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安保法案公聴会 後編

「さて、今回の安保法案、その本質は経済戦争です。

この法案を通すことで、十年、二十年後の日本は弱体化します。

更に怖いことに状況を立て直すのは困難でしょう。ずっと続きます


二つ目のポイントを思い出して下さい。

外部から来た法案ということを。

誰かが何かをしようとする時、それは利益を求めて行います。

今回の場合は、相手を不利益な状態にすることで相対的に

利益を得ようというパターンです。



では、どのような策なのか説明します。

内側と外側から、いや、ソフトとハードの両面に効果がある攻め方ですね。

極めて質の高い策と言えます。


ソフトとは、日本というブランド、イメージを汚すことです。

日本は質の高い技術を持ち、平和で街の治安もいい所です。

日本に住んでいると気が付かないと思いますが、

海外から見ると日本というブランドはかなり良いものです。

経済においても、日本の円は信頼度は高いです。

もし、北夕鮮が日本と同じ技術力があったとしても、外資はどちらの

株やお金を買うと思いますか?

答えは明白で日本です。


それは日本が戦争をしない国、経済が安定している国として

認めているからです。

もし、軍事を増強しどこかの国での戦争にお金を使うようになれば

当然、経済が弱まります。イメージも悪くなる訳です。



ハードについては、軍事費の増加ですね。

現在においても日本人の幸福度は先進国の中でかなり低いです。

しかも、将来が不安で子供を作りたくないという人が増えています。

今後は軍事費を捻出するために、消費税20%や25%は当たり前な

時代になるでしょう。

ウメリカでさえ、軍事費については頭を抱えています。

賛成意見の方々が言っている世界の平和を守るほどの軍事力は

そう安くはありません。

消費税やその他の税が上がることで、ますます少子化が進むでしょう。

人口が減りすぎるために起こる経済の悪化を恐れて

難民や移民を受け入れることにもなるでしょう。

そうすると当然治安も悪くなります。悪循環ですね。


さあ、これで理解できたと思います。3つ目のポイント

『 安保法案は仕掛けられた経済戦争である 』

ということを」



紫一郎はテレビの前で項垂れていた。


「そうかこれか、何か胸の中で引っ掛かっていたものは。

基本を忘れていた。

俺が作ったのはみんなの未来を明るくするための党だ

国民の未来を考えないで何やってんだ」

「先生・・・・

きっと戦争という言葉を聞いた時に、気持ちがそこに

集中し過ぎたんではないでしょうか」

「そうだな、俺もまだまだ未熟だったってことだ。

法案は可決されるだろうが、まだまだやれることがあるはずだ

気持ちを切り替えてやるぞ俺は」

「はい、お供します」




「この法案の本質は理解できたと思います。

ただ、賛成の方々が言っていることにも注目する必要はありあす。

戦争が起こった時にどうするのか、戦争を起こさせないための抑止力は持つべきとか

世界平和のために尽くす義務があるのではないか

この辺は重要ですね。


まず、軍事力による抑止力ですが、まぁ、頑張ってもそれほど

効果はないと思います。

世界最大の軍事力を持つウメリカの存在があっても、資源戦争は起こるし

テロも発生します。

国民の心を折るほどの税を集めても、無くなりはしないでしょう。

何かに不満を持つ国は、相手が強いから我慢しようということより

いかに相手にダメージを与えるかを優先して考えます。



それから義務についてですが、義務なんて言葉を使うから

どこまでが義務なんだとか、よく分からなくなるんですけど

経済は一国内だけで完結するものではありません。

日本の周りで戦争が起きれば、そのあおりを受けます。

義務とか言う前に、日本を守るためにも戦争を起こしてはいけないんです。

人としても戦争という人殺しを認めることもいけませんし。



軍事費をいくら使っても効果が薄いのであれば

戦争を起こすメリットを減らしていくやり方が日本にはあっていると思います。

例えば、世界中で必要とされるインフラ作りに手を貸すのです。

お金を出すだけでなく、技術と育成環境を提供する形で。

豊かになればなるほど国として、戦争をするメリットが減っていきます。

また、日本というブランドの向上にも繋がります。



私の説明したかったことはこんな所ですかね。

今回の公聴会はテレビ中継されてますし、ネットでも配信されることでしょう。

安保法案が可決し、十年後消費税がバカ高くなったとしても

何か知らない内に日本が住み難くなったとか、税が高くなり過ぎて苦しいとか

泣き言をいうのは止めましょうね。

これは国民が選んだ政治家たちが決めることですから」



会場が少しざわついている。

小さい声だったが野次もいくつか飛んでいた。


「今ちょっと、平和を他人任せにしていいのか、とか、領海侵犯のこととか

なんか意見を? 発言を聞いたのでここで幾つかの提案をしたいと思います。


法案について与党からは戦闘に関わらない程度のサポートという話が出ているので

その範囲で考えたいと思います。後方支援って奴ですね。

ぶっちゃけていいます。

お金で委託すればいいのです。

軍事力アップするより遥かに安上がりです。

例えば、物資輸送はmamazonに頼むとかですね。

当然、これにはソフトとハード両面の安全対策が必要になりますが。

ソフト面は、海外の大手企業を利用することで

裏切り的な行動を抑制します。

企業内部の監視も厳しいと思いますし。


ハード面では、正規のルートを外れたら自爆するような装置を付けます。

このダブル対策で不正や略奪行為を防ぎます。

えー、海外の大手が引き受けるはずが無いという意見もあると思いますが

ここは、あの一つ目のポイントを思い出して下さい。

外部からの圧力には弱いってことを。

mamazon は日本のネット通販で大きな利益を得ています。

これに規制を掛けるという感じで取引すればいいのです。

海外が行う手法を日本も真似する訳です。


それから領海侵犯のことですが

日本は専守防衛を貫いてきた訳ですから、まずはここに磨きを掛けましょう。

無線で操作する無人の拿捕専用船を作るべきです。

領海を侵す船に対し、船の機能を停止させることを目的とした船です。

武力は一切装備せず、化学反応で何千倍と膨らむ物質を撃つ泡砲や

スクリューを停止させる金網砲、搭乗員に対して軽いダメージを与える音波砲とか

操行を邪魔する様々な装備をするのです。


相手が武力行使してきたら、こちらも巡洋艦で対応すればいいのです。

専守防衛ですね。

今、できるか、って言う人がいましたが装備については問題なくできます。

無線操作の無人船を作るのは、造船所だけでは困難だと私も思います。

ただ、自動操作の研究に力を入れている車メーカーと

バーチャル戦争を作っているゲームメーカーの3つの業界が力を合わせれば可能になります。

ゲームメーカーが作るユーザーインターフェースはどの業界よりも

優れていることを知ってましたか。

更に、ゲームを動かしている仕組みの中でも注目したいのが、ガイドや補正、補間の技術です。

これからすべき事を予測してガイド情報を表示したり、補正、補間の技術で

あらゆる操作の精度を上げてくれます。

その証拠に、ほら子供でも操作できるのですから。



もう時間なのでこれで終わりますが

最後に四つ目のポイントです。

『 現行の法や、憲法を守っても出来る事は沢山ある 』

ということです。

それをやらずに、海外の策に落ちるのは非常に馬鹿らしいことです。

国を動かす方々にはもっと頭を使って貰いたいですね。


一つの企業では出来ないことでも国がやれば可能になります。例えば

東京の近くに、そう千葉が良いですね。

千葉に巨大なテーマパークを作るのも良いと思います。

ただ巨大という訳ではなく、世界にあるいくつものテーマパークを

そのコピーを千葉の中に集めるのです。

空港からのラインもしっかり作り、ホテルもカジノも、

二十四時間営業のエリアも作ります。

ここで得た収入の一部を世界の国々の為に使えばこれも平和活動になります。


また、アミューズメントだけではなく、格安で泊まれる施設や

一日単位で利用できる学校や職業訓練所も用意します。


日本の技術を大人や子供、誰でも体験できる

世界中の人々が一度は来たくなる様なものを作りましょう。

渡航することができない貧困な人たちを招待するのもいいと思います。


武力のみが平和の足掛かりではないことを知って下さい。

以上で終わります。

ご清聴ありがとうございました」



紫一郎は涙目になっていた。

テレビ中継が終わった後も視線はそのままだった。


「あいつが欲しい・・・」

「えっ」

「石黒、あいつをこの党に引き入れたい。連絡を頼む」


その日の夜、紫は沢田を食事に誘い懇願した。

が、結果としては断られた。

沢田曰く、

顔も知らない人のために何かをするより

目の前の子供たちにパソコンの楽しさを教えて、

その喜ぶ姿を見ることが何よりも有意義である。

とのこと。


紫には理解できない理由ではあったが、

沢田の話術に逆らえる筈もなかった。


そして数日後、安保法案は否決された。


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