148・甘い夢を終わらせる人
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良い夢でしたと 笑う予定
いつも見てます あなたの事を
頭はいっぱい あなたの事で
ダメですよくないイケマセン
ギリギリ犯罪してないだけだね ごめんなさい
夢見る私は夢見すぎ
舞台と夢は いつか醒めると知っている
端役の私はあなたを見るだけそれでいい
良い夢見れたと 笑います
夢見る私は夢を見る
舞台のうえで あなたと言葉を交わし 手を取って
「良い夢でした ありがとう」
幸せそうに 伝えてる
妄想します あなたと未来
空想止まらず 老後まで
ダメですよくないイケマセン
あなたは主役で私は端役で さようなら
良い夢でしたと 笑う予定
舞台も夢も 終わらないでと願ったら
涙が出てきて なにも見えなくなるから
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うん、書けたかも。見直してみよう……ってうわあ!? 自分で書いたのに恥ずかしいよおお!!
がんばって集中して書いて、推敲してる間はなんだか楽しくなったっていうのはあるけども、落ち着いて、人に見せるんだって思うと恥ずかしすぎるどうしよう恥ずかしい恥ずかしい……
「おっ、ノンノン書けたかー?」
「待ってください! 待ってください、待ってください……」
「そういう時は酒呑んで勢いでやるのがいいぜー」
「未成年飲酒を勧めないでくださいまし!」
「でも、歌書く時って素面でだと難しくね?」
「だからといっていけません! そして本日も近藤先生には一滴足りとも呑ませませんわよ!」
「そ、そんなー!?」
午後は催しがあるからピアノの講座の後に続けてロック講座。コテージを訪ねたらヒロシさんはやっぱり寝ていたから、ヒロシさんは起床直後。ちなみにやっぱりおパンツ姿だった。
「あ、あの……鹿倉さん、見てもらってもいいですか……?」
「構いませんけども、私、助言など差し上げられませんわよ?」
「だ、大丈夫です。先生にいきなり見せるのは恥ずかしくて……」
「承知いたしましたわ。拝見させて頂きますの」
恥ずかしくはあれど、鹿倉さんになら見てもらっても構わない……
鹿倉さんは詩の書かれた紙をジッと見つめる。
「……こちらは、切ない歌になりますのかしら」
「明るい歌にしたい……と思ってたんですけども、これ……あっ、悲しい感じになっちゃってますよね……」
「そうなのですね」
「暗い部分、消しちゃった方が良いでしょうかね……」
指摘されて気が付く。ハッピーな歌のつもりで書いてたのに、暗いよねって。だけどもこれ以上何も思い浮かばないっていうのもあるし、それならテンション高い方が良いかな? 例えば夢の中ではラブラブですとか……?
「――いえ、私は、良いと、思いますわ」
「あ、ありがとうございます……」
鹿倉さんがそう言ってくれるのはとても嬉しい。でも、鹿倉さん――
「あれ? なんかめっちゃ感動してる鹿倉?」
「そうですわね、とても良いと私は思いましたから」
「おー! やったじゃんノンノン!」
「ありがとうございます……あの、その……」
「少し休憩して、お茶を飲みたいなぁって……」
鹿倉さん、すごい涙をこらえてるように、私は見えていて……
――
「おっ、めっちゃいいじゃん!」
「そ、そうですか……?」
「てか、やっぱり好きな奴いるんだな!」
「き、聞かないでください……」
「大丈夫大丈夫、わかってるって!」
鹿倉さんが紅茶を用意してくれている間に、お菓子を用意しつつ詩をヒロシさんにも見せる。褒められてるけども、やっぱり恥ずかしいが勝ち過ぎちゃう。
「けど、なんか中途半端っつうのか、後半に繋がる感じで終わるっぽい?」
「そうですか……?」
「らしいといえばらしいんだけども、もうちょっと先も知りたいなーって思った」
「えっと……じゃあ、なんか無理やり明るくするとか……?」
「どんな感じに?」
「ラブラブですとかを……あっ! 待ってください! 今の無しです! ダメです!!」
「おもしろ……! いや、ノンノンが言うとめっちゃカワイイなぁ……!!」
「やめてください! やめてください!!」
恥ずかしさで頭が沸騰しそうー!!
「どうしましたの!?」
私の奇声に驚いた様子で鹿倉さんが慌ててやってくる。
「あっ、い、いえ、なんでも……!」
「ノンノンがめっちゃカワイイ事言ったからさー、カワイイ! って言ったんだよー」
「恥ずかしくなっちゃうので、やめてください……」
「……そうでしたのね。慌ててしまいましたわ……」
「ご、ごめんなさい……」
ヒロシさんはアッハッハと笑っている。
「ああ、けど、無理して思ってない事書こうとしないほうがいいぜ」
「い、いえ。でも、最初のイメージにするならって……」
「作ってみたら全然違う事になるってあるあるだからよ。イメージ通りにしようとして言葉たちに心が乗ってないんじゃ、誰にも届かないぜ」
「……それは、そうですわね」
「ほら、鹿倉も言ってる!」
「ともあれ、私は戻りますわ。もうじきにできますので、もう少々お待ちくださいまし」
「はーい」
鹿倉さんはキッチンへと戻る。
「……そうなると、なんですけども……」
「おう」
「私、それ以降って思い浮かばないんですよね……」
「そっかそっか。んじゃあ、なんつーかあれか。今、バリバリ青春疾走中だからこそ完成できないのが完成って感じか!」
「その表現はよくわからないです……」
「簡単に言うとめっちゃ良いって事で、この続きはノンノンが書いてもいいし、聞いた誰かが書いても良い感じみたいな?」
「う、うーん……?」
「妄想しねえか? お話の続きとか、自分だったらこんな風にするとか」
「そ、そうですね。します」
「それと一緒! 完成させないことで、完成を想像させるって訳だ」
「なるほど……」
二次創作を作りたくなるって事かな。
「そのうちに、ノンノン自身も本当に書きたい感情とか言葉が湧いてくるかもしれないし、だからこそこれってすげえ良いと思うぜ」
「……でも、見返したら恥ずかしくて……いや、今もすごく恥ずかしいです……」
「歌でも曲でもそうだけど、感情を形にするってフルチンを人に見せるようなもんだからな」
「……えっ、今、なんて?」
「んっ?」
「あ、いえ、なんでも……恥ずかしいのは当然って事ですよね」
「おう。最初は恥ずかしいけど、慣れたらフルチン見てくれてありがとうってなるからよー」
「やめてください。その言い方、やめてください……!!」
「アッ、いけね! わりぃわりぃ! チンチンだな!」
「女の子に、言わないでください……!」
鹿倉さんがいたら卒倒してたと思います。
……
「鹿倉はどうよー」
「申し訳ありませんが、筆が捗らず……」
「どこで躓いてる?」
「そうですわね……私自身の気持ちを書いても、納得してしまうと言うのでしょうか」
「納得? どんな感じに?」
「何か憂いや憧れがありましても自身で選びました事ですし、その結果により今の充実した日々があると納得してしまっていて……」
「マジか。俺、後悔ばっかり迷惑ばっかりで申し訳ねえ! って日々ばっかりなんだけど」
「なので、折り合いが付いた気持ちだと、詩にはならず……」
「そっかー。けどもお空が綺麗ーとかご飯美味しいーとかでも良いんだぜ」
「それはその通りですわね……」
鹿倉さん、私たちよりずっとずっと大人だからこそ、確かに気持ちを書いて表すのって難しいんだろうなぁ……
お空が綺麗とかご飯が美味しいとか、それらを芸術的に形にするっていうなら向いてそうなのかな?
あっ、でも私って可愛くてごめんね! みたいな感じでありのままの鹿倉さんの日々を書いても楽しい気がするんだよね。
パッと見もちろんお嬢様、品行方正お姫様。仲良くなると優しい素敵な女の子。人目を気にして大盛りご飯は食べられない。みたいな……
「子どもっぽい感じで恥ずかしいかもしれねえけどさ、何か創って人に見せるっていうは人前でフル――」
「――先生、鹿倉さんにも伝わる言い方でお願いします」
「アッハイ。えっと、人前で……裸んぼになるみたいなもんだからな!」
「……ええ、それは確かに違いありませんわね」
「最初は恥ずかしいかもしれないけど、だんだん見てくれてありがとうってなるんだよな!」
「例えが少々お下品ではありますけども、全力で打ち込んだ事に拍手を贈られると感激の至りなのは間違いありませんわ」
「そうだよなー! てかこの紅茶って鹿倉が淹れたの?」
「そうですけれども、何か?」
「いや、めっちゃ美味しすぎてびっくらこいた。こんなの飲むの久しぶり過ぎ」
「それはどうも。お褒めに預かり光栄ですわ」
「鹿倉の詩、できるの楽しみにしてるぜー!」
私もよかったら見てみたいなぁって思ってます!
――
「あの、ノンノン様」
「はい?」
講座が終わり昼食の時間。鹿倉さんは忙しいだろうけども、その間は私、ヒロシさんとどうしようかと考えていたけども、声をかけられる。
「……私、これからあなたに酷い事を申し上げるつもりなのですけども、心して聞いていただけませんか」
「……え?」
どういう事? えっ、鹿倉さんに私、何かしちゃった? えっ? えっ?
「思い人がいるのは、素敵な事ですわ。その……日々が輝いて見える経験、私もありましたから……」
「は、はい」
「ですけれども……」
「――あなたの恋は忍び続けるにしても不相応だと思いますの」
……えっ、どういう……いや、ううん、わかってる。わかってる、不相応なのはわかってるけど、えっ?
私がマイナくんを好きな事、鹿倉さんに話したつもりはないんだけども、灰野先生が言っちゃったのかな。あるいは宮音くんが……? いや、別にそれはどうでも良いんだけども……
「彼があなたの恋心に気が付いていないのは本当に幸いです。けれども、あなたが彼に恋をしていると知ってしまった時、困るのはその彼ですわ」
「えっ……あっ、はい。わ、わかっています。わかって、いますよ……」
「……」
「ああ、でも、その……鹿倉さんも、そう言ってくれるなら、やっぱり、好きになっちゃいけない相手なんだって、納得できそうです……から……」
私はシンデレラの資格なんて、なにひとつ持ってないもんね。好きになっちゃいけないって本当に思ってるのに、最近はずっと好き好き好きだったもんなぁ。
「ですけれども……その……」
「は、はい……」
「夢から醒める前なら、感謝を伝える事をできますわ」
……あっ、私の詩の……?
「私が手伝います。舞踏会で、ノンノン様の見た夢が良い夢だったと、終わりにしましょう……?」
中途半端で未完成の詩の続き、やっぱり書かなきゃいけないよね
「……はい」
「……申し訳ございません。本当に、本当に差し出がましいですけども……」
私は首を振る。むしろ、鹿倉さんにそう言ってもらえてすごく嬉しいなぁ……
鹿倉さんにハンカチを差し出して、私は言う。
「ありがとうございます。ハンカチどうぞ」
「……使わせて頂きますわ。ありがとうございます」
※よければブックマーク、あるいは評価を頂けると幸いです
※2026年1月18日(日)に京都文学フリマに出店します。
綺麗な本を作るので楽しみにしてください。




