6通目 気付いてくれないあなたへ 後編
【※ホラー演出あり。苦手な方はご注意くださいませ】
22時過ぎ、コンビニのバイトが終わり帰宅した。ポストの中から取り出した花柄の封筒。宛名だけが書かれた消印の無い封筒に入っていた手紙を読んだ。
……誰が? 誰がこんな手紙をポストに入れたんだ?
このところ、自分の部屋に違和感があった。
テレビ画面が不自然なまでホコリの一つも無く綺麗だったり、冷蔵庫の中の配置が少し変わって量も減っている気がしたりもした。
部屋のカーテンやクローゼットの中に甘い香水の香りが微かに漂っているようにも思えた。
それに加えてこの手紙。
頭の中にあった形の定まらない不快感が一気にまとまった感じがした。
誰かが見ている。誰かが近くにいる。誰かが…… 誰か、が……
ピンポーン
インターホンのチャイムが静かな空間に鳴り響いた。暑くもないのにヌルっとした汗が全身を覆う。
ピンポーン
再度、脳を貫くような音が鳴る。
恐る恐るドアに近づきレンズを覗く。そこにはスマホ片手にダラケた表情で立っている大学の友人がいた。
見知った顔に安堵してドアを開けた。
ガチャン!
ロックのチェーンが騒々しい音を立ててドアを開かないようにしている。
「ああ、悪い。ロックしたまま開けちゃったよ。ちょっと待ってな」
「何やってんだよ。うっかりだな」
冗談ぽく笑いながらロックを外しドアを開ける。
「よう、暇か? 暇ならどっか遊びに……」
言いかけた友人が途中で一度止まり、視線は部屋の奥に固定されている。友人は間を挟んでさらに続ける。
「なんだ、彼女と一緒だったのか。邪魔したな。またな!」
そう言って立ち去ってしまった。
『ちょっと待って』そう言おうと思ったが声が出なかった。
彼女だと? 帰ってきたばかりで誰もいないし、そもそも俺は独り身だ。
バタンとドアが閉まって薄暗くなる玄関。ゆっくりと振り返りドアを背にし自分の部屋を初めて見るもののように視線を這わせる。
一歩、また一歩とリビングに近づき中を覗くと封筒の花柄と同じ模様のワンピースを着た女が一人立っていた。
「会いに来ちゃった♡」
部屋には朝日が差し込んでいる。オレンジの日差しが照らし眩しさと暖かさを運んでくる。
その部屋の中で点きっぱなしのテレビがニュース番組を流していた。
もう誰も見ることが無いテレビはストーカー事件について報じていた。




