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ENDER  作者: 147
3/10

灰色の空の下、リルは石碑の陰から身を起こした。

夜の冷えがまだ骨に残る中、彼女はぼろ布の裾を払い、埃を落とした。

動作は機械的で、無駄がない。

周囲に人の気配がないことを確認し、ゆっくりと歩き出した。

枯れた川床が、かつての街道に沿って広がっている。

ひび割れた土に、白い骨片が点々と残る。

リルは川床に降り、足元を確かめながら進んだ。

靴底が土を踏む音は、乾いた紙を破るように小さく響く。

喉が渇いていた。

水筒の底に残ったわずかな水を一口含み、飲み下す。

味は土と鉄の混じった、かすかな渋み。

彼女は水筒を腰に吊るし直し、視線を前方へ移した。

胸の脈動が、昨夜よりわずかに速い。

それは単なる鼓動ではなく、何かを予感させるものに変わりつつあった。

リルは無意識に左手を胸に当て、布越しに熱を感じた。

神の心臓の欠片は、静かに、しかし確実に反応している。

川床の中央で立ち止まり、空を見上げる。

雲は低く垂れ込み、風が枯れ草をざわめかせる。

その音の中に、遠くから微かな煙の匂いが混じっていた。

昨日より濃い。

集落か、焚き火か。

リルは鼻を軽く動かし、風の向きを確かめた。

東から来ている。

腹が減っていた。

腰の袋から干し果実を一つ取り出し、口に含む。

甘さは薄く、酸味と渋みが舌に残る。

咀嚼しながら、彼女は目を閉じた。

自分の息遣い、咀嚼の音、胸の鼓動。

それ以外に、何も聞こえない

はずだった。

突然、胸の脈動が強く跳ねた。

リルは息を詰め、手を胸に押し当てた。

鼓動は不規則に速くなり、熱を帯びている。

これは、断片が反応している証拠だ。

誰かが、近づいている。

あるいは、何かが。

視線を上げると、川床の対岸、丘の稜線に影が動いた。

一瞬だけ。

人影か、獣か、それとも風に揺れる枯れ木か。

距離があり、はっきりしない。

だが、胸の熱は嘘をつかない。

リルは身を低くし、川床の窪みに隠れた。

心臓の鼓動がさらに速くなる。

再生の力が、勝手に目覚めようとしている。

彼女はそれを抑え、深く息を吐いた。

吐息は白く霧のように広がり、草の先を薄く覆った。

影は動かなくなった。

ただ、丘の上に留まっている。

リルは歯を食いしばり、選択を迫られた。

このまま進むか、迂回するか、それとも

胸の脈動は、静かに、しかし確実に、速さを増していた。

世界は、もう静かに待ってくれないのかもしれない。

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