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ぼちぼち更新していきます。



 私は口を尖らせて目の前の、柔かな茶色のカフェオレみたいな色の、ふわふわ癖毛の王子サマに抗議している。彼は私にお説教しているのに何故か楽しげに笑う。

笑う彼の蜂蜜色の瞳はとても綺麗で、吸い込まれそうってこういう感じなんだと思う。


「こっちの世界の事いろいろ知りたいだけなのに」

「ならば教師を手配しましょう、意欲があっていいですね」

「いやいや!勉強は嫌だ!楽しく体験したい!」

「貴女のいた世界はこちらと随分違うと言ってましたね。気持ちは分かりますが、『愛し子』に侍女や庶民のような事はさせられません」


 またそれだよ。そんな事言ってあれもダメこれもダメなんだもん。段々ストレスが溜まってくる。

 最初は離宮で生活していたけど、現代日本の庶民の私があんな窮屈な生活耐えれるはずも無かった。

常に人目があって気が抜けなくて、服装もコルセットをつけてのドレス。

何から何まで他人の手をかりないといけない日々にストレスが溜まった私の為に、

この目の前の王子サマは城下の貴族達の屋敷が立ち並ぶ、この上級町の屋敷に移り住めるようにしてくれた。

おかげでかなり日々の生活は私に都合よく改善された。この世界では相当非常識な事なのに精一杯譲歩してくれている、それは本当にありがたいとは思っている。


 それもこれも私がこの世界の神様が使わした愛し子という、豊穣の存在だと思われているから。

自分がその愛し子だなんて思えないけど、教えてもらった伝承と実際の現象は確かに一致している。

 愛し子が現れるとこの国の神殿に神託が下った後、愛し子を象徴する白い花が国中に咲き乱れたらしい。

実際私がこちらに転移した時、周辺には確かに白い花が咲き乱れてた。

その白い花は植えたのではなく、ひとりでに咲き、枯れると国土を富ませるのだそう。

そしてそれは人が栽培できるものではないらしい。

 愛し子が日々健やかに国内で暮らしているだけで、瘴気を払い魔物を退け国の繁栄をもたらす。

なので神託が下った際、どこに現れるか分からない愛し子をいかに迅速に保護するかが重要らしい。幸い私はすぐに保護されて、このふわふわ癖毛の第四王子が後見人として私の面倒を見てくれている。


 だ!け!ど!過保護過ぎるんです!実際は屋敷に軟禁状態です。

屋敷の敷地内ならなんとか自由にしていられるけど、外出は駄目、接する人は限定的という…。

せっかく異世界転移なんて都合のいいラノベみたいな夢をみてるんだから、街に出て異国情緒とか楽しみたいのに。


「じゃあ街に遊びに行きたい~」

「町に何をしにいくんです?特に面白いものなんてありませんよ。欲しいものがあれば商人を呼びますのでお好きなものを仰ってください。今度他国の珍しいものを扱う商人を呼びましょうか?」

「いや、物はいらない。庶民の市場を色々見てまわりたい、楽しそうなんだもん」

「お忍びですか?愛し子様だとすぐに分かって、町が大騒ぎになりますよ」


 愛し子だとすぐばれるのは理由がある。こちらの世界には黒髪黒目は存在しないからだ。黒髪だけ、とか黒に近い濃い茶色の目だけという色を持つ人もごく少数いるらしいが、二つが揃うことはないそうだ。なので、私は外見からして『愛し子です』と宣伝して歩くようなものなのだ。

 

「魔術で髪色を変えるとかできないの?」

「魔術で、ですか…生憎私はそこまで魔術に特化しているわけではないので…」

「じゃあテオならできるかな!?」


 この国の第三王子であり、目の前のふわふわ癖毛の第四王子サマの兄に当たるテオは、この国一番の魔力量を誇る宮廷魔術師だ。かなりの変わり者で、魔術研究の為に身分を隠して各国を放浪したり、研究に没頭して色々やらかしたりとあまり王子らしくない。市井での生活が長いせいなのかかなりくだけてて接しやすい。目の前の王子サマはあまりに見た目も振る舞いも王子様すぎて未だに慣れない。

美形の血を積極的に取り入れているからか、テオにしろ王子サマにしろ見た目はめちゃくちゃ美形なんだよな。

 あれ?なんか王子サマの機嫌が少し悪い?


「以前から気になっていたのですが、なぜテオ王子は名前で呼ぶのですか?」


 え?ちょっと気安すぎたかな?本人がいいって言ってたけど不敬罪?


「…私の事はいつも『王子サマ』ではありませんか…」

「え、いや、なんか…別に意味はないんだけど」

「ではリアムと呼んでいただけますか?」


 さっきまで拗ねた様な顔してたくせに、とろりとした色気のある表情で美形がそういうのは破壊力抜群なので止めてほしい。


「ア、ハイ、善処イタシマス」


 目を逸らしながら話題を変えるのに全ての精神力を使った。

美形ってある種の精神的暴力だな、うん。

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