初めての依頼
今日は少し長めかな?
ステータスで稼いでる気はしてるけど。
いつもこのくらい書けるようになりたいですねぇ。
心地よい風が流れこみ、私は目を覚ます。
久しぶりにぐっすり眠った気がする。
ゆっくりを体を起こし、身支度を整える。
「朝食をとろうかな。」
朝はまだ早いというのに食堂はにぎわっていた、
「あ、おはようございます。」
元気な少女が挨拶してくれる。
昨日、受付でお金を払ったおかみさんの娘らしい。
「おはようございます。」
「あら、礼儀良く挨拶できるなんて偉いわね。なんか頼む?」
完全に子ども扱いだ。最近離れてきたとはいえ、中身は60のおっさんなのだ。
年下の子に子ども扱いされるのは、少し恥ずかしさがある。
「では、スープとパンで。飲み物はミルクをお願いします。」
「はーい。すぐにもっくるね。」
少女はぱたぱたと厨房へかけていく。
朝食をすました後は冒険者ギルドに向かう。
ギルドの依頼表に目を通すがFランクのクエストはろくなものがない。
どぶさらいとか、薬草集めとか、荷運びとか。
「うーん。全部やっちゃえ!」
できそうなものから、順番にやっていくことにした。
「すいません。一度に受注できる依頼はいくつまでですか?」
依頼担当の受付嬢に聞いてみた。
「えーっと。原則では1パーティーごとに10個まで可能ですが、失敗すると達成率に関わってくるので、皆さん多くて3個受注とかですかね。」
「そうですか。ではこの10個願いします。」
私は荷運びの仕事を10個受けた。
受付嬢が顔をしかめた。
「私の話、聞いてました?」
「聞いています。これでお願いします。」
「失敗しても知りませんからね。」
いらいらしながら、受付嬢は受理してくれる。
さぁ、暴食の出番だ。
改めて依頼の場所を確認する。
「あれ、全部一緒だ。」
住所はすべて一緒の場所を指していた。
どうやら、大量の荷物を多くの人数で手分けして運ぶ仕事だったらしい。
適当に選びすぎて気づかなかった。
依頼書の住所には3台の馬車とそれを一生懸命運ぶ冒険者の姿があった。
それを指揮している男性に声をかける。
「依頼を受けた冒険者です。荷運びの仕事はここであってますか?」
「おう、あってるぜ。嬢ちゃんが受けるにはちと重すぎるんじゃねぇか?」
「大丈夫です。魔法があるので。」
そうなのだ、この世界には収納魔法というものがある。
といっても、大型リュック一つ入るかどうからしいが。
暴食はそんな制限がないので収納魔法の上位互換といえるだろう。
「そうか。まぁ無理すんなよ。じゃあ、受理された依頼書を出してくれ。」
私は10枚の依頼書を出す。
「おいおい、ふざけてるのか?いくら収納魔法があるからと言っても、この量は無理だろ!」
この依頼は5人で馬車一台分の荷物を今日中に倉庫に運び込むものらしい。
私は10枚受けたので馬車2台分だ。
私は、男性の目の前で馬車2台の荷物を暴食で収納して見せた。
「これで、わかりましたか?」
男性は口をあんぐりと開けたまま動かなくなってしまった。
しかたない。先に倉庫へもっていこう。
「倉庫の場所がわからないの、ついて行っていい?」
「...勝手にしろ」
同じ依頼を受けた他の冒険者の後を追うと、そこに倉庫があった。
そこに荷物をすべて吐き出し、私の分の依頼は終わってしまった。
馬車に元に戻るとまだ放心状態の男性がいた。
「あのー。お兄さん?お兄さんってば!」
やっと我に返ってようだ。
「あ、え?すまない。あまりにもあり得ない光景に驚いてしまって。」
驚いても普通、あそこまで放心状態にはならないと思うな。
「私の分、終わったので帰っていいですか?」
「倉庫を確認する。少し待ってくれ。」
男性は、倉庫を確認した後。もどってきた。
「確認した。依頼はすべて達成だ。それにしてもすごい容量の収納魔法だな。
君が良ければ、うちの商会で働かないかい?」
すまないな。商人ギルドには所属できないんだ。身元証明不十分で。
「いえ、一流の冒険者になることが夢なので。」
「そうか、残念だ。気が変わったら家にきてくれ。いつでも歓迎するよ。」
「ありがとうございます。」
笑顔で断ることができた。
息をするように嘘を吐く。うーん悪役令嬢っぽい。もう違うけど。
もう一度冒険者ギルドに向かう。
依頼を受けてまだ、30分ほどしかたっていない。
「すいません。」
先ほどと同じ受付令嬢のところに行く。
「やっぱり無理だったでしょう?でも忠告はしましたからね?違約金のほうが「いえ、終わりました。」枚にな...は?」
受付嬢の声にかぶせるように依頼達成を告げ、ギルドカードを見せる。
ギルドカードには依頼達成の文字が10個ならんでいた。
「え、そんなわけないじゃない!だって10人分よ!まだ30分よ!きっと何かの不正に決まってるわ!」
受付嬢が叫ぶ。その声は大きく、まわりの冒険者を注目させた。
失敬な!不正なんかじゃないやい!
「騒がしいわねぇ~。何かあったのかしらぁ?」
「ギルマス!この子が不正で依頼達成をしているんです!」
「あらぁ?フローラちゃんじゃない。」
昨日のオカマギルドマスターが出てきた。
「こんにちは。ギルドマスター。」
私が問題を起こすたび、この人が駆り出されるんだろうか。
昨日の今日ですいません。
「それで、フローラちゃんが不正をしたんですってぇ?」
「そうなんですよ!」
あれ?ギルドマスターは向こうの味方?
これまずい?
「で、証拠は?」
「これです。30分で10人分の依頼を一人でこなしたっていうんです!不正に決まってます。」
「これだけかしらぁ?」
「これだけ...って十分でしょう!」
「これじゃ、疑わしいってだけで証拠にはならないわぁ。実力であることの否定はできていないんじゃなぁ~い?」
「そうですが...そうです!依頼者に聞けばわかるはずです。」
「お、いたいた。おーい、収納魔法の嬢ちゃん!」
あ、さっきのお兄さん。なんてナイスなタイミング。
「どうしたんですか?」
「これやるよ。本来一日かかる仕事だったからな。昼飯を用意してたんだがってすまん。取り込み中だったか?」
どうやらこの依頼、昼ご飯付きの依頼だったようだ。
仕事を終えた私の分のご飯もあったらしい。
「いえ、むしろ来てくださったおかげで話がまとまりそうです。あ、お昼ご飯はありがたくいただきます。」
「これでフローラちゃんの不正疑惑は晴れたわねぇ~ん。それにしても、収納魔法ねぇ~。」
「クッ...」
受付嬢は悔しそうだ。
「ねぇ、フローラちゃん。今回みたいなことがないように昇格しないぁ~い?その実力ならいい話があるわよぉ~。」
ギルドマスターは受付カウンターの下から一つの依頼書をだした。
「これを達成できればその実力に応じたランクに昇格できるわぁ。もちろん、不正防止かつ護衛役にギルドの人間を連れて行かなければならないけどねぇ。」
「ギルドマスター!その依頼は、「黙りなさい。」」
ギルドマスターが低く迫力のある声で受付嬢に言い放つ。
「あなたは今回の騒ぎの罰としてしばらく書類仕事ねぇ~ん。」
「...はい。」
「どうするぅ?フローラちゃん。」
依頼書にはイビルボア3体の討伐とある。正直、知らないので強いのかもわからない。
ちまちま依頼を受けて、ランクを上げていこうと思っていたが今回みたいなことがまた起きるのは困る。
なるべく目立ちたくない。
他国とはいえ、私は捜索中の身なのだ。たぶん。
これで捜索もされていなかったらちょっとショック。
「受けます。その依頼。」
「決まりねぇ~ん!安心しなさい。監視役にはあたし自らついていくわぁ~ん。」
え、あんたが来るの?
このオカマと二人旅?
「よ、よろしくお願いします。」
「よろしくねぇ~ん。」
**
あのギルドマスターは装備を整えて明日の朝ギルド前に集合と言っていたが、装備はある程度そろっている。ほとんどがあの奴隷商人の館から拝借したものだが。
適当に二週間分ぐらいの食糧を購入し、宿に戻った。
あとは、宿のおかみさんに話をつけておかないといけない。
せっかく一月分も借りたのに、死んだと思われてキャンセルになってしまう。
「おかみさん。部屋かりてすぐでわるいけど、明日から少し空けます。」
「そうかい。冒険者ってのはせわしないねぇ。」
よくあることなのか、おかみさんは動揺せずに承諾してくれた。
夕飯をとった後、部屋に戻ってステータスを確認する。
最後に鑑定した日からかなり経った。
いろいろスキルを覚えていてもおかしくない。
「あれ?でも、あのアナウンスが聞こえてこなかったような」
以前、他人に触れたときは会得したスキルの名称がアナウンスされていた。
『アンサー。現在、アナウンス機能をOFFにしています。マスターのスキルは以前より増加しています。』
あ、さいですか。
「じゃあ、古代鑑定!」
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フローラ
種族:人族(女性)
年齢:6歳
職業:冒険者
レベル:3
体力:22
魔力:30
筋力:28
器用:32
耐久:30
俊敏:36
知力:29
運力:10
〇スキル
剣術Ⅱ、体術Ⅰ
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「あれ?すごく低い。スキルも消えてるし...」
『アンサー。当機が冒険者登録の際、ステータスを平均的な成人男性より強いレベルのものに書き換えました。』
そっかー。ってこれが平均成人男性より強いの?
うそでしょ?前、ステータスオール100にしちゃったよ。
まぁもうアベリアに戻るつもりはないからいいけどね。
「ステータスみれないの?」
『アンサー。一時的にステータス読み書きを廃棄して古代鑑定を実行します。』
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アベリア・スカーレット
種族:社畜おっさん♀
年齢:6歳
職業:殺人鬼(盗賊、冒険者、奴隷、騎士、狂戦士、魔術師、公爵令嬢)
レベル:22
体力:O
魔力:O
筋力:O
器用:O
耐久:O
俊敏:O
知力:O
運力:O
〇スキル
剣術Ⅹ、体術Ⅳ、弓術Ⅴ、斧術Ⅲ、槍術Ⅴ、
魔術(火、水、土、氷、風)
奴隷操作、詐欺術、行政、ポーカーフェイス、
古代鑑定、ステータス読み書き、職業変更、通信
〇固有スキル
七つの大罪(傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰)
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「うわぁ...」
予想以上にえげつないことになっていた。
職業が殺人鬼になっとるし。なんでや。
『アンサー。当機が起動した際、館の敵対生物を駆逐しました。
職業”殺人鬼”は人殺しに何も感じない人間に強制的に与えられ、ステータスに下方修正がかかります。』
あれ、特に違和感ないんだけど。
「ねぇ。私、下方修正かかってる?」
『アンサー。かかっていますが、マスターの場合は下方修正がかかってもあまり変わりません。』
なにそれ。どんだけステータスおばけなんだよ。
さらに言うとスキル強すぎない?
「剣術がこんなに強い人、あの奴隷屋敷にいたの?」
『アンサー。いませんでした。”嫉妬”の効果で模倣したスキルが重複している場合、スキル経験値として加算されるようです。』
へー。じゃあ私は努力しなくても剣術が使える相手をペタペタ触るだけで強くなると。
チート様様ですね。
あ、魔法使えるじゃん。
やったー!これぞ異世界!魔法万歳!
戦闘になったら使ってみよっと。
魔法を使う姿を想像しながら、私は眠りについた。
**
「あら、きたわねぇ~ん。」
次の日、朝食をとった後、ギルド前に行くとすでに準備万端なギルドマスターがいた。
「おはようございます。すいません。待ちました?」
約束の時間前ではあるのだが、本来なら依頼を受ける側が先に来ないといけない気がする。
変なところで前世の癖が抜けないなぁ。
「いいえ~。今来たところよぉ。それじゃあ、生きましょうかぁ。」
こうして女(片方は心のみ)の二人旅は始まった。
実はあの第二王子めっちゃ強かったっていうね。
次は王子視点かな?
あ、テンプレは募集してますよ。