹く春も近いと言うのに、土に還されてゆくその悲哀を。
「ごめんね。守ってあげられなくて。また生まれておいで」
戦い終わって、寂しさにも似た気配が胸の内を彷徨った。
楓露は美しく愛すべき世界なのに、今し方の現実が鋭く胸を刺してくる。
ああ、渇いたな――。
こんな時だからこそ、どうしようもなく歌が欲しくなる。
私は目を閉じ、ふと浮かんだ早春賦の三番を呟くように口遊んだ。
春と聞かねば 知らでありしを
聞けば急かるる 胸の思いを
いかにせよとの この頃か
いかにせよとの この頃か
詩情深まり、歌うにつれて心に積もる滓も薄らげば、滾々《こんこん》と核から湧き出す星霊と共にどうやら元気が戻って来た。
「平気かー?」
「うん。放谷も大丈夫? 大分星霊を使ったでしょ」
「あたいはへいちゃらさー」
「そっか。なら私だってへいちゃらだよ」
いらぬところで張り合って、笑いの内にみんなの後を追いかけた。
川筋から離れた一画に降り立つと、大怪獣の石像が落ちた場所には無数の巨樹が倒れ、無残に踏みしめられた草原のようになっていた。けれど既に神手還を済ませたのか、巨大な石像は何処にもない。みんなの兜鎧傀儡は辺りに片膝立てて停められていて、夕星も小さ神も揃って開かれた中心部に集まっていた。
「なんで降りてるんだろ? みんなして不用心だなあ」
「さーなー。なんかあったのかもなー」
直ぐ近くに色濃い星霊漂う大地の亀裂があるので、この辺りに留まる虫はいないのだろう。そこへ加えてあれだけ大きな石像が落ちた衝撃で、居残る虫も失せたに違いない。そうは言ってもリスキーだなと思いつつ、私も放谷を伴って不知火を降りた。
「どうしたの? 何か上手く行かなかった?」
輪に加わって問えば、皆が皆、どこか探るような目つきで私を見てくる。はて? 何かやらかしたっけ?
「その逆よ。出来過ぎな訳」
「おん?」
「首刈様っ」
「うわっ、なに!?」
寄って問うて不可解を得たと思ったら、今度は鉀兜姫が抱き着いてきた。蛹から美少女に生まれ変わった女神に抱き着かれて嫌などとは思う筈もないのだけど、さっぱり意味が分からない。
「え? ちょっと、どうしちゃったの?」
「こちらをご覧頂きたいのですわっ」
「はい?」
スッと離れて両手を鬼灯のように合わせた鉀兜姫。それをお椀のように割って開いた手の中に難解。一匹の兜虫が収まっていた。
「これは……?」
まさかのほほんと虫捕りをしていた訳でもあるまい。ならばこれはなんだろうか。……解せぬ。
「首刈様がお救い下さったのですわ。そうに違いないのですわ」
「……はい?」
頬を紅潮させてグイグイくる鉀兜姫に打つ手がない私。今ならほっぺにチューしても許されるかな? などとあらぬ百合妄想にまで意識は飛躍。
「念の為に百眼で見て御覧なさいよ」
夕星に促されるまま意味も解さず天津百眼を開く。
この兜虫を見ろと仰る。よろしい。ならば見て進ぜよう。ふむふむ、これと言ってなんの変哲もないね。至って健康!
「ふつーだよ?」
「霊塊の気配は?」
「欠片もないね」
「やっぱりね」
「だから何が?」
「それ、さっきの化け物よ。神手還を使ったら土くれの中からもぞもぞ出てきたの」
「…………」
「聞いてる?」
「うん。……って、まじかっ!? これが!? え、でもどうやって?」
「それを私に聞かれてもねぇ」
ひょっとして担がれてるのかと疑いもする。けれど黒紅の瞳を輝かせている鉀兜姫を目にすれば、どう見たってそこに嘘はない。それこそ正しく欠片もない。
じゃあなんだ。
守れたってこと?
できることなら守ってあげたかった命を、私、守れた?
「わたくしの眷属がこうして無事であったこと。首刈様には幾重にも感謝申し上げますわ」
そう言って、鉀手姫は子供がするように兜虫の小角を摘まんで私の袖に引っ付けた。それがのそのそと歩き始める。ギシギシと独特の音を鳴らして肩口を目指してくる。その一歩一歩に合わせて私の心も段々と事情を呑み込んで、今目にしているものがどれほどの奇跡であるかを理解した。そうと分かったことで心も動く。命尊いその姿に、胸と言わず目頭と言わず、後から後から熱いものが込み上げてきた。
「よかったね、おまえ。生きてたね! ありがとう、ありがとうね……」
救ったのか救われたのか。混み入った感情はとても言葉では表しきれない。ただただ、それは嬉しさと喜びの上で渦を巻き続けた。
やがて肩への登頂を果たした兜虫はスイッと大角を一振りして、翅を広げて飛び立った。そしてピピッと袖しづく雨。
「まあ! とんだ粗相をして行きましたわ。直ぐにお清めするのですわ」
「いいの!」
おしっこ飛ばして去って行った兜虫を見送りながら、私は鉀兜姫の申し出に否やを唱えた。
「いいの、このままで」
生きることで私を励ましてくれた兜虫。それが残した縁なら、このままに留めておこう。そうしたいのだという気持ちが素直に生じた。
次いで心に期すものが浮かび上がる。私はそれを熱いままに言葉に変えた。
「みんな。もう二度と、あの子が大きくなって霊塊に苦しむなんてことがないように、私たちで地殻の罅をしっかりと塞ごう。ねっ?」
一同を見回して、そう呼びかける。
放谷が親指を立てれば斑良ちゃんがそれを真似っこし、馳哮姫は何度も何度も頷いた。愛発姫はバシバシと当たる馳哮姫の忙しない尻尾を払って硬い微笑み。恭しく畏まる鉀兜姫の隣では夕星が「気負い過ぎて空回りしないでよ」と普段と変わらぬ憎まれ口を叩くのだった。




