3通目 試合に臨むあなたへ 前編
シューズが床と擦れる音と掛け合う声が響く体育館。明日行われる全国大会出場を賭けた試合を前に詰めの練習が行われていた。
私はこのバレーボール部のマネージャーをしている。
目の前では緊張と熱気が綯い交ぜになった練習が行われていた。
ピーっと笛が鳴りコーチの声が響く。
「今日の練習はここまで! 明日に備えてしっかり休め!」
「「はい!」」
各々、クールダウンのストレッチをしてから片付けに入る。床のモップ掛けをしたり、ネットを取り外しをしている。
ほぼ片付けが終わった頃、私は先輩に駆け寄った。手には必勝祈願のお守りと手紙を忍ばせたポーチをしっかりと握りしめていた。
「明日の試合頑張ってください。応援してます。」
用具棚に向かっている先輩に背中から声をかけた。不意打ち気味に声をかけられた先輩は少し驚いた様子で振り返る。
少し慌てた様子の先輩にお守りと手紙を渡し、頭を下げることしか出来ない私はその場から早足で立ち去った。
自分が床を蹴る音以上に心臓の音が耳の中で響いているようだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
少し薄暗い用具倉庫の中、手には渡されたばかりのお守りと封筒。あとはマネージャーが残した洗濯洗剤の爽やかな香りが残っていた。
必勝と書かれたお守りと淡いピンクの封筒をなぜだか慌ててポケットにしまい部室に戻った。
誰にも見られないようにロッカーのカバンに大事にしまって着替えを済ませる。
急いで着替えたあと、部の仲間に声をかけて自転車を走らせ帰宅する。玄関の扉を開けた時、自分の息がいつも以上に切れているのに気が付いた。
キッチンで台所仕事をしている母にただいまと言って、早々に自室に入るため階段を駆け登る。その音がやはりいつもより早いように思えた。
少し強張る手でゆっくり手紙を出すと、そこには彼女の可愛らしくも力強い文字があった。




