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竜の双翼伝説  作者: 韮塚雫
第一章 過去、そして未来へ
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第一章 二幕(3)

長期間放置しておりましたが、プロットや基本設定の大部分に手を加えて投稿を再開しようかと考えています。


本文内の重要な部分についても修正が行われていますので、ご了解ください。

「いやーはっはっ! 俺たちが4体倒す間に、いとも簡単に3体とは、流石はSランクだ!」

 用意された野営地、焚き火を囲んで黒パンを豪快にかじりながら、ガイノが言った。

 野営地は馬車、木製の骨組みに布が掛けられただけのテント、その大体中央に焚き火があるだけの簡単なものだ。周囲はなだらかな丘になっており、傾斜のおかげで視界は広い。

「剣の重さを忘れる。全てはそこからだと教えられた」

 レグルスも簡素な夕食を食べながら答えた。

「あの高速移動が、魔力抜きの身体能力によるものだというのが凄いです。魔力の流れを感じませんでした」

「御者台に座ってながら、強化のタイミングが見つけられなかったからな。ホント、事前に確認できなきゃ連携なんて出来っこなかったぜ」

 オルティス、マシューも、レグルスの戦闘をその目で見て興奮冷めやらぬといった様子である。

 今日の狩りではガイノが触れたビッグホーンボア以降もウルフやワイルドブル、ギガントビーといった草原からラグア森林周縁部に生息する魔物を数多く狩った。


 一行はオーク討伐に出発する前に、連携の確認の為に城下周辺にて一泊二日の行程で狩りに出掛けていた。

 そもそもはオーク討伐の短くない旅程における食事などの準備物について、その費用負担などのやり取りをしている際に発せられたマシューの一言が発端である。

「じゃあ、連携の確認と併せて狩りに行くってのはどうっすか」と。その狩りでの稼ぎを、準備費用に充てようという提案だった。この申し出をレグルスは快諾。この狩り自体での食事や飲み水などの費用は、オルビス戦士団が負担することとした。

「いやぁ村を出て6年。まさかあの双翼の右、レグルスさんと一緒に戦う日が来るなんて……お母さんに自慢できますね」

「オルティスのお袋さんが喜ぶとは思えねぇけどな。まぁ、安心はしてもらえっかね」

 オルティスとマシューが感慨深げに話す。

 三人は、オルビス村という小さな村落の生まれである。幼馴染として育った三人は村の自警団を経て、冒険者の道を選んだ。中でもオルティスは村の商家の息子であり、母親の反対を押し切っての冒険者になった経緯がある。マシューとガイノはそれぞれ農家と宿屋の次男、三男である。

 レグルスはそんな身の上話も聞きながら、今日の戦いを振り返っていた。


 オルティスは風の魔法を使う。正しく魔法使いである。

 低威力の魔法中心だが使える魔法は幅広く、風属性下位の定型魔法は全てを使用できるとのことである。一度だけ使用した中位での「ストーム」はウルフの群れをまとめて殲滅する破壊力であった。その威力の高さは、マシューの援護によるものである。

 ガイノはハンドアックスを使ったパワーアタッカー。

 土属性に適正がある魔法は使ないと申告していたが、周囲の地面に働きかけることで地面を波打たせることで移動を補助したり、敵の足元を泥に変化させて足を取るような戦法を使用するという、テクニカルな部分もある。アックスでの攻撃の威力は高く、マシューの強化魔法込みの一撃は少なくとも今日の戦闘で防がれることはなかった。

 そしてマシューだが、彼の魔法属性は誰でも使えて威力も低い無属性とのことだ。しかし高威力の魔法を放つ魔法のセンスはなく、体格にも恵まれない彼には冒険者としての活躍の場がなかった。

 苦肉の策として、彼は血の滲む思いで強化の魔法を習得した。物理攻撃の強化にせよ魔法の強化にせよ、彼は広い視野と鋭い戦闘勘によって最適な場面で強化を行なっていた。そのため、彼は主戦場から常に遠くに位置し、戦闘が始まると指揮官のような動きをしている。


 三人からの解説や自身で見聞きした内容から、レグルスは戦力を分析する。

(個々としちゃ弱い。弱い魔法しか使えないオルティスに、戦闘力がほぼ皆無のマシュー、辛うじて見れるガイノにしても大した能力はない。だが、支え合うことで全体としてはバランスが良い)

 レグルスは遠く空を見つめる。

 自身の弱さを支えてくれた、在りし日の相棒にほんの少し思いを馳せて。

 その後は自身の戦い方も解説し、連携の確認を行う。

 明日は城下への帰路につき、道すがら遭遇する魔物の排除、連携の強化を図る予定である。

 日が暮れるまでは連携の確認や明日の行動が話し合われ、交代で見張りに立ち夜が過ぎた。


 翌日は道中の狩りが円滑に進むよう、大きく円を描くように来た道を迂回して馬車が進められる。

 途中敵を発見するたびに馬車を止め、連携を意識して魔物を討伐。

 戦闘は昨日より円滑に進み、日暮れ前には城下への帰還を果たした。馬車には二日分の成果として魔物の討伐証明部位や買取対象部位を載せ、疲労こそ見られるものの全員に目立った負傷も見られなかった。

 前日確認した通り、城下ではギルドに討伐証明部位を提出、報酬を受け取ると足早に商店に移動。買い取り対象となるボアやブルの皮、ウルフの牙などを売り払い現金化した。

 レグルスの泊まる宿屋の前で解散し、翌々日の早朝、ギルドにて集合。二日の内に今回の稼ぎから準備を整えておく。

 一日は走るように過ぎ去り、レグルスは宿の一階で夕食を摂ると早々に床に就いた。


(これじゃあダメだ。少しは慣れたつもりだったが……アイツの影を追っかけてちゃあ、また仲間を失う……)

 レグルスにとって2年ぶりの、パーティでの戦闘。その全てが懐かしく、また全てに痛みが伴った。

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