運命
彼女には、母が居なかった。父が居なかった。帰る家もなかった。そんな彼女にも、能力と呪いが掛かっていた。運命、そんなものがもし実在するなら、これはその一角なのかも知れない。類は友を呼ぶ。その言葉は僕と彼女によって実現された。そんな彼女の能力は、話をきく限り、「完全記憶能力」らしい。そう語った彼女の言葉に嘘は見つからない。彼女が一歳の時に彼女の両親は魔女により殺された。そして彼女は、その能力の性で、両親が殺されたワンシーンを未だに覚えているのだ。それが当時一歳だった彼女の脳裏に、どう焼き付いたか、彼女のこれまでの人生の中で、どう育まれたか、僕には知るよしもない。大きな悲しみは、時が経つと薄れる物なのだろうか。少なくとも今の僕には、彼女は悲しみ続けているようにしか見えなかったのだ。流石に既に死んだ母の腹の中で産まれた僕は、親の死など覚えて居やしない。そんな僕が同情するにも苦しさの大きさが違いすぎて、同情しきれない。そしてそんな彼女に付き纏う呪い、それは、涙を流すと体の一部が石化する、そんな呪いだった。はたまた、そんな彼女には、名前などなかった。そんな彼女を僕は、琥珀と名付けた。
作者の気まぐれで左右されるストーリーに、乞うご期待!!
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