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幻殺少女  作者: 雪水湧多
22/29

二日目 夜這いにきました。

ガサゴソ...ガサゴソ...ジー...

バックのファスナーが開く。

「ぷっは!」

そこから顔を出す少女。

少女の目線はベットで寝ている。二人を見ていた。そのうちの片方に歩み寄る。

相当慣れた手つきでベットに入り込む。少年は気づかなかった。

少女は少年の上に乗っている位置になっているため不自然な重さを感じる。そのため、少年の顔にシワがよる。

いちご「うーん、可愛い顔ですね、食べ...れないから、舐め回したい顔ですね」

ペロ

本当に舐める。

ペロペロ

いちご「そろそろ、起こしますか」

ゆっくり唇を重ね合わせる。

もちろん、鼻を塞いでいる。

手を脚部に伸ばす。スエット生地のズボンに手を入れた瞬間。

少年の目が開く。右目は閉じているが、左目がこちらを凝視している。

顔を上げた少女が

いちご「夜這いにきました」


僕「...来なくていいわ、というかどうやって来た?」

いちご「企業秘密です」

僕「まぁいいか。どうせ検討はついてる。でも、早くどいてくれ。二つの意味で重い」

いちご「そんな冷たいこと言わないでください。あと、私重くないです」

僕「早くどいてくれ」

いちご「はい」

ゆっくり、名残惜しそうに離れる。

ベットの脇に立つと

グスッ...グスッ

泣き出した。

…。

いちご「私、一日も待ってたんですよ?...グスッ狭いところで、あなたを待って!」

確かに放置したこちらも悪いが…。とにかくこのままではまずい。神凪が起きてしまう。

僕は飛び起きて洗面所へ少女を連れ駆け込む。

僕「ちょっと、こっち」

「...」


グスッ

僕「頼むから神凪の為にも泣き止んでくれ」

首を横に振る

勘弁してくれよ。こんな夜中に起こされて...

実際、原因は自分にあると思う。

いちご「ひっぐ、。。。ひっぐ 」

おそらく、いちごはあの怪しいバックの中にいたのだろう。他に隠れる場所もないしな。やっと、こいつから解放されたかと思ったのに。

僕「はぁ、さてどうしたものか」

どうやったら泣き止んでくれるのだろうか?

ふと考え付いたのは三つ。


一、物をあげる。

二、抱きしめる。

三、放置。


三は、まず論外な気がする。

一に関しては今なにも手元にない。

ということは消去法で...

いや、ダメだ。なんか、負けた気がする。

何か無いのか?今の俺には手に負えないのか?

神凪に頼る?いや、起こすのはかわいそう。

なら、他に何かあるのか?

神凪を起こさず、この場を収める方法は...

...

....

.....

......

浮かばない。

そんなことをしているうちに。

いちご「もうなんで、振り向てくれないんですか!」

精一杯の声を浴びせられた。

直後、周りの景色が暗くなる。僕の視界だけが暗いのかと思ったが、後ろの明かりが消えかけている。それだけじゃ無い。周りに変な空気が流れている気がする。なんだろう?嫌な予感がする。

ふといちごを見ると

既にそこにはいなかった。

周りを観察していたせいでいちごは逃げ出したのだろう。

僕「おい、どこへ行った!いちご!」

洗面所には居ない。

なら、部屋は

急いで部屋を見渡すが誰も居ない。

何も居ない?

神凪は?

どこへ行った?

神凪の寝て居たベットを調べる。触ってみるとだれも使っていなかったかのように冷たかった。なのに、荒れていた。

辺りを見渡すが何も居ない。

額に汗が走り焦りを隠せなくなる。

ベットの横に置いておいた腕時計を見る。時計はただ無機質にひたすら意味の分からない時刻を表していた。

時刻は6時66分66秒。

意味が分からない。けど、何か自分のものを身に着けたくなって、腕時計を付ける。電気はついているが暗いので非常時用のライトをバックから取り出そうとバックの置いてある部屋の隅に向かう。

神凪のバックがない。どこに消えた?あたりを見渡すが、真っ暗。今は光源の確保を優先した。

バックからライトを取り出す。暗くてよく見えなかったが腕時計のライトを点けて見つけられた。

僕「ん?なんだ、これ。こんなの知らない」

バックに入れた覚えのない物が入っている。暗くてよく見えなくて、ライトで照らして見てみる。それは。

一本のナイフだった。

包丁よりも一回り小ぶりなサバイバルナイフ。

冷静を装いながら、ナイフを持つ。 少し重いが振れなくはない。僕は恐怖からかナイフを持ち続けていた。このままでは持っていけないとナイフのカバーを探す。ナイフの入っていたバックにあった。

まるで銃のホルスターのようなカバーだった。ウェストポーチみたいにつけることができた。

腰についているためさながらガンマンのようだ。

ナイフだけど。

これで、少し気持ちが落ち着いた。頼りになるものができたので安心したのだ。

とは言え、先生に見られたらこっちが殺されるのでスエットで隠す。そしてライトを照らしてもう一度部屋を見渡す。

やはり、誰も居ない。何もない。むしろどうしてここまで荒らされているのかと思えるくらいに、汚れていた。傷ついていた。

壁には、小さな穴がいくつもついていた。まるで、弾丸が通った後のように。ここにいると、不安が焦りを加速させる。こうなると、外に出るしか考えつかない。

部屋のカードキーを持ち外にでる。

出るときは、周りを確認した。

周りには、不自然なぐらい何もない。誰も居ない。けど、部屋同様にいたるところに小さな穴や、小さな傷跡が複数見られる。

慎重に部屋をでる。

隣は班員の半分がいるはずなので、一応インターホンを鳴らす。

…。

だが応答はない。そもそも、インターフォンが生きているかも怪しかった。

思わず固唾を飲む。

寝ているなら良いが神凪みたいに居なくなっていると怖いな。

薄暗い中一つ一つの部屋のインターホンを鳴らすのも一つの手だが、そんなこと怖くてできなかった。

僕は何が起こっているか少しでも把握できるように一階のロビーに行ってみることにした。

こんばんわ。

眠いです。

雪水湧多です。

目が痛いです。

忙しいです。

すみませんです。

寝ますです。

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