表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面のロックンローラー  作者: 黄色ミミズク
君がやりたい事を応援したい。それが俺のやりたいロック!(下)
87/114

87・推し活1

 ~~


 画面の向こうで勉強に集中しているマイナくんを見守る。

 最近は私も忙しくなってしまっていて、この時間はすごく貴重になっている気がする。

 いや……少なくともマイナくんの方がずっともっと忙しいんだろうなって思うと、大切にしたい気持ちが少し溢れそう。


 今、私は鷹田くんと近藤さんに頼まれて、Webページを作ってみている。

 簡単に作れるサイトを紹介する手もあったけど、自分のスキルの挑戦としてやっている。

 頭の中で描いたものを形にするのはやっぱり大変だなって何度も痛感する。


 少し前の私では、思いもよらなかった事ばっかりで。

 今の私はたぶん、とっても幸せだって思ってる。


 まだまだ私は役に立てるかな。

 いや、マイナくんは推しだから……

 厄介ファンにはなりたくない。でも、もっと一緒にいたいよー……


 その為にも色々な事に対して張り切ってしまって仕方ない。

 マイナくんにもわかりやすいように伝えるにはどうしたらいいか?

 マイナくんの為になるのは何か? やりたい事の目的ってなんだろう?

 ああ! もう、こんなに考えてるなんて知られたらヤバイ子確定だよー!!


 推しなの推しなの違うの好きだけども推しなのファンなの……


「で、できたー……波多野さん見てもらっても良い?」

「あっ、うん。もちろん」


 冷静を装いながらマイナくんの回答を見ていく……

 勉強を始めて2ヶ月。最初はボロボロだったけども何とか中3の数学まで到達した。


「うん……合格だね」

「やったー!」


 やりたい事の為にマイナくんはすごいがんばってる。

 それを間近で見てるからこそ、私もすごく嬉しくなる。


「ライブも上手くいくといいなぁ。その後は期末試験だし、コンクールも始まるし……がんばらなくっちゃ!」

「ふふ、応援してるよ。無理して身体を壊さないように気を付けてね」

「おう! みんなのおかげで色々何とかなりそうで……本当に感謝しきれない!」

「ライブは来週の週末だっけ……」


 行きたいなぁって思うけども、行っていいのか悩んで仕方ない。


「来てくれたら嬉しいけども、無理はしないでね!」

「うん……近藤さんや月野さん、渋谷さんにも声をかけてみようかなぁ」


 友達と一緒に行けば怖くないかもしれない……?

 でも、女子だけで行っていいのかなぁ……


「あっ! そうだ!!」

 マイナくんが何かを思いついて声をあげる。


「今度、よかったら一緒に出掛けるのどうかなぁって思ってて」

「えっ……えっ!?」

「勉強をずっと教えてもらってるお礼をしたくって……期末試験が終わってからなら、時間ができると思っててさ」

「ぜ、全然気にしなくていいのに……! だ、大丈夫だよ!」

 そんなそんな! 私の為に時間を使ってもらう必要なんて無いよ。気にしないで練習したりしてもらって――


「やったー! じゃあ今度、スケジュール決めよう!」

 あー! 違うよー!! 良いよって意味の大丈夫じゃなくて、時間を作る必要無いよって大丈夫なのにー!!


「う、うん……」

 喜ぶマイナくんの様子を見て断れない私……

 いや!? すごく嬉しいよ!? 嬉しいよ!! あー! どうしよう!!


 楽しみ過ぎる……



 ――



「最近、綺麗になったわね」

 思わずむせて朝ごはんを詰まらせかけた。


「きゅ、急に何を言うのお母さん!?」

「ふふ、鏡を見る時間も増えたじゃない」

「高校生だし当然でしょ……」

 冷静を装いつつも、やっぱりお母さんには見透かされてるなぁ……って思う。


「楽しんでるみたいで本当によかったわ」

「……うん。思ってる以上に楽しくて私も驚いてるよ」

「何かあったらいつでも言ってね」

「うん、ありがとう」


 ……少し前まではこんな優しさも不安だったなぁ。

 自分はこのままでいいのか、それについて不安で仕方ないのに大丈夫だよって言葉を信じることができなかった。

 何をしても周りの目が気になっていたから、今回の高校に通う事だって上手くいくわけないと思っていた。


 なのに今は高校に行くのが楽しくて仕方ない……もう、本当に思いも寄らない現実……!

 これなんて乙女ゲーム!?って思うくらいにはキラキラしてる……本当にすごい……

 ああ、語彙力が足りなくて今日もマイナくんを思うだけで尊くて仕方なくてフフフフフフフフ……


「あら、コーヒーに砂糖入れなくていいの?」

「……あっ、気が付かなかった……」


 こんな限界オタクは見せられない。

 気をつけなくちゃ……!!



 ――



「おー、波多野さんおはようー」

「あ、おはよう……今日も朝練?」

「おー、そろそろ夏の大会の予選が始まるからなー!」


 最近は登校した時、熊谷くんが声をかけてくれる。


「ふふ……がんばってね。そういえば予選の日程はいつ頃だろ……?」

「おー? もしかして応援に来てくれるのかー?」

「マイナスくんが絶賛してたからね……興味が湧いちゃうよ」

「来てくれたら嬉しいなー応援してもらえたら嬉しいからなー!」

「予定、作れるようにがんばるね……!」


 あ、そういえばと思って聞いてみる。

「マイナスくんの軽音部のライブは熊谷くんって行く……?」

「ん、あるっていうのは何となくわかってるけども、いつやるかは知らなくてわかんないなー」

「えっとね……」

 来週の週末で予定や費用についてを熊谷くんに伝える。


「んー……行きたいなー! 時間で悩むけどもなー……!」

「私、ライブに行ってみたいなぁって思ってて……でも一人じゃ不安で……」

「おー、じゃあ行けるようにがんばってみるかー!」

「あ、いやいや……無理はしないで大丈夫だからね……!」

「世話になってるからなー。波多野さんにもマイナスにも。だから行きたいんだなー」

「私の事は気にしないで良いけども……あ、でも、それなら手伝えることがあったら言ってね。時間作れるように何かできるなら……」

「おー!ありがとうなー!」


 そして朝練に戻っていく熊谷くん。

 熊谷くんも良い人だなぁ……マイナくん以外の男の子の友達でなら一番話しやすい……

 野球の応援も行ってみようかな……



 ――



「お、ノンノンどうしたん?」

「あ、えと……その……」


 月野さんに声をかけようとC組に行ったのだけど、先に渋谷さんに声をかけられる。

 渋谷さんは友達も多いうえにこうして声をかけてくれる優しい良い人なんだけども、その渋谷さんの友達の注目も集めていると思うと緊張してアガってしまう……

 やっぱりメッセージを送って声をかけた方がよかったかなぁ……


「ツッキーならあっちで勉強してるでー!」

「あ、う、うん……あ、ありがとう……!」

 どうしてわかるんだろう……!?

 渋谷さんがすごいのか、それともギャルがすごいのか……でもとにかくありがたい……


 そのまま促されるままに月野さんの所に向かう。


 月野さんは分厚い本を読みながら、ノートに纏めているのが見える……

 すごい集中してる様子で、声をかけるのがちょっと気が引ける。

 月野さんが夜の勉強会に顔を出す事も減っているから、変わりようにも少し驚く。


「あ、あの……月野さん」

「何……? あ、波多野さん!」


 声をかけるのには少し勇気が要った。

 最初の月野さんの声色は少し怖かったけども、気が付いてもらえたらいつもの月野さんだった。


「勉強中にごめんね……」

「ううん、大丈夫だよ……! どうしたの?」

「そのね……マイナスくんの軽音部のライブにね、一緒に行けないかなって……」

「えっ、私、行っていいのかな!?」

「だ、大丈夫だと思う……そのね、私だけだと不安だなって思ってて……」

「……はっ! 確かに一人で行くのは普通に不安だもんね……! 行っていいなら行きたい……!」

「うん……よかったら行こう……!」


 月野さんなら一緒に行ってくれるって思ってたから安心した……!

 渋谷さんにも声をかけたいけども、渋谷さんの友達に囲まれている中だと声をかけにくいから、やっぱりメッセージで送ることにしよう……


「そういえば……何の勉強してるの……?」

「あ……えっとね……そのね……」

 月野さんは少し悩む様子を見せる。でも、意を決したようにしてから話してくれる。


「法律関係の事をね……勉強してて……」

「えっ……すごいね……どうして勉強始めたの……?」

「そのさ……悪い人をさ……ちゃんとどうにかしたいって思ってね……」


 ……あっ! この間に遭った事がきっかけで!?


「すごい……月野さんの行動力ってやっぱりすごすぎるよ……」

「そ、そんな事ないよ。それにまだチンプンカンプンで……」

「私もゲーム作りを始めた時は何もわからなかったから……最初はそういうものだよ……!」

「そ、そうなのかな」

「応援させてね……!」

「えへへ……ありがとう」



 ――



「バイトとか余裕だったぜー!」

「優しくしてもらったの忘れるんじゃないぞー!」

「あーん!ってあれ? 蹴らないの?」

「いや、ちゃんとやってたじゃん! 蹴られたいのかー?」

「いつもの流れだったから構えてただけだし!」


 バイト、私にはできないだろうなぁって思ってた。けども、思ったよりも優しい人が多くてもしかしたら私でもできるのかなぁって少し思い始めている。


「ねぇねぇ、ノンノン」

「あ……バイトの事ならマイナスくんが詳しいから……」

「ううんー、そうじゃなくてね」

「え……なんだろう……?」

「焼肉会のロゴ作ってみたんだけども、どうかな?」

「え、ええー!?」


 クラス旗の時もそうだったけども、ロゴも作ってくれているの!?

 すごいなぁ……美術部の――あれ、名前はなんだっけ……


「楽しくて盛り盛り湧いてきちゃうんだよね。使う場所とかわからないけども、よかったらって思ってね」

「ありがとう……! あ、えっと……」

 名前……名前聞きたいけども聞きにくい……あ、どうしよう……どうしよう!


「あ、使いやすくするために注文とかあったらいくらでも言ってね」

 ち、違うの! 注文をしたいわけじゃなくって……!

「う、うん。ホームページ……作っててもしよかったらそこに……」

 そう、そこで誰が描いたかを明記するって事で……

「ホームページ作ってるの? え、見せて!」

 うう……名前を今聞くのは諦めよう……


 スマホで作成途中のページを見てもらう。

 うーん……やっぱりまだ納得いかないなぁ。


「あ、これは近藤さんと鷹田くんのページの方だ……」

「あれ、焼肉会の方じゃないんだ」

「えと……うん。焼肉会の説明をしようと思ってるから……」

「へぇ~こっちの方も何か描いてみようかなぁ」

「う、うん……ありがとうね」


 すごい……! 描くの楽しんでるんだろうなぁ……


「バイトも1回やってみようかな。ノンノンも一緒にやらない?」

「え、わ、私は、できるか不安で……」

「馬園でもできるっていうし、大丈夫だよきっと」

「そ、そうかなぁ……」

「そういうわけでよろしくね」


 さ、誘われちゃった……新しい友達……なのかな!?

 嬉しい……!! けども緊張もする……!

 がんばれ私。できるできるできる……!!

※よければブックマーク、あるいは評価を頂けると幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ