4通目 連れ添ってくれる君へ 中編
夫からの手紙を読んで心がとても温かくなった。それと同時にこんな事をするなんてズルいと思った。
普段は特別な事なんて何もしないのに、こんな時にだけ私に手紙なんて本当にズルい。
でも、とても嬉しい。
幸せな気持ちで心が満ちていた。その気持ちを持って家事をする。
買い物に出たついでに本屋に立ち寄った。彼の手紙にあった旅行を計画するためガイドブックを買って帰った。
彼の帰宅時間が近づくにつれて少しそわそわし気持ちがざわつく。どんな顔をして、何て声をかけて出迎えてあげたらいいのか少し悩んだ。
考えていると玄関のドアの鍵がカチャっと鳴った。すぐ後、ドアの開く音もして革靴のかかとの音と共に優しい声が聞こえてきた。
「ただいま」
リビングのドアが開き、花束を抱えた夫が入って来た。
「おかえりなさい。お疲れ様でした」
いつもより少し晴れやかな表情をしているように見えた彼から花束を受け取る。またこんな事して本当にズルい。
花瓶に活けた色鮮やかな花束から甘い香りが部屋の中に広がっていた。
「それから、これも買ってきたんだ」
そう言ってカバンから出した紙袋から私が買ったものと同じ旅行のガイドブックを見せてきた。私からも横に置いておいた本を見せ2人で笑い合った。
その日の夜は予約しておいたレストランへ出かけた。家族の節目毎に訪れるお気に入りのレストラン。いい思い出をたくさん積み重ねてきた場所だ。
食事も終わってコーヒーをいただきながら隣り合わせになって旅行のガイドブックをみている。
コーヒーの香りに包まれながら、一歩遠くへ行く旅の計画を立てる。
肩を寄せ合い、同じ本を眺めるこの時間は、何物にも代えがたい幸福だった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
それから数ヶ月後。
僕たちは今、レストランで決めた少し遠い温泉地まで足を延ばしている。
夕食までの穏やかなひととき。
妻は窓際のソファに深く腰掛け休んでいる。いつもの旅行より遠かったからか、暖かな日差しに当たりながらウトウトと微睡んでいた。
僕は仲居さんからオススメされたお風呂をいただこうかと着替えを取り出すためにカバンを開けた。
そこで目についたのは、淡い藤色の綺麗な封筒。僕の好きな色の上品な装飾の封筒を手に取った。
中を確認すると手紙が入っていた。妻の見慣れた字で書かれた手紙。
彼女の方をチラリと見るが目を閉じ寝てしまったようだ。起こさないよう静かに彼女からの手紙を読んでみる。




