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仮面のロックンローラー  作者: 黄色ミミズク
夢のような世界に迷い込んでしまったんだけども、私はモブ役じゃないんでしょうか?
155/155

155・もう少し続いても良いみたいでした……!

///

 良い夢でしたと笑う時

 私の前に あなたはいない


 密かに見ていた あなたの事を

 募らせていた あなたの事で

 あの時もしもを巡らせて

 後悔ばかりが巡りゆく


 あの日の私に伝えたい

 夢は束の間 終わりは不意に迎えると

 淡く思いを秘めたるだけの 日々は消え

 独りしずかに 涙する


 あの日の私を夢に見る

 舞台の上の あなたが見せた あの世界

 私の夢の始まりです

 今も私は夢見てる


 どこにいますか どうしてますか

 元気でしたら それで良い

 あの時もしもを巡らせて

 後悔ばかりが巡りゆく


 終わった夢と 声に出す

 今この日々も いつかは終わると教えてくれた

 涙は拭いて もう後悔したくないから

///


「こ、こちらは……昨日に書いたもの、でして……」

「お、おう。その、アレだよな。えっと、その、ノンノンが俺の事を好きって誤解してた時に――」

「その通りですけれども、その通りですけれども……!!」

「勘違いさせていたの、本当にごめんなさい……」

「い、いえ。私が勝手に、勝手に! そう思い込んでおりましたから……」


 心を決めて、待ち合わせ場所へ行ったら何故かヒロシさんがいて、おかしいなぁって思ったら、突然、緊張した様子でヒロシさんがブツブツ喋り始めたから本当にビックリしたんだよね。

 最初は何を言ってるか全然わからなくて、だけどもよくよく聞いたら、私がヒロシさんの事を好きだと思っている事を聞いてさらにビックリ。

 講座を選んだのはもちろん、ずっと傍にいようとしたり、ずっと気にかけてたり、ダンスのレッスンにも誘ったりとかも根拠で……確かによくよく考えたらこれ、恋してるように見えちゃうね!?


 もし仮に、友達の誰かが家庭を持っている、歳の差も親子くらいの相手にガチ恋してたら、私も止めると思う……


「いやぁ……ノンノンの詩へのアンサーソングって感じで……」

「こ、こちらの通りに、私、私は、ノンノン様に、後悔も、後腐れも無いように、致したくて……」

「そ、その。でも、鹿倉さんの詩も読んで、また私もさらに納得したっていいますか……」

「そうそう……めちゃくちゃ鹿倉ってば、健気過ぎて……」


 走って戻って人違いって伝えた時、鹿倉さんはフリーズしていて、真中さんが詳しく聞いてくれた。その後に真中さんはビックリするくらい笑った。私は鹿倉さんに謝った。遅れてやってきたヒロシさんは困惑しっぱなしだった。

 それからヒロシさんの傍にいた理由を説明。マイナくんの名前は出さなかったけども、ヒロシさんがポロっとマイナくんを見かけて、実はすごい人だっていう事を皆に喋って欲しくないという事を話した。

 ヒロシさんはそういうの絶対に言わないのにって言ってたけども、信用が足りないからダメって伝えた。鹿倉さんもそこは同意してくれた。一応、私がこの合宿に来ていたのも、皆には秘密にするっていうけども、うーん……


「ですけれども、その……実際に近藤先生と過ごしてみて、人には寄りますが、確かに恋をする人がいらっしゃってもおかしくないかと……」

「えっ、なんか、結構嬉しい。えっ、マジで? いや、本当?」

「申し上げておきますが、近藤先生の一途に家庭を思いやる姿に私は好感を覚えましたけど、普段の振る舞いはお話になりませんのよ! ですけどもそこも人に依る所ですし……」

「いやぁ、嫁と娘、超大好きだからなぁ」


 釈明できた後は、4人で舞踏会に行った。ペアで入場した方が見栄えが良いっていうだけで、中に入っちゃえばダンスパーティだった。

 たくさんの人がいて、その輪に混じったり、輪から離れて休んだり、でも、色んな人と話したり踊ったり……本当に楽しくて、いっぱい笑ったと思う。

 みんなが楽しそうにしているのが嬉しくて、その中で鹿倉さんも楽しそうにしているのが見れて、また嬉しくなって笑って。


「私は、近藤先生がノンノン様を誑かしていると始めは……」

「まぁ、勘違いしたオッサンが女子高生に手ぇ出すとかはよくあるしな……愛娘の事は考えないの? って俺は思っちゃうけどさ……」

「そう。ですから……悪い人ではないと確信いたしまして……」

「もしかして変な事してたら俺、ヤバかった!?」

「然るべき場所に相談する所存でしたわ……」


 舞踏会が終わったら、今度は仲良しで集まってキャンドルナイトっていうのをしてきたんだよね。

 私は鹿倉さんと真中さんにくっついていっただけだけども、鹿倉さんと真中さんの友達やお世話になっている人たちと一緒に過ごして、夜更かしをして。

 眠るのが、本当に惜しい夜だった。


「まぁ……でもなんか、それを踏まえて、ふたりの詩をもう一度読むと、なんかいいな」

「ノンノン様の詩は、本当に感銘を受けまして……ですけれど、私の方は、恥ずかしくて、今は見れませんわ……!」

「えっ、そ、それは私も一緒で……自分のは恥ずかしいですけど、鹿倉さんの、すごい、すごい好きですよ……」

「アッハッハ! まぁ自分のフルチンは恥ずかしいけど、人のを眺めるのは恥ずかしくないもんなぁ」

「……? えっと、その”フルチン”というのは……?」

「ん、えっと……あ、待ってノンノン言わないからそんな怖い顔しないでごめんなさいごめんなさい!!」

「えっ? どうしましたの? えっ?」


 〆が最悪過ぎます……



 ――



「それでは、おかげさまで充実した日々を過ごせましたわ」

「ああ、こちらこそ大変世話になった。ありがとう、鹿倉」

「さようなら、これからのご活躍、陰ながら応援しています。宮音様」


 そうして、鹿倉さんが乗った車が発進する。


「さようなら……! ありがとうございました!」

 私は出来る限りの大声で、鹿倉さんを見送る。ここまで別れを惜しんだのは初めてで、こんなに涙を堪えたのも初めてだ。


「……これを使うと良い」

「あ、ありがとうございます……」

「君の事を彼女に頼りっぱなしで申し訳なく思っていたが……結果的によかったのかもしれないな」

「鹿倉さんに会えて、鹿倉さんたちの舞台を見れて、本当によかったです」

「鹿倉……はて、本当に記憶がなくて申し訳ないな」


 宮音くんにもたくさんお礼をしなくちゃなぁ……他にもたくさん、気持ちを伝えたい人が多すぎる。


「おいマイナ、急げよ。ヘバってんじゃねえー」

「い、いや……なんで、俺、運ばなきゃならないんスか……」

「男だろぉー? 女に荷物運ばせる奴がいる??」

「ポーターさんに、頼めばいいじゃないッスか……!」


 灰野先生がマイナくんを連れてやってくる。

 念願のマイナくんだけども、また灰野先生のせいで酷い目に遭ってる……


「うっす。宮音、これ、私の荷物な」

「あっ、ミ、ミヤネ。それに波多野さん! ……灰野先生と一緒で平気……?」

「全く問題は無いが……だが、どうして荷物持ちを?」

「良いから! 良いから早く積め! 早く!」

「……あの、灰野先生。中を見てもいいですか?」

「ああん? 別に何も変なの入っちゃいねーけど?? 疑ってんの波多野??」


 怪しい様子の灰野先生を見て、私は直感した。


「これ、アメニティ、入ってますよね……?」

「は? いや、入ってねえし!」

「開けます」

「おいやめろって!」


「……タオルとかって持って帰っていいんだっけ?」

「いや、ダメだな」

「だから、マイナくんに運ばせていたんですよね……?」

「いいじゃん! いっぱいあるんだし! ちょっとくらい平気だって!」

「それと……土田先生はどこに?」

「アイツなら一人で帰るってよ」

「嘘ついて置いていくのは可哀想だから、迎えに行ってあげてください」

「なんでお見通しなんだよー!?」


 綺麗に思い出を〆させてくれない大人たち。まぁそれがらしいから良いんだけどもね。


「あの……宮音くん」

「……ん」

「私、灰野先生が心配だから、もう少しここに残ろうと思う」

「……帰りはどうするんだ?」

「マイナくん、頼ってもいいかな?」

「えっ? えっと、たぶん大丈夫? うん。席、空いてたはず」

「だよね。そういうわけで、たぶん大丈夫」

「……そうか。わかった」


 宮音くんは踵を返して、車に乗り込む。


「騒がしいのは頼んだぞ、マイナ」

「ウン……灰野先生が迷惑かけてゴメンね」

「なんで保護者面始めてんの? あとで潰す」

「宮音くん、ありがとうございました! また!」

「ああ、また」

「またね! ミヤネ!」


 私が今立っている、日常という名の舞台。

 どんな事が起きるかはわからないけども、まだまだ続くし、みんなとはまだまだ一緒に居られる。

 現実だけど、振り返ったら夢のような日々なんだなって思ったら、楽しまなくちゃってそんな気持ちになる。


 完璧じゃなくて良い。ありのままを受け入れる。

 鹿倉さんたちに教えてもらったその事を、私は大事にしたい。


「そういえば波多野さん。ダンスパーティ楽しんでてよかったよ」

「……えっ? 私、マイナくん探してたけども……どこに居たの?」

「裏方してたんだ。カメラとかそういうの勉強させてもらってて」

「……そうだったんだ!」

「今度、軽音部で動画を撮ったりする予定だからさ」

「私、何か手伝えないかなぁ」

「よかったら声かけさせて!」

「もちろん、待ってるね」


 ああ。これからが楽しみ!


「それじゃあ灰野先生、ごめんなさいしに行きますよー」



=====



 ノンノン様と過ごした日々は、私にとって本当に夢のような日々でした。

 会えてよかった。話せてよかった。心からそう思っています。


 ――これもあの人からの贈り物なのかしら。


 幼い頃の私は我儘で、自分勝手で、奔放でした。

 家族以外の皆からは、何をしても許されて、何をしてもおだてられて。

 本当の私など、誰も見ていないと、幼心でもそう思いました。


 それを、私は孤独に感じていました。

 両親と過ごす時間が少なかったのもあるかもしれません。

 誰かに、私を見てほしくて堪らなかったのかもしれません。


 『王子様が欲しい』


 7歳の時、私はこのような事を言ったのです。

 恐らく、本当の私を見てくれる人が欲しいという心の表れなのでしょう。

 でも、その場では文字通りに王子様――宮音様を指す言葉でした。


 思い返せば、本当に思い上がった事で、恥ずかしくなります。

 しかし、あの人は「いいよ」と私に返したんです。


 あの時の私はそれが嘘だと思いましたし、それでも意地悪く、どうやって謝らせようか考えていたと思います。


 でも、あの人は本当に宮音様を連れてきてしまったんです。

 そして、ふたりで演奏したんです。

 甘いバイオリンの音と柔らかなピアノで紡がれる『いつか王子様が』。


 それがあの人からの初めての贈り物でした。


 いつも遠く見ていて、でも仮面模様が不敵で、端的に言えば不格好。

 だけど舞台に上がり、バイオリンを奏でる様は、私には王子様で。


 ――ノンノン様。私、あの時に、あの人がいるんじゃないかと、そう思いながら、貴女の下へ行き、そして肩を落としてしまったんです。

 本当に本当に、私の性根は我儘で自分勝手で奔放なのだと、改めて思ってしまって……

 このような私が、貴女の友人を名乗るのはやはり、おこがましいと感じるのです。


 また、お会い出来たらその時はどうか、友人になってもいいか、聞いてもよろしいでしょうか。

 貴女とお話できて、私は救われました。


 ……ああ、でも、あなたさまに出会えたから、私は今、幸せです。

 マイナ テルさま。

 また、あなたさまが舞台に戻ってくる事を、私は心から願っています……

第六章はここまでになります。

現在続きを執筆中ですが、最近さらに忙しくなってきたのでまた投稿ペースが落ちる事になりそうです。

のんびり続きを楽しみにして頂けると幸いです。

今後もどうぞよろしくおねがいします!


※よければブックマーク、あるいは評価を頂けると幸いです

※2026年1月18日(日)に京都文学フリマに出店します。

 綺麗な本を作るので楽しみにしてください。

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