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2通目 ちょっとおねえさんなあなたへ 後編

 片手には結露した冷たい缶ビール、もう片手には封筒があった。


 弟のように思っていた隣に住む男の子から渡されたそれらを持って、私はベランダでほんの少し立ち呆けていた。


 これまでずっと私の後ろをついてくる幼い弟のような印象の男の子だったのに、さっき見た彼の真剣な眼差しは私の中にある彼とは別人のようだった。

 その表情に、私を追いかけてくる男の子ではなく、1人の男性を感じて胸がドキリとした。


 まだ暑い夏のベランダから自分の部屋に戻る。エアコンの効いた室内で汗は引いたが頭はまだ暑い気がしている。


 もらった缶ビールはデスクに置き、封筒をゆっくり開けていく。中には彼の文字で書かれた手紙が入っていた。


 一行一行、気持ちを落ち着かせながら読んでいく。


 手紙を読み終えると缶ビールについた水滴がデスクの上に小さな水たまりを作っていた。


 彼の手紙を読み、自分の中にあった自分でも気付いていなかった感情が溢れてきていた。


 彼の気持ちに応えたい。それだけを考えるようになった。そう思っていたのだが返事が出来ず2日経った。


 直接お家にお邪魔するのも変な感じだし、電話やSNS使うのも違うしと思って時間だけが過ぎてしまった。仕事を終えて帰宅し、先日と同じようにベランダへ出ると、隣のベランダにはすでに彼の姿があった。


「やあ、こんばんは…… ははは……」


 なんて気の抜けた挨拶なのだろうと自分で思い、コホンと1つ咳払いをしておねえさんな感じを作り出す。


「ねえ、手紙に書いてあったことって本当なの? 内定出たってやつ」

「本当だよ。何なら通知書見る? 春から同じ会社だよ」

「そうなんだ。おめでとう」


 そこまで言って、言い淀んでしまった。


「同じ会社なの嫌だった?」


 嫌な事なんて1つもない。彼が目指していた仕事は昔から知っていたし、彼が目指していたからこそ私もこの業界に興味を持てた。今の仕事をしているきっかけは彼だ。


「嫌なわけないよ。春からは私がビシビシ鍛えてあげるわ」


 それを聞いた彼が少し笑ったように見えた。


 あっという間に季節は巡って春になった。


 通勤電車におろしたてのビジネススーツを纏った新入社員らしい人達を見かけるようになった。うちの会社も先日、新入社員が入ったはずだ。

 

 会社の会議室の前を通るとその新入社員達がキチンと座って研修を受けているのが見えた。


 その中に見知った顔を見つけた。彼には私からもちゃんと社会人としての教育をしてあげるんだ。


 早く隣に並んでもらわなくちゃ。

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