大きな過去、小さな未来。
この話はスキップしていただいても、ストーリーには関係ない話になります。
必要かどうかはわからないが、僕について少し話を掘り下げよう。僕には名前がない。これは僕が親の腹の中に居るときに両親が魔女に喰われてしまったからだ。そして、その時に掛けられた呪いの塊が僕、という事になる。何故かその魔女は僕を見逃したのだ。まあ、幼い僕には喰っても美味しいところなどなかったのだが。魔女と一重に言っても色々な種類があり、それらがそれぞれで生きている訳で、性格の差も激しい。我々から見て悪い魔女もいれば、我々から見て良い魔女も居るのだ。それは、光が有れば影が有るような、至極当然の話なのである。そんな中、悪い魔女に偶然出会ってしまい、右を向くか左を向くかのような小さな差で喰われてしまったのが僕の父、敵を討ちに行き討ち返されてしまったのが僕の母だった。そんなこんなで生まれたときから能力も呪いも後遺症のように付いていた半端者の僕には、幼い頃から友達など出来ず、呼ばれた名前は「ピノキオ」だった。その名はあの有名な童話「それ」が由来で有り、僕の足かせとなる呪いは即ち「それ」なのであった。
ドラゴンも妖精もそこらかしこを飛び回っている世界なのだから、本物も何処かを探せば居るのだろうか?そんな問いは僕を見れば刹那の如く、凄まじい早さで解決する。なんせ本物は僕なのだから。形は違えど、僕がピノキオで有ることに変わりはないのだ。そんな僕は実家兼カフェである、山奥のログハウスに住んでいる。カフェの名前は「ピノキオ」。これだけでも十分皮肉だと言うのに、よりによってこのネームが好評なのだ。
そんなこんなで、今は誰にも邪魔されない、一人暮らしという物を満喫している。親代わりをしてくれていた叔父と叔母にはお世話になったと思っている。だが、そんな一人暮らしも密かに終末を向かえようとしているのだった。あれは平凡で、人生の上でただただ通過していくだけの日になるはずだった。あの少女がカフェに訪れるまでは。
設定の穴埋めのような作業を今回はさせていただきました。この辺のエピソードは後でまた固めたいと思っていますので、少年君の過去の鱗片に触れたような気分でお読みください。
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