掛け算
子供なら、誰でもそう思うのかはさておき、僕は偉い人の言う、「君達一人一人を1として、君達が協力すれば、1+1の答は3にも4にもなる」という言葉が小さい頃から嫌いだった。理由は二つに一つだ。
一つ目にして一つ目、その言葉は嘘なのである。この時ほど能力を嫌う時はないが、そうなっているのだから仕方ない。
一つにして二つ目、その言葉を、僕が言うと花が咲いてしまうのだった。それは僕がそう思っていなかった訳ではない。それが世界の理なのだ。正しく言えば、人の能力は掛け算みたいな物だ。1が何人居ても1に変わりはないのだ。それは、同じ所まで辿り付けない者が何人集まろうとそれ以上の進展がないのと同じだ。そのため、1を超える天才が一人いれば、周りの人間も天才に掛けられ1を超え、相乗効果で高まりあっていく。逆を言えば、大人数の足手まといを一人がすることが出来るのも、そういうことなのだ。だが、人によって人への価値は変わる。基本1を下回るような僕でも蓼食う虫も好き好きと言わんばかりに、好いてくれる物好きも居るのだ。その前では僕はその人にとって1以上の存在になることができた。そんなこんなで、僕が彼女の中で1以上であれたかは他として、僕の前では1以上の彼女と出会うのだった。
深い深い山の奥に有る、こんなことしか出来ない僕の経営するカフェに来たのは、白い髪の天使だった。
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