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ENDER  作者: 147
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リルはミラを背後に庇うように立ち、荒野の風に長い黒髪をなびかせた。

松明の列は、すでに百歩以内に迫っていた。

火の揺らめきが夜の闇を赤く切り裂き、影を長く歪ませる。

先頭の男のシルエットが、徐々に鮮明になっていく。

傷だらけの頬、狂気を宿した深い眼窩、唇の端に浮かぶ薄い笑み。

神の断片保有者ヴォルン

彼の手に握られた杖の先端で、神の断片が鈍く輝いている。

それは、脳の欠片か、あるいは目の欠片か。

いずれにせよ、真実を見抜く力を持つものだ。

ヴォルンの後ろに続く村人たちは、十数人。

鍬や棒、粗末な槍を握った手が震えている。

彼らの目は、恐怖と渇望が混じり合った、病んだ光を帯びていた。

「鍵を守るエンダーを殺せ!」

「呪いを終わらせろ!」

叫び声は風に散らばりながらも、荒野全体に響き渡る。

リルは静かに息を吐いた。

白い霧が口元から広がり、足元の枯れ草を薄く覆う。

霧はすでに、呪いの最初の兆候。

近づく者がいれば、すぐに色が失われ、記憶が薄れていく。

ミラの細い手が、リルの背中を掴んだ。

「…リルさん…」

少女の声は、弱く震えていた。

「逃げて…私を置いて…」

リルは振り返らず、低く答えた。

「…黙っていろ」

言葉は冷たく聞こえるが、声の端に微かな揺らぎがあった。

ミラを置いて逃げることは、簡単だ。

しかし、それは少女を終わらせることと同じ。

触れてしまった瞬間から、呪いは連鎖し始めている。

少女の肌はすでに透け、輪郭がぼやけ始めている。

髪の白さが、夜の闇に溶け込みそうだった。

ヴォルンが、一歩前へ出た。

杖を地面に突き立て、ゆっくりと口を開く。

「ようやくだな、エンダー。心臓の継承者として、お前の断片を奪う。それを強化して、神の意志を完遂する。」

声は低く、荒々しい。

リルは左手を胸に当てた。

神の心臓の欠片が、激しく脈打っている。

熱が全身を巡り、再生の力が皮膚の下で蠢く。

ヴォルンは小さい声で囁いた。

「鍵の少女を殺せば、呪いの連鎖が広がり、新たな断片が生まれる。それをお前の心臓と統合すれば、俺は不死に近づく。」

リルは静かに言った。

「…近づくな。近づけば…お前たちを、終わらせる。」

ヴォルンは、笑った。

低い、乾いた笑い声。

「井戸の近くで、お前は気配を感じたよ。だがな鍵の少女の痕跡を先に追った。村の者が、少女の家を教えてくれたからな。空だったが偶然にもお前と一緒にいる。」

リルは目を細めた。

それが、井戸で離れた理由か。

断片の共鳴を感じながらも、ミラの存在を優先し、集落の別の場所を探していた。

ヴォルンは、予言の鍵を殺すことで新たな断片を生み、それを自らの心臓断片に統合して強化するつもりだ。

それは、神の意志を歪めた、貪欲な野心。

村人たちは、ヴォルンの言葉に操られ、絶望にすがっているだけ。

村人たちが、ざわめいた。

一人が前に出る。

年老いた男で、鍬を握った手が震えている。

「お前がエンダーなら、呪いを終わらせてくれ! 村の者が次々と…霧のように消えていくんだ! 鍵の少女を渡せ! 予言通りなら、呪いが終わるはずだ!」

リルは、静かに答えた。

「…渡さない。少女は…私が守る。」

その言葉に、ミラの指が、リルの背中を強く掴んだ。

少女の息が、わずかに乱れる。

「…リルさん…」

声は小さく、しかしはっきりしていた。

「…怖い…でも…。」

ヴォルンが、笑みを深めた。

「守る、か。愛せば終わる。守れば終わる。神の最後の言葉を、忘れたか?」

彼は杖を掲げ、断片の輝きを強めた。

「俺は、もう終わらせたくないものを終わらせてきた。家族も、仲間も、すべて。今度は、お前だ。」

松明の火が、一斉に近づく。

村人たちの足音が、土を踏み鳴らす。

リルは深く息を吸った。

胸の熱が、頂点に達する。

再生の力が、暴走寸前。

彼女はミラを背後に押しやり、両手を広げた。

「…来るなら、来い。だが、覚えておけ。私が終わらせたら…お前たちは、二度と始まらない。」

霧が広がり、荒野を覆い始めた。

白く、冷たく、静かに。

追手たちは、一瞬、足を止めた。

ヴォルンの目が、わずかに揺らぐ。

しかし、彼は笑みを深めた。

「…いいだろう。神の意志に従え。」

火の輪郭が、ゆっくりとリルを包み込むように近づいてくる。

リルは目を閉じ、胸の鼓動に耳を澄ました。

それは、神の最後の意志。

終わりを求める、リズム。

しかし、今は、まだ。

少女を守るために、彼女は立ち続ける。

世界は、静かに、二人の終わりを目前にしていた。

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