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朝晩寒いかと思えば日中は場合によっちゃコート着てたら暑い。暖冬って本当ですね。
だいたい12月に入ったら各地もっと雪が降ったり、厚手のコート着てマフラーぐるぐるに
巻いてたりするもんですが…。いや、寒いの苦手だからいいけど。
皆さんも油断して風邪などひかれませんようご注意くださいね。
さーて、来たよクリスマスシーズン…字面だけで死んでしまいそうな瀕死の社畜ですが
じわじわ頑張ります。あー、ゆっくり寝たい…。睡眠の重要性!と叫んでしまいそうです。
13時間睡眠…私もとりたいです…羨ましい~
「ちょっ…ヴィクトル天才なんじゃない!?」
「それを冒険者としてどう生かせるかがまだ課題ではありますが、生きる糧を得る足がかりにはなるかと」
「スキル…というよりジョブじゃね?」
「それ自体が職業という事ですか?」
「そうそう、魔術師とか、騎士とかみたいにさ、まぁ誰でもなれるんじゃないけど元々私だって普通の人だし?」
「神の世界ではそのお力は普通なのですか」
「いや、普通じゃないと思う。この世界にだけ通用するものだし。人気ラノベのVRMMOの世界に入り込んじゃったみたいなのがすっごい分かりやすいんだけど。UWでは職業は天職って言って本人が決められるものじゃなくて決められてるって設定があったと思うし、そんな感じかな」
「…愛し子様、理解が及ばないですが、それは我々が知ってよい内容ではありません、聞かなかったことにしますから他の人には喋らないでください」
年下の美少年に怒られた…美形が怒ると整っている分、なんか迫力が違う。そういや王子サマもそうだったな。忘れろ、今奴のことは忘れるのよ、ナツ。
さっきの話は現世でのラノベの話だけど、もしかしてヴィクトルには神の世界の話だと思われちゃったのか。
UWはこの世界の事で、人の職業は神様があらかじめ決めてるって設定だと思われた?
「今のはこの世界の話じゃないからね?」
「ええ、そういう事にしておきましょう。愛し子様の今後の話はまた改めて。そろそろお暇いたします」
「ああ、うん、ありがとう。ちょっとどうにかなりそうな気がしてきた」
ヴィクトルは席を立ち、サラを迎えに行くために扉に向かうのかと思っていたら私の側に歩いてきた。
「愛し子様がお望みなら、貴女をわが国に攫っても構わない」
「…は…?」
「その覚悟があるという事を覚えておいていてください」
自然に伸ばされた彼の右手が、私の髪を掬い、そして口付けた。
「ではまた」
恭しく騎士の礼をとってヴィクトルは部屋を出た。私はしばらく動けず固まってしまっていた。
どういう事!?なんかフラグ立てたっけ?覚えが無い!!!
そんで髪に口付けをする意味分かっててやってたよね、ヴィクトル少年!!
「ヤバイ…新たなヤンデレの予感しかしない…」
「は?今なんとおっしゃいましたか?」
「だから冒険者になろうと思って」
また、突拍子もない事を言い出しましたね、愛し子様。
「冒険者になってなにをなさるんですか、出来る事がありますか?」
「う…クリスティーナ鋭く抉ってくるよね…。でも嫌いじゃない」
また、この人は。嫌いじゃないとか女性が男性に軽々しく言っていいものではありませんよ。
誤解されたりしたらどうする気ですか。そうは思うものの、自分には言ってほしいのであえて口にしない。
「恐れながら、今の愛し子様に冒険者になれるようなジョブもスキルはないと思いますよ?」
「普通そう考えるよね、愛し子の力そのものがジョブなんて思わないよねぇ」
「愛し子様の力がジョブですか?…確かにそう考えた事は無いですね、なんだか抵抗があります。愛し子様は唯一無二と考えるほうがしっくりきます」
「私としては異世界転移ラノベでよくある、チートとして与えられた愛し子っていうジョブだってのが一番しっくりくるんだけどなぁ~」
二人夕食のための準備をしながらキッチンで話をしている。
近頃、工事の打ち合わせや、大量の寄付のために私の事務作業が増えて愛し子様との時間が取れないためである。しかしその工事ももう終わり、明日は引渡しとなる。
「だけど冒険者なんて駄目ですよ。身を守る術が愛し子様のお力だけしかないか弱い貴女をどうやって送り出せというんですか。心配しすぎて私の胃がどうにかなるのを少しでも案じてくださるなら、危険な事はしないでください。ここに居てくださったらいいのですよ。愛し子様がいてくださっている事がどれだけ支えになっているか…」
「うん…でもさ王子サマ達にここまで見つからないのが逆に不自然というか、多分本当はもう見つかってるんだと思うんだ」
愛し子様が野菜を炒めながら話す。
「なんか泳がされてる気がするんだよね、王子サマ側のなんかの準備が整うまで。じゃなきゃ絶対すぐに見つかって連れ戻されてると思うんだ。だったら逆に目立った方が安全じゃないかと思ってさ。仕事始めちゃってさ、周りの人もあきれてしかたないなって何となくそれが日常になっちゃうみたいになし崩し的にしたほうが、あっちも手出ししにくいんじゃないかと」
愛し子様にはお話していないが、確かに街全体に孤児院に愛し子様がいるんじゃないかという噂が既に流れてしまっている。まだ庶民だけの軽い噂だが、いつしか貴族の耳にも入るだろう。
人の口に戸は立てられないというのは本当だ。私も子供たちも漏らしてはいないが、サラやヴィクトルが頻繁に来るようになって、御付きの者、仕立て人、工事の職人等、結構な人間が関わっていて薄々気がついている者もいる。愛し子様の事を知った全員が秘密にできるかなんて難しい。そうでなくてもこんな近くに愛し子様がいるなんて、嬉しさのあまり話してしまいたくなるというのに。
「皆が知っていて突然消えたら、そりゃ街の人が騒ぎ立てるでしょうしね」
「というわけで冒険者ですよ!どうよ!」
話しながらも愛し子様は手を止めず、せっせとスープを作っている。こうしてお側にいて、共に食事を作ることができるなんて私は幸せ者です。今は私が愛し子様を独り占めしているのですから。
「しかし、冒険者登録できるのでしょうか…前例がありませんし。王都でのギルドへの依頼といえば害虫駆除や地下水路の掃除というような体力のいるどちらかと言えば汚れる仕事が多いですし」
「私がいる限り魔物は来ないから、魔物退治もなさそうなんだよね。でもそれを仕事にしようと思ってる」
「は?というのは?」
「道中の魔物よけとかどう?」
「効果は抜群でしょうが、魔物以外からご自身の身を守れるようになってからにしてください」
「…だね、そうなると街の清掃とかかな」
「本当に止めてください…愛し子様が清掃作業…うっ…考えただけで胃が痛い」
「ここでやってる事を冒険者規模にしただけじゃん、大げさだなぁクリスティーナは」
「ここでも何もなさらなくていいと言うのに、全く聞いてくださらないし…」
「ダイエットを兼ねているので心配めさるな」
「愛し子様が時々何を言ってるのかわかりません…」
この日常がずっと続けばいいのに、愛し子様の側にこのままいられたらと願ってしまう。
疑う事を知らないかのような愛し子様の為に、私は何ができるだろうか。
さて、言葉足らずの馬鹿王子(男は言わなくてもわかるだろ?みたいな…わかるわけないんですけどね)ですが、
節度ある溺愛…にするか「この馬鹿人の話聞いちゃあいねぇ!」なヤンデレにするか悩み中。