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ENDER  作者: 147
8/10

リルはミラの肩を支え、井戸の縁から引き起こした。

少女の身体は軽く、骨が浮き出たような細さだった。

触れた部分から、霧のような薄れが広がり始めている。

色が失われ、輪郭がわずかにぼやける。

呪いの進行は静かだが、確実だ。

リルはミラを井戸の陰に座らせ、すぐに手を離した。

「…動くな」

声は低く、抑えたものだった。

ミラは頷き、息を整える。

灰色の瞳が、リルの顔をじっと見つめる。

「…リル…さん…」

名前を呼ぶ声に、リルは視線を逸らした。

繋がりが、深まっている。

集落の灯りが、遠くで揺れている。

夕食の時間か、人影が家々の間を動き始めている。

焚き火の煙が、夜風に混じって強くなる。

リルは耳を澄ました。

足音はない。

声もない。

ただ、静かな日常の気配だけ。

しかし、胸の脈動が、再び速さを増した。

今度は、集落の奥から。

何かが、近づいている。

ミラが、かすかに身を震わせた。

「…寒い…」

リルはぼろ布の端をミラにかけ、集落の方向を観察した。

中央の広場に、火が灯されている。

数人の村人が集まり、低い声で話している。

言葉は聞き取れないが、緊張を含んでいる。

一人の男が、広場から外縁へ向かって歩き出す。

手に、松明のようなものを握っている。

光が揺れ、影を長く伸ばす。

リルの胸の熱が、増した。

それは、断片の共鳴だ。

男は、エンダー。

あるいは、断片に近づいた者。

いずれにせよ、追手だ。

男の影は、井戸の方向へ近づいている。

村人たちが、後ろからついてくる。

武器らしいものは持っていないが、表情は警戒に満ちている。

「…見つけたか?」

遠くから、声が届く。

「…脈が強い。ここだ」

リルはミラを引き起こし、井戸の反対側へ移動した。

集落を巻き込む。

村人たちは、予言を知っているのかもしれない。

エンダーを恐れ、鍵を求める。

あるいは、呪いを避けるために、排除しようとしている。

リルは歯を食いしばった。

胸の鼓動が、戦いを促す。

再生の力が、目覚めようとしている。

だが、まだ、終わらせたくない。

男の影が、井戸の近くに到達した。

松明の光が、水面を照らす。

男は周囲を見回し、声を上げた。

「…出てこい、エンダー!」

村人たちが、ざわめく。

「呪いを…終わらせてくれ!」

一人が叫ぶ。

それは、絶望の叫びだった。

集落は、呪いの影に怯えている。

断片の影響か、病が広がっているのかもしれない。

ミラが、リルの袖を掴んだ。

「…逃げて…」

弱い声。

リルはミラを抱え、集落の外縁へ後退した。

灌木の陰を伝い、丘の斜面へ。

松明の光が、遠くで揺れる。

男の声が、追いかけてくる。

「…鍵はどこだ!」

胸の脈動が、最大限に速くなった。

影は、集落を巻き込み、広がり始めていた。

リルはミラを背負い、夜の荒野へ足を踏み入れた。

逃亡の始まり。

だが、追手の影は、決して消えない。

世界は、静かに、二人の終わりを加速させていた。

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