表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/40

6

ぜ…全年齢…やっぱ無理かも。


 どうやら過去の愛し子は皆若くして亡くなってしまったが故に、子供もいなかったらしい。

死因としては病気や事故もあったようだけど、愛し子がそのように亡くなっても国は荒れることがなかったというから、他殺の可能性はないんだなと思った。

 だってもし愛し子がなんらかの害意によって脅かされた場合は、必ずその原因となった国には災いが起こっているのでその辺りは非常に分かりやすい。

 

「ナツの気持ちを無視して、性急に事を進めた事は申し訳なく思っています。だが、私はあなたが心配で…」

「リアムは元々言葉足らずで誤解されやすい。騙すつもりはなかったんだと思う。こいつが愛し子様にめろめろなのは分かってるだろ?」

「相手が心配でかつ、何も知らないなら何してもいいと?この国じゃ同意無しの性交渉は犯罪じゃないの?」


 なに、この通じて無さ。私が何に怒ってるか分かってないのか。これだから性的搾取の対象になったことがない男というのは…。合意もなく、無理矢理一回ガチで掘られてみろ、クソが。


「問題はありましたが、ナツを守るためには既成事実をつくる方がいいと考えました。どうか分かってください」

「だから言葉が足りてねぇよ~、あのなリアムの妻という立場になれば、政治的な事も含めて今より守りやすくなるって言いたいんだ。でもそれは気持ちを無視していいって言ってるわけじゃないからな?話をしなかったコイツがいけないんだ」


 問題大有りだよ。それでいいのかよ。既成事実が成立した後でどんな言い訳するつもりだったんだよ。

いつも思うけどまず説明しろよ、忖度度合いがアメージングな日本人でも何でも分かるわけじゃない。何でも知ってるんじゃなくて、知ってることだけしか知らないし、わかんないです。マジでどこかの羽川さんじゃないんですけど。

 

 ま、よくある恋愛ものだと、ヒロインはこの時点で王子サマにめろめろだったりするから、『そこまで私を思ってくれるなんて!』って感激して身を任せて目眩く官能の世界へ~、って感じなんだろう。しかしいい感じにひどい恋愛体験しかしてない私は、ちっともときめかないぜ。ときめく感度が低いのか、そもそも感度が残ってるのかも怪しい。

 同意も無しに暴力的に強引な性交渉で感じるわけもないし、トラウマなるわ。

エロコンテンツみたいに感じるようになるには、やっぱりそれなりに幸せな経験も必要でしょ。

 

 更にはこっちにその気がないのに、一方的に好き好き言われて外堀を突貫工事で埋めてきてる、というなんとも言えない不快感も感じてる。一言でいうと、『イケメンだったらなんでも許されると思ったら大間違い』なんだよ。


「私、結婚する気なんか無いし、生涯独身でいいと思ってる。結婚が幸せのゴールなんて思わない」


 2人がポカンとした顔をした。

この世界では問題があるわけでもないのに結婚をしない女が非常識なのはわかる。今までの話の流れで、結婚しないでどうやって生きてくんだって思う。だから仕事したいって言ってるんじゃん。出来ないことばっかり数えて嘆いたって自分は救えないんだよ。

御伽噺や童話で2人は結婚しました、めでたしめでたしの先が一番問題だと思うんだ。


「そのためにも先ずは自立したいんだ。この国は愛し子によって恩恵あるんだからさ、私にその分給料払ってよ。っていうか国から予算とってあるんだっけ?でも今のままじゃ労働してる気になんないから、魔術師団で研究に協力するよ。非人道的な研究とかはごめんだけど愛し子の研究を進められるのは国にとって有益でしょ?愛し子として仕事をする!そして対価を貰う!なんか問題ある?」

「俺にとっては願っても無い申し出だけど…」

 

 王子サマから感じる雰囲気が剣呑としてくる、多分瞳がまた濃い色に変わってきてるんだろう。

だけどここは譲りたくない。


「ナツは私の庇護下にずっといればいい、尊い貴女が仕事など…必要ない」

「王子サマだっていつかは誰かと結婚するんだから、そんなの無理にきまってんじゃん」


 小姑だけでもうっとおしい場合が多いのに、身内でも愛人でもなんでもない、なんと表現していいのか分からない立場の女がいる男なんて、絶対めんどうな事故物件以外の何者でもない。しかも同居、ありえない。


「私はナツ以外と婚姻を結ぶつもりはないし、アナタを手放すつもりも無い!」


 声を荒げた王子サマの発言内容が私には衝撃的だった。テオが固まっているのはこんな風に感情を露にする王子サマに驚いているからだろう。


「…それともナツは他にだれか想う相手がいるのか…?」

「恋愛感情で誰かを好きになるほど今まで関われたかどうかは、王子サマが一番よくわかってんじゃないの?あれもこれも制限されてて、そんな相手いるわけないっつーの」

「なら、どうして生涯独身などと…」

「結婚なんてものしたくないから」

「私はあなたを一生大事にします、絶対です、だから」

「でも王子サマ、私の事を勝手に決めるから嫌だ、そういうの嫌い」

「…っ!」

「意思疎通すら出来ない人と結婚なんて…恋愛だって無理だね」


 みるみる血の気が引いて白くなる王子サマの顔を見て、やりすぎた?と感じた。

だけど私は私の体をこの国の繁栄の為とやらに差し出すつもりはない。そんな義理はない。

以前の私なら、相手の気持ちを考えて自分の心を押し殺しただろうけど、そんな事もうしないよ。


「ちょっとお前らは2人で腹割って話した方がいいぞ」


 私を見てテオが苦虫を噛んだような顔をしているのが解せない。この場合は王子サマの方が問題でしょーが。


「ちょっとクールダウンしてくる」


 それだけ言ってその場から逃げ出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ