4通目 連れ添ってくれる君へ 前編
暖かい朝日が差し込むダイニング。特に代わり映えない朝食を並べている。
夫の好みに合わせて焼いたトースト。少しだけこだわったバター。レタスとトマトのサラダが入った小鉢。ほのかに湯気が立ち上るコーヒー。
それらを並べ終わった頃、タイミングを見計らっていたかのようにおはようと言って夫が入ってくる。
おはようと返して席につき、二人同時に手を合わせ食事を始めた。
何気ない穏やかな朝。でも、いつもと違う朝。
今日は彼が長年勤めた会社を定年退職する。
子どもがいた頃は騒がしかった食卓も二人だととても穏やか。一言二言を交わす程度の優しい時間。
食事の後、出勤の準備を始める彼と食器を片付ける私。これもいつもと変わらない。
白いワイシャツにスーツ、首筋に見えるのはたまにしか身に着けない彼のお気に入りのネクタイ。最後の日だから少し気を入れたのかしら。
見慣れたスーツ姿は今でも素敵ね。なんて口に出す事はしないけど、準備の整った彼のネクタイの向きを確認してあげた。
玄関に向かう彼の背を追い靴を履く背中に声をかける。
「いってらっしゃい」
「あぁ…… いってくるよ」
そう言って顔を近づける。子どもがいた間、頬と頬を合わせるのが私たち夫婦の挨拶になっていた。それが今も続いている。
しっかりとした足取りで出ていく彼を見送り部屋に戻る。
ふとダイニングテーブルを見ると片付けたテーブルの上に見慣れない封筒が一通あった。
ワンポイントだけクローバーで飾られたデザイン。少し丸くて可愛らしい夫の文字で私への宛名が書いてあった。
「何かしら……」
不思議に思い封を開けた。




