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ENDER  作者: 147
2/10

神々は、かつて世界を掌に収めていた。

彼らは空を裂き、海を割り、大地に命を吹き込んだ。

その創造の最期は、誰も目撃していない。

ただ、灰色の空の下に、無数の欠片が降り注いだという。

人々が後に「終焉の断片」と呼ぶようになった残骸だけが、静かに地上に根を下ろした。

それから数百年。

文明は崩れ、都市は風化した石の墓標となり、森は枯れた枝を伸ばして空を覆う。

人々は小さな集落に寄り集まり、火を囲んで古い話を囁き合う。

「断片に触れた者は、エンダーになる」

「エンダーは、触れたものを終わらせる」

「終わらせたくないなら、誰も愛してはならない」

噂は、事実よりも速く広がる。

そして事実よりも、残酷に人々を縛る。

荒野の東端、かつて街道だったはずの崩れた石畳の上を、一人の女が歩いていた。

リル。

長い黒髪は埃にまみれ、灰色の瞳は常に遠くを見据えている。

厚手のフード付きのぼろ布が、彼女の身体を覆い隠していた。

肌を晒さないのは、習慣ではなく、掟だった。

胸の奥で、何かが脈打つ。

それは、神の心臓の欠片。

致命傷を受けても、数時間で肉体を繋ぎ止める再生の力。

だが、その鼓動は、決して優しいものではない。

近づく者を、ゆっくりと、確実に、霧のように溶かしていく。

リルは立ち止まり、風に混じる微かな焦げ臭さを嗅いだ。

遠くの丘に、黒い煙が細く立ち上っている。

村か、集落か。

いずれにせよ、火を焚く人間がいるということだ。

彼女は視線を逸らし、道を外れて枯れた草むらへ足を踏み入れた。

人間の近くに留まることは、呪いを広げる行為に等しい。

日が傾く頃、リルは古い石碑の陰に腰を下ろした。

碑文は風化して判読不能だったが、かつては神の名を刻んでいたのだろう。

彼女は膝を抱え、目を閉じた。

眠るわけではない。ただ、時間をやり過ごす。

感情を抑え、記憶を薄め、存在を希薄にする。

それが、彼女の日常だった。

胸の脈動が、少しだけ速くなる。

それは、警告でもあり、誘いでもあった。

「誰かを、終わらせろ」と。

リルは唇を噛み、息を吐いた。

吐息は白く、霧のように周囲に広がり、草の先をわずかに白く染めた。

遠くで、狼の遠吠えが響く。

それは、生き物の声だった。

リルはそれを聞きながら、思う。

生きているものは、いつか必ず終わる。

自分が触れなければ、少なくとも今は、まだ終わらない。

だが、世界は静かすぎた。

断片が散らばった大地は、まるで息を潜め、次のエンダーを待っているかのようだった。

他の継承者たちは、どこかで動いている。

心臓を宿した者、目を宿した者、血を宿した者。

彼らは、呪いを武器に、あるいは鎖にされながら、己の終わりを探している。

リルは立ち上がり、再び歩き出した。

足音は乾いた土に吸い込まれ、すぐに消える。

彼女の影は、長く伸びて、霧の中に溶けていく。

まだ、何も始まっていない。

だが、胸の脈動は、確実に速くなっていた。

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