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冒険者になりましょう  作者: はまやらわ
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訓練

「はっ!」


 武器が交差し、鈍い音が鳴る。訓練が始まりどれくらい時間が経ったのだろうか。

 朝起きてみると突然エフィが部屋にやって来て、


 「訓練をするぞ!」


 両手に木で作られた武器を一杯抱え込みそう言い放って来たのだ。何故そんなウキウキとした表情で来たかは謎だが、彼女は訓練をしたくてしょうがなかったのだろう。着替えもままならないまま外に連れ出され森の中へと拉致された。

 

 「てやっ!」


 そして今に至る。彼女の腕は相当上だと思うのだが、こちらの腕に合わせるように攻撃を繰り返してくる。合わせて貰うのは嬉しい事なのだが、正直自分の身体を守る事で手一杯なのだ。


 「そこっ!」


 一瞬の隙を突かれ、彼女の持つ木剣が肩を強打する。叩かれたことによる痺れで、持っていた大斧を落としてしまい、すかさず拾おうとした所で木剣の剣先が首に突きつけられた。


 「・・・参った」


 「戦場では隙を作らないほうがいい。一瞬の隙が命取りになるのだからな」


 「勉強になる」


 「ならよい。しかし、大斧を使うとは思わなかった。その武器はただ単純な重さを乗せ相手を叩き切るという使い方。誰もが好んで使う武器ではないだろう」


 「大斧以外の武器だとどうしても軽すぎてな・・・。この武器が一番しっくりくる」


 「ツバキの腕に合わせてはいたが、大斧で耐え凌ぐは中々だと思うな。成長速度が目に見えてくる」


 「有難う」


 「ならよし!太陽も真上に来てるし、そろそろ腹も空いてきたんじゃないか?」


 「確かに」


 「少し待っていろ」


 エフィは木剣をこちらに渡すと、木製テーブルの上から、麻袋を持って来た。そして中から何が出てくるのか不思議に見ていると、動物の足のような物を取り出してきた。


 「ツバキがまだ寝ている時に狩りに出かけてな、ホーンディアーという魔物を狩ってきた。こいつの足が格別に美味くて、ツバキにも味わって貰おうと思ってな。安心しろちゃんと血抜きは済ませてある」


 そしてエフィは周りに落ちている小枝を掻き集め焚き火を作り始めた。ある程度掻き集めた後、焚き火に手をかざし呟き始める。


 「灯りを灯す<ファイア>」


 すると、焚き火に火が点り始めた。


 「それは?」


 「ん?これか?これは生活魔法の一つ<ファイア>だ。知らないのか?」


 「ああ。何分、旅をして過ごしていたいたので世間には疎い。良かったら教えてはくれないだろうか?」


 「ヒノモト生まれと聞いてある程度知っているものだと思ってはいたが・・・。いいだろう教えてやる」


 焚き火の火も程よく立ち昇り、ホーンディアーの足に麻袋から取り出した細長い鉄棒を突き刺し、焚き火の上でくるくると焼きながら喋り始めた。


 「一般的に皆が使っている魔法は”生活魔法”。先程私が使った<ファイア>もそうだが、身体の汚れを落とすものや、ゴミを集める魔法、土を耕したりする魔法だってある。戦い向きではなく生活に役立つ為の魔法だな。対照的に”戦闘魔法”が存在する」


 「それは誰でも扱えるのか?」


 「いや。”アカデミア”という国の学校という場所で勉強し、卒業しなければ戦闘魔法は扱えない。故に誰彼こぞって使えるものではないらしい」


 「らしい・・・というのは?」


 「私もこの楽園でしか生活してこなかったのでな。ツバキと同じように世間には疎く、詳しくは判らない。実際に行ってみたらどうだ?10歳から20歳の間なら入学出来ると聞いた」


 「頭に入れておく」


 「ん、そろそろ頃合か」

 

 肉が焼き上がり、一番美味しそうな場所を切り取り渡してきた。


 「食べるといい。一番脂が滴る美味い場所だ」


 「有り難く頂こう」


 手を合わせ、頂きますと一人呟き一口齧る。

 美味い。何も調味料が施されていないのにも関わらず噛めば噛むほど旨味が溢れてくる。そこらの店じゃ味わえない味。


 「ふふっ、そうかそうかそんながっつく程美味いか。いやしい奴めこっちも食べて見たくないか?」


 これまた美味そうな場所を切り取り、今度は大きな葉に包んで渡してきた。嗚呼、なんと・・・。


 「・・・」


 「そうドギーの子供のような目で見るな、ちゃんと食わせてやる」


 ドギーがどんな魔物かは知らないが、意味合い的には子犬のような目で見るな、ということだろう。見てみたいものだ。

 大きな葉で包んだ肉を一口噛むとこれまた美味い。この葉がレモンのような役割を果たし、しつこい味からさっぱりとした味へと変貌したのである。幸せ。


 「食べ終わったら、次はお手伝いをして貰う。たくさん食べて力を付けるといい」


 エフィが何か言ったようだが、肉を食べるのに夢中でよく聞こえなかった。

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