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仮面のロックンローラー  作者: 黄色ミミズク
恋愛経験ゼロだけど『愛の挨拶』を弾いてもいいですか?というか恋人とか結婚って何の為にあるの……?
43/114

43・想像より現実は易しい事が多いみたい

「お前ら正直に吐けよ! カンニングとかしたんだろぉ!? ああん!?」


 木曜日、授業が終わって皆が帰ろうとした所で教室に灰野先生が飛び込んできてテストについて話していた。


「俺、赤点取ってないんスね!?」

「マイナの数学が頼みの綱だったのに、なんで赤点取らねえんだよお!!」

「おー! じゃあ第一関門無事に突破だー」

「よっしゃー!! 次は体育祭で優勝目指すぞーー!!」

「はあああ!? 優勝したらお前らしばき倒すぞ!?

 負けろ!! きしょい奴の仲間でいいのかあ!?」

「灰野先生の仲間よりはマシッスかねー!!」

「マイナてめえ調子に乗ってっから関係なくしばき倒す」

「先生! それ俺にも! 俺にもおねがいします!」

「きしょい奴は喋るな! 近づくな! 視界に入るな!! 消えろ!!!」


 

 ――


 

「っていう事でうちのクラス、すごい楽しい事になってる……!」

「めっちゃおもろ! 体育祭、めっちゃ気合入るやん!」

「灰野先生がそんな風になるなんて、すごい意外……」


 高校から駅までのバスで渋谷さんと月野さんと一緒だったから、さっきの事を話していた。


「灰野先生には好き放題されてて、だからちょっとした仕返しって思うと楽しくて……」

「先生が指揮してくれないから、吹奏楽部でマイナスくんが代わりに指揮してるもんね」

「言うて灰野先生の指揮だと不安やー。ぶっつけ本番で灰野先生の指揮になるんかなー」

「うーん……それはそれで確かに困るよね……灰野先生にも練習出てもらわないとなぁ……」

 灰野先生をどうやって練習に引きずりこむか、考えないとなー。


 そんな雑談もしつつ、駅に着き、渋谷さんと月野さんを見送る。


「――ねえ」

「あ、はい?」

 振り返るとハヤトさんがそこに居た。


「あ、こんにちは!」

「そういうのいいよ。いやさ、話が違うから注意しに来たんだけど」


 ……んん?

 ハヤトさんの様子がいつもと全然違う。

 いや、まぁ俺相手には少し素っ気ないのはわかってるけど。


「話が違うっていうのは……?」

「彼女ともう関わらないでって言ったでしょ?

 なのに普通にあの子、キミの事を話すから驚いてさ」

「えっ? いや、それは波多野さんの負担になるならって話で、波多野さんは大丈夫って言ってて……」

「だからそれはあの子の気遣いだって言ってるじゃん。

 なんで?」


「……その、すみません。ハヤトさんが波多野さんの事を気にかけてくれてるのはわかってるんですけども」

「そうだよ。だからさ、俺はあの子のためにこうしてキミに言いに来てるわけ」

「その気持ちはわかりました。でも、急に距離を取るとか、そういうのはしないッス」


「……友だちなんでしょ? 執着してるわけ?

 というかさっきも女の子と歩いてたし、ひとりじゃ足りないとか?」

「え? そりゃ友達ですし……それに友達は何人いても良いって思いますけど……

 執着……っていうのは?」

「そうやってとぼけるのはどうかと思うよ。あの子にとってキミは邪魔で目障り。

 悪者だっていう自覚を持とうよ。そこまで俺に言わせないでほしい」

「……」


「……わかった?」


「いえ、すみません」

「……キミさ――」

「ハヤトさんにとっては俺が悪者なのもわかりました。けど、俺は俺なりに波多野さんの事を応援するつもりッス」

「……その言い草だと、まるで俺が悪者みたいじゃん」

「あ、いや、そういうつもりじゃないんスけど……

 でも、何かあればその時は一番に相談させてもらったりとかじゃダメッスか……?」

「キミにそんな時間を割けるとでも? いや、もう話はいいよ」

「え、いやいや、波多野さんの事でならちゃんと話したくて」

「キミは将来有望な彼女を食い物にする下衆だってわかったからもういい」

「ま、待ってくださいって!」

「もちろん、彼女にはこの話は黙ってるんだよ」

 静止を聞かずにハヤトさんは行ってしまう。


 こういう考えの違いもあるんだなって思った。応援したい気持ちは同じはずだけど、俺から見えない世界が色々あるんだろうなぁ……



 〜〜



 つい、つい聞いちゃった。


 もうちょっとだけマイナスくんを見ていたかっただけで、そしたら偶然に胡散臭いあの大人がやってきたものだから、つい聞いちゃった。


「マイナスくん、天然なんだろうけども優しすぎるうえに私の話を大事にしすぎだよぉ……」

 感極まると両手で口と鼻を抑える仕草しちゃうっていうけど、本当にその通りだった。

 大きく深呼吸をして気持ちを落ち着ける。


「マイナスくんはわかってないみたいだけども、やっぱりアイツの言ってる事は絶対におかしいよ!」

 尊さを落ち着けた後は理不尽への怒りが爆発。


 マイナスくんはすごい前向きに話をしようって言ったじゃん!?

 無茶苦茶な話を否定もせずに聞いてたじゃん!?

 悪者はどう見たってアイツだよ!!


 とはいえ、これを直接マイナスくんに伝えた所で困らせるだけだよね……

 そうなると波多野さんに話を聞くしかないんだけども……波多野さんがどう考えてるかも聞かなくちゃ……


 そういえば渋谷さんや熊谷くんには報告したほうが良い……?


 熊谷くんは……口を滑らせそうだよね……

 渋谷さんは頼りになりそうなんだけど……でも大変や! って騒いじゃうのが見える。

 もうちょっと私の方で調べてからにしよう。


 うん……そうと決まればやっぱり波多野さんと連絡取らなくちゃ……!!


『波多野さん 聞きたいことがあるんだけど、よかったら通話できないかな?』



 ――



「聞いて聞いてカナ! 俺、どうやら赤点回避したらしい!」

 家で出迎えてくれたカナに一番の報告。

 気になることは色々あるけども、気分上げてく!


「わー! やったね! 波多野さんにお礼しなくちゃ!

 ついでにお兄ちゃんにもお祝いする?」

「えへへ……演奏をプレゼントがいいんじゃないかなってアドバイスもらったけどもどうかなぁ」

「んー! いいね! そっちの方がまだ安心できるから!」

「他はケーキとかもかなぁー?」

「うんうん! 日程も相談するんだよ!」

「ワクワクしてきちゃったな……! 今日もレッスンに勉強に、がんばるぞー!!」

「おー!!」



 ――



「本当に本当にありがとう! 波多野さんありがとう!!」

「そ、それほどでも……」

 夜の勉強の時間に波多野さんへお礼を伝える。


「せやかて一番の懸念の数学があんな事態になったからやしな!」

「う、うん……そうなの……だから、慢心しないで勉強進めようね……!」

「オッス! よろしくおねがいしますっ!」

「気合十分だなー! 今夜も波多野さんと籠もるかー?」

「それがいいだろね。マイナスくん、勉強がんばって。波多野さんもよろしくね」



 ――



「そ、そういえばなんだけども波多野さん。ハヤトさんとはどう……?」

「えっ……どうって何が……?」

「いや、ほら、前にハヤトさんの事、好きって言ってたし……」

「えっ、そんな事言ったっけ……?」

「えっ!? 言ってたよ!? 好きって!?」

「うーん……友だちとして好きって言ったかなぁ? 少なくともお付き合いとかは絶対に無いよ」

「そ、そうなんだ。そっかー」


 あそこまで言ってたからハヤトさんと波多野さんは恋人手前かなって思ってたけど全然違う……?

 まぁ恋人とは違う関係って事なのかな……


「そういえばなんだけどね、月野さんにはハヤトさんの事は話した?」

「えっ!? あ、えー……ちょっとだけ」

「あ、責めてるとかじゃなくて、月野さんもプログラミングとかで興味があるんだって」

「そ、そうなんだー!」

「私がオタクっていう事、隠さなくてよくなってきたのかもね……ふふ」

「隠し事があると大変だからね……!」

「でも、マイナスくんの秘密はまだちゃんと秘密にしようね」

「お、おう……!」

「よし、今日もがんばろうね!」

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