1通目 ずっと隣にいる君へ 前編
高校生になってそろそろ1年が経つ。中学からの友達も少ない学校に来てしまったので最初は少し心細かった。
でも、担任の先生は穏やかな人だしクラスメイトもみんな気さくですぐに打ち解けられた。クラス行事も協力して行えて、その中で仲の良い友人も出来た。
学校にいる時はその友人たちといつも一緒にいて、たまにバカなことやったり真面目に勉強したりと楽しい時間を過ごしていた。
そいつ等とは学校以外でも一緒にいるようになった。帰り道にゲームセンターやカラオケ行ったり、休日に遊園地や海で遊んだりもした。
そのメンバーの中に特に気の合う友人がいる。異性ではあるが、趣味や好きな事に共通点が多くて話していていつも楽しい。
あの配信者のあの動画が面白いとか、あの歌手のあの曲がいいとか、特別な話じゃなくてもずっと笑顔でいられる。
そんな彼女とも休日に出かけるようになった。洋服の買い物やテスト前の図書館での勉強会などだ。
一緒に出かけた最後はいつも決まって駅前のファミレスに寄る。彼女が乗るバスの時間に合わせるようにドリンクバーとフライドポテトを注文するのがお決まりのパターン。
今日も俺はいつものようにコーラとフライドポテト。彼女はアイスカフェオレ。
バスが来る時間までのささやかな短いけど大事な時間。いつからかこの時間がもっと長く続けばいいのにと願うようになった。
でも、友人として一緒にいてくれる彼女は俺の事をどう思っているのか?
こんなふうに思っているのは自分だけだったりしないだろうか?
そう思うと一歩踏み込む勇気がなかった。
このままで良いと思う気持ちとは裏腹に、視線は彼女ばかりを追うようになった。
俺の気持ちを打ち明けたい!
この気持ちばかりが先行するようになった。次に出かけるときに気持ちを打ち明けよう。そう思って手紙を書く事にした。
自室の机に用意したレターセットを広げる。家族が寝静まり、自分の心臓の音しかしていないような錯覚の中で一文字一文字丁寧に、紙にインクをなぞらせる。俺の気持ちが少しでも彼女に多く伝わるように書いていく。
書き終わった時、まだ寒い時期だというのに額には薄っすら汗をかいているように感じた。
便箋を三つ折りにして封筒に入れる。折れて汚れてしまわないよう慎重にカバンに忍ばせた。
翌朝、普段と変わらない彼女が話しかけてきた。どうやら買い物に行きたいらしい。俺も欲しいものが有ったと話を合わせて帰り道に出かけることになった。
あっという間に放課後になり、そしてさっきは一緒に買い物をしていた。ただ、俺は何をするにも頭が告白でいっぱい。今、どこをどう歩いてきてここにいるのかも分からない。もう既に彼女が乗るバスを待つロータリーにいるのだ。
告白するんだろ!
心の中の俺がそう叫んでいる。でも、俺の口から告白の言葉は出てこない。するとロータリーに彼女が乗ってしまうバスが入ってきた。慌ててカバンから手紙を取り出す。
「あの、これ後で読んで欲しい」
それだけ言って半ば強引に彼女の手に手紙を残して走ってきてしまった。走ったせいじゃない熱を全身に感じる。
あの手紙を彼女は読んでくれるだろうか?
どんな返事をくれるだろうか?
俺は自分の部屋に帰り、ベッドの枕に顔を埋めてジタバタした。




