新しい芽
少々遅れてすみません
少女の一言は、僕の思考を停止させるのには十分過ぎた。それでも、少女は話を続ける。
少女「実は私、私じゃないんです。って言ってもわからないですよね...え、えっと、その...私ロボットの体なんです」
僕「...」
(なんの話だ、どういうことだ)
少女「いきなり、言ってもわからないですよね。私は意識だけが本物で、体はニセモノです。私の体...本当の体は私の『家』(ホーム)と呼ばれるような場所に保管されてます」
少女の説明の区切りのいいところで、僕の思考がようやく動き出した。
僕(何を言っているんだ、君はここにいる。体も普通の女の子じゃないか)
その思いを口に出せばよかったのに、口が拒むように動かなかった。
少女は説明を続ける。
少女「それで、なんで奴隷かと言いますと...私の体はロボットなので手入れが必要です。それは自分ではできなくて、初めはいそうろうだけだと思ったのですが...それでは申し訳ないような気がして、なら、奴隷に.........」
僕「前言撤回」
僕はつぶやく
とても、小さなつぶやきだったが、今の少女の体には聴こえてしまっていたのだろう。
少女「じゃあ、私を奴隷にはしてくれないんですね」
僕「だから、違う!」
声を張り上げて、否定する。
少女「ひっ!」
驚いた時にはもう遅かった。
僕「なんなんだ!さっきから黙って聞いていたら!何?ロボット?私は私じゃない?ふざけるな!自分の体を取り返すような気はあるのか?無いだろ!今の言葉を聞く限りは!取り返せばいいだろ?何か、取り返せない理由でもあるのか?」
自分に似ていたからだろう、必要以上に怒鳴り、怖がらせていた。自分が一番酷い人生を送っていると言っているとも思える。つまらない意地。それが、少女を本気にさせた。涙目になって小さな声を一緒懸命に張り上げる。
少女「ある!あるから、こうして奴隷になる道を選んだの!私の思いも知らないで!」
僕「知らないよ!僕は君が何か隠してるというのしか知らなかった!思ってなかった!それでも!それでも...
僕は君が好きだ!だから言うよ!そんな理由!僕がぶち壊す!どんな理由だろうと!それが君を怖がらせて、脅かすなら!ぶち壊す!」
僕は拳を前に突き出す。
それが終止符だった。
いや、劇のファーストフレーズだ。
短い言い合いの終止符。足を前に運び、少女の手を引くような言い方の終止符。
少女の頬に雫が零れ落ちる。
と同時に体制が崩れ落ちる。
少女「あ...あっ、ありがとう!」
声にならない声で、泣き叫ぶ。
その声は...
少女の答えと、覚悟、そして何より、希望を持てたことの嬉しさでもあった。それが、嘘かもしれなくても救いだった。そんなこと、言ってくれた人なんていなかったから。
そして彼女は、短く、切羽詰まった会話の中で少女は、妥協案ではなく、本当に欲しいものを手に入れた。
少女は更にもう一つの覚悟を固めた。
僕の少女への思いを覚悟に変え、少女が抱えていたものを背負い、助ける決心をした。
これは、一種の契約なのだろう。
僕は少女の主となり、希望となる。
少女は僕に使え、支え棒になる。
そう、一種の主従契約。
少女のもう一つの覚悟は主に仕える覚悟。なぜなら、恋心で少年に一生奉仕しようと思ったからである。
初めて彼女が感情で動いた。
少年の決心は自分の人生を狂わし他の道に持っていくための歯車。
信頼と、愛が芽生え始めた。その芽が一体どこまで行くのかわからない。
人の心は広く、四方八方どこまで行ってもその芽は蔓をどれだけ伸ばしても全てを覆い尽くすことはできない。
もし、覆い尽くすことがあったならそれは、彼らからすれば二人じゃない、一人だ。
そう、彼らが芽生えさせた場所は二人で一つの信頼と愛の巣なのだから。
決して、蔓は伸びることをやめないだろう。なぜなら、彼らの関係は始まったばかりの永遠なのだから...
現在、0時33分雪水湧多です。
いま、書き終わってあげたので読み返していません。
今回は、とても話の深いものを目指しました。実際深いかはわかりませんが、深くしたであろう場所を読み取り考えて、予想していただけるとこちらも、次を書く力になります。
では、おやすみなさい
と、おもったら、自分の名前の漢字を間違えるというミスで今直しました36分です




