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仮面のロックンローラー  作者: 黄色ミミズク
君がやりたい事を応援したい。それが俺のやりたいロック!(上)
55/114

55・俺はヘンタイじゃありません!!ヘンタイじゃないよね……?

「あれ? マイナス、昼飯はどうしたの?」

「あー馬園……それが朝に買うの忘れてさ……」


 上井先生の家に一泊するための準備で色々確認していたら時間が無く、買い損ねてしまった。


「学食行けばいいじゃん学食ー」

「いやー……その……」


 部活の先輩に会うのがイヤ……というのは言い過ぎで、3年生の速水先輩に会うのは構わなくなった。だけども2年生の先輩たちと顔を合わせた時にどう接したらいいのかわからなくて、それを考えると学食に顔を出しにくい。もちろん、こんな事を言うわけにはいかない。


「大丈夫、わかるぜマイナス……心配すんな」

「えっ、わ、わかるって……」


「学食って怖いもんな……俺も一人で行けないんだ……」


 昼飯を用意し損ねて、一緒に学食へ行ける人を探していたらしい。



 ――



「助かったぜマイナスー!! もう俺、心細くて心細くて……」

「熊谷たちと一緒に行けばよかったのにー」

「声かけようと思ったらダッシュで行っちゃってさ……」

「急がないと人気のはすぐに無くなっちゃうからね」


 余り物でいいやって割とのんびり向かう俺たち。馬園は灰野先生に好き好き言う割にはすっごい怖がりなんだよね。そんな馬園に盾にされつつ何を食べようかなってパン売り場を通り過ぎようとするけども……


「あ、ちょっと離して。部活の先輩に挨拶してくるから」


 パンを買ったであろう軽音部の森夜先輩の姿が見える。挨拶しに……


「いや! 馬園! 離してって!! ちょっと!?」

「荒海の中で浮き輪外すとか無いのわかる!? 今、それと一緒なんだけど!!」

「そこまで!? そこまで怖い!? 大丈夫だって!!」

「俺を一人にしないでくれーー!! マイナスーー!!」


 騒ぐ俺たちに周りの皆の視線も刺さる。

 馬園は目立ちたいの!? それとも目立ちたくないの!?

 わからないけども、こんな状況で森夜先輩と目が合う。挨拶をしたいと思ってもこんな状況だと会釈くらいしかできない。きっと一緒にいる黒間先輩にまた怖い顔で睨まれちゃう怖い……

 ってあれ? 黒間先輩どこだ? 探しているうちに森夜先輩は行ってしまった。


「わ、わかったから! わかったから落ち着いて! 先輩も行っちゃったし……」

「悪いな。今の俺にはマイナスしかいないんだ!」

「次からは皆で行こうね……」



 ――



「へーマイナスくんの友達なんだね♥ よろしくね♥」

「う、馬園です……! よろしくお願いします……!」


 学食を避ける理由のもうひとつ、軽音部の部長の速水先輩。バンドにも入れてもらえて、最近はすごく良くしてもらってるし、そもそもカッコイイし歌も上手いうえで、俺の事を気に入ってもらえてて、今では俺も普通に好きな先輩って思ってるんだけども……


「マイナスくん♥ ほら、あーん♥」

「自分で食べられますってばー! あーん……」

「恥ずかしがるマイナスくんかわいいだもん♥」


 速水先輩に可愛がられすぎて、それを先輩は皆に見せつけるから恥ずかしいんだよー……!! それでも前よりは抑えてくれてて、我慢できるけど……恥ずかしいよー!!


「マ、マイナスって学食でいつも速水先輩とこんなふうにイチャイチャしてたの……!?」

「ふたりきりだともっと激しいよね♥」

「ご飯こぼしたりするのは良くないッスもんね……」

「ナ、ナニしてるの……!? ふたりきりだとナニしてるの!?」

「ヒミツ♥」


 そう言いながら速水先輩が俺に食べさせる。諦めて受け入れて口にするたび、速水先輩のファンの歓声があがり、恥ずかしい……


「速水先輩の秘密の花園は! この渡辺が!! ナベちゃんが!! 死守します!! 任せてください!! あり一匹通しませーーーん!!」


 興奮した渡辺先輩の咆哮が学食に響く。


 やっぱり、俺が学食行くには消耗するものが多すぎるよ……



 ――



「マイナス、あの先輩にも抱きしめられてたけども愛されてるの!? あのゴリ――」

「ダメ!! それ以上ダメ!!」


 学食を済ませ渡辺先輩からも開放されて、教室へ戻る途中に馬園がとんでもない事を言い始める。

 渡辺先輩は確かにゴリラだし空手五段だし最強生命体だろうけども、本人としてはか弱い乙女という設定で速水先輩にアピールしてるから下手なことを言っちゃいけないデコピンされる。


「間接速水先輩ハグらしいよ……速水先輩の残り香を味わってるんだってさ……」

「そういうのあるんだ!?」

「俺、バカだけどそういうの無いと思うよ……?」

「いや、待って……そう考えたらマイナスが灰野先生に叩かれた痕から間接灰野先生が……!?」

「さすがにその考えはおかしいと思う」


「あーー! 俺も愛されたーーい!! マイナスばっかりズルいよー!!」

「あ、愛されてるって大袈裟だよー!」


 愛まで行くとちょっとわかんない……!

 けども、色んな人に好いてもらってるのはわかる。そして俺も速水先輩や渡辺先輩はもちろん、関わってくれてる皆の事が好き。灰野先生はちょっと脇に置くけども。


「どうしたらそんなに愛されるの!? 裏技教えて!!」

「裏技なんてあったら俺も教えてもらいたいけども……うーん……」


 でも、どうして皆が俺と仲良くしてくれてるんだろう。一番に友達になれた鷹田で考えると……俺の唯一の取り柄の音楽……?けど、それだけならバイト誘ってくれるのは説明にならない。逆に俺が鷹田の事が好きなのは、軽音部に入るのを助けてくれたのがきっかけで、その後に色々知ってカッコイイって思って……


「おーい! マイナス! 考えすぎ!!」

「はっ……! ごめん、つい夢中に……」

「なんかヒントでもいいから! 具体的なものじゃなくていいからさ!」

「う、うー……やっぱりわかんないよ……偶然とか、そういうのが多いし……だけどもさ……」

「だけど!? だけど何!?」


「俺は馬園の事、好きだからさ、それじゃダメかな……」


「告白ありがとうでもごめんちょっと待って男同士のそういうの俺まだわかんなくて」

「友達としてって事だよ!!!!!!!」



 ――



 ――『ソーラン節』

 日本列島の北の大地が発祥の民謡で、春に押し寄せる魚の漁をする時に歌っていた唄の一節を当時の民謡家が編曲して広まったものだ。

 大人数で作業をする時、例えば船を漕いだり網を引いたり、皆でタイミングを合わせなくてはならない。そのタイミングを指示する事を”音頭を取る”と言い、その合図で一斉に船を漕ぎ、網を引き……。

 音には全体の意思を統率するという目的や手段もあり、歌にして分かち合うのは非常に合理的だ。現在の状況も歌という形にして分かち合えば、現在の状況を伝えられる。やれ出港だ。やれ待機だ。やれ魚が来たぞ。やれ網を引け。やれいいぞ。やれここまでだ。やれ帰るぞ。やれ喜べ。今日は大漁だ……と。


「おい! マイナス! 何ボケっとしてんだ!!」

「ハッ!? す、すみません……」

「紅組応援団は『ソーラン節』をやるぞ。しかし、他に意見があるなら言え」

「意見なんてとんでもないッスよ! いや、その……」

「なんだ? 言ってみろ!!」


「めちゃくちゃカッコイイッスね……!!」


 俺の知ってるソーラン節と全然違う! 作業唄という側面があるから本来はゆったりとしたテンポなんだ。歌も海原を上をのびのびと響くようなもので、波音とともにたくさんの漁師と歌う、そんな歌だったはず。

 だけども流石は有名な歌で、皆に親しまれてきたから多くのアレンジが世に出回っている。荒波の上を多くの男たちが汗を流し、力強く網を引き魚の群れと戦うような、勇ましく猛々しく燃えるような世界が見えるそんなアレンジ!

 元のも好き! だけどもこのアレンジも好き!!

 

「俺、踊るのとかは苦手なんスけども、がんばるので教えてください……!!」

「マイナス……お前……!!」


 団長は俺の肩に手を置き、それから抱き寄せて皆の方に向ける。わわっ!?


「お前ら!! マイナスのやる気を見習うんだぞ!!! そうだぞ!! 『ソーラン節』は最高だ!!! 最高の『ソーラン節』をするぞ!!!」

「よ、よろしくお願いします……!」


 そんな言われなくてもこの『ソーラン節』で盛り上がらない人なんて……と思って他の皆を改めて見ると、乗り気でない人たちもいる事に気が付く。


「古くてダサい!? 伝統があり受け継がれ磨かれてきた歌なんだよ!! 体育祭は汗と涙の祭りなんだ!! チャラチャラした流行りなんて要らない!!」


 馴染みが深いとたしかにそういう考えもあるのかも……なるほどなぁって自分の中で納得する。


「さあ!! 練習を始めるぞ!!!」


 熱血スポ根な人って本当にいるんだなぁ……!

【参考にした動画】

ソーラン節/南中ソーラン

https://youtu.be/cx8AcBvFzFY?si=oSg8R_qH0WFbAmtq

ソーラン節/民謡

https://www.youtube.com/watch?v=q9-2_K1quUg


私は最近までカッコイイ方の南中ソーラン節っていうのを知らなくて、民謡の方のソーラン節しか知りませんでした。

色々なアレンジがされて色んな表現の仕方がそれぞれあって、そういうのを見れるって楽しいですね!


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