前途多難
気がつくと辺りは森の中だった。
ブラックウォルフを40葬りさった後から数を数えるのをやめ、意識を手放していた。
そして今の状況に至る。黒色のローブはあちこちが破れ、兵士から剥ぎ取った鎧は既になく、着込んでいた服もボロボロとなっている。神様から貰った袋は血で真っ赤に染まってしまった、身体から異臭がしており今すぐにでも洗い流したい。
立ち上がり数メートル先の川を目指す。
川に辿り着き、服を脱ぐ。川に足を入れてみると銭湯にある水風呂並みの温度だった。冷たい。だがここで贅沢を言ってはいけない。一刻も早く身体中に付いた血や、頭にこびりついている血肉を洗い流さなくては。
腰まで川に浸かり、下半身から汚れを洗い落とす。終わったら、上半身を洗い頭を川に突っ込む。朦朧とした意識が一気に覚めていく、気持ち良い。
汚れも落ち顔を上げると目の前に人…?が大勢こちらに弓を向けている。この流れは…
「動くな!両手を上に挙げろ!」
本当、行き当たりばったりな展開だ。
胸に矢が刺さり、またもや意識を手放したのであった。
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「ミーシェ!何故矢を放った!?」
「ひっ…。だって全裸で川に浸かってて、いかにも怪しい人ですよ、って感じの人なんでつい…」
「馬鹿者!川に全裸で入らないやつなどおるか!私がもし川に全裸で入っていたらミーシェは矢を放つのか!?」
「いえ!そのようなこと!…でもこの人、男ですよ?私達には今必要のない存在ですし…この際いいんじゃないんですか…?それに矢に仕込んでたのは”痺れ薬”が塗ってあった物でしたので、別に死にはしないですよぉ…」
「開き直りおって!いいかこの者を村まで運ぶ!治療し、なにも怪しいところが無ければ外に放り出す!それで良いな?」
「は、はい…」
全くこれだから新人は困る…。無闇やたらと怪しい者を殺めようとするのは良くない事だ。事情を聞きなにも無ければ森の外に放り出せばいいものを…。怪しい者であったら即仕留めるがな。それにしてもこの男は何故このような場所で水浴びをしていたのだろうか。傍に置かれている服や袋は血の色で染まっている。何かから逃げてきた可能性もあるが、胸に刺さる矢以外見当たる傷跡は無い。何者なのだ…?むむむ。
川から男を引き上げる。がっちりとした肉体と逸物に周りの者と私はどきりとするが、そんなことは村に帰ってからいくらでも確認出来るのだ、後だ後。二人係で男を運ばせ、荷物をミーシェに運ばせる。異臭と血付きの荷物を運ぶミーシェは嫌そうな顔をしているが、これも一種の罰なのだ反省してもらおう。
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目が覚めると見知らぬ木で出来た天井。
矢を放たれ川の中で意識を失ったがどうやら無事のようだ。胸に軟膏のような塗り薬が塗られてる。傍には本を読んでいる女性。耳が長く、長い金髪を頭の後ろで束ねている。寝たままの姿勢でもわかるぐらいの胸の大きさ。一体この女性は?
「ん?目が覚めたようだな。身体の具合はどうだ?」
「平気だ…」
「良かった、死なれてしまっては聞く事も聞けなかったのだからな。貴様が何者でどこから来たかちゃんと答えて貰うぞ、いいな?」
「勿論」
「よし、ようこそ私達の村”クオル”へ。女の楽園だ、ふしだらな行為は許さん。元より勝手に行動はさせんがな」
今度は女の楽園に来てしまったようだ。