1通目 ずっと隣にいる君へ 後編
彼と一緒に出かけた帰り道。バスに乗り込む直前に封筒を渡された。
「あの、これ後で読んで欲しい」
それだけ言って渡された封筒は飾り気は無いがしっかりしていて高級感のあるものだ。
バスに乗り込み後ろの方の席に座る。混み合ってないバスの中、窓の外を見たり手元の封筒を見たりしてしまう。
何度か封を開けて中を確認しようと思ったが、落ち着かないのでそのままにした。
家に着きリビングにいる両親へただ一言「ただいま」と言うと2階の自室にすぐ入った。着ていたコートをハンガーに掛けると机に向かい貰った封筒をカバンから出した。
閉じている封筒を丁寧に開き中の手紙を取り出した。そこには彼の手書きの文字が並んでいた。
よく見せてもらっている彼のノートに書いてある文字とは違い、間違えないように丁寧に書いたと思える整った文字がそこにあった。
内容は彼が私のことを好きな事。恋人になってほしい事。返事を聞かせてほしい事が書いてあった。
読めば読むほど顔が熱くなる。彼が手紙を渡した後、顔を真っ赤にして走り去っていったのが思い出される。
私も彼のことが好き…… もっと一緒にいたい。そう思えた。
でも、この気持ちをどう伝えよう。
悩んでいると1階から母がご飯の時間だと呼んでいる声がした。急いで着替えて食卓へついた。
「あら? なんだか今日はいつもより静かね。何かあった?」
「何にもないよ」
母に一言返すのがやっとだった。その様子を見た母が続ける。
「好きな人に告白でもされたかしら?」
「えっ? 告白?」
「ちょっとお母さん!」
狼狽している父の隣で母はクスクスと笑っている。
「彼氏さんに会えるのが楽しみね」
何も言い返せず味のしないご飯を平らげ部屋に戻る。静まらない鼓動を感じて夜を過ごした。
翌朝、いつもより早く登校して自分の席につく。彼がおはようと入ってきて声を掛けてきた。
「おはよう。今日も買い物に行きたいから付き合って」
それだけ言って朝は終わった。
放課後、朝の約束通り買い物に出かけた。ただ、何を買ったのか覚えていない。カバンにある何かの重さだけが感じられている。
いつものように駅前のファミレスに入り席につく。いつものようにテーブルにあるコーラとカフェオレ。でも、お互い口をつけていない。意を決した彼が言う。
「昨日はすまない。急にあんな手紙を渡して。読んでくれたんだよな?」
私は深く頷き、声をだした。
「私も好き……」
そう言ったつもりだった。しかし、あんまりの緊張でほとんど声が出ていなかった。不安そうに見ている彼の前でカフェオレをぐいっと飲み干し改めて声を出した。
「私も好き!」
今度は店内に響き渡るような大きい声が出てしまった。余りの声の大きさにびっくりした表情の彼。その顔があまりにも面白くてつい吹き出してしまった。
つられて笑う彼。緊張が解れたからか私の笑いも止まらない。2人の笑い声がテーブルに溢れていた。
「これからよろしくお願いします」
いつも言わない彼の丁寧な言い回しに私も同じように応える。
「私こそよろしくお願いします」
この先も楽しい時間が続きそうです。




