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仮面のロックンローラー  作者: 黄色ミミズク
夢のような世界に迷い込んでしまったんだけども、私はモブ役じゃないんでしょうか?
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144・会食

「うおっ! このお菓子超美味しい!」

「もうすぐディナーなのですから、口にし過ぎない方がよろしいと思いましてよ?」

「そんなガキじゃないんだから、残したりしないってー!」


 部屋に戻る道すがらで鹿倉さんと合流できて、そのまま晩御飯を摂りに行くことにする。


「ノンノン様はどうでした?」

「えっと、はい。ちゃんと練習できたかなぁって、思います」

「それはよかったですわ」

「けど、明日は誰と行くんだノンノン?」

「あっ、いや……えへへへ……」


 普通に考えてみた場合、どうすると良いんだろう……

 当初の目的ならミヤネくんに声をかけて聞いてみるのが一番なのかな……でも、それって恐れ多すぎるんだよね……ミヤネくんに憧れている人も多いし……

 個人的な欲求だけならマイナくんに聞いてみたい所だけど、たぶん声をかけるタイミング無いしなぁ……


「近藤先生、そういうのは野暮といいますのよ」

「あっ! そりゃたしかに! わりぃわりぃ!」

「あ……でも、その、鹿倉さん、私、相談をしてもいいですか……?」

「もちろん構いませんわよ」

「あ、ありがとうございます……後で、お願いします」

「承知いたしましたわ。ディナーの後にでも、時間を取りましょう」

 少なくとも、ミヤネくんに声をかけた方が良いかは相談しよう……!


 そういうわけでフードホールへ私たちはやってきた。

 広くて綺麗、天井も大きく取られていて大きな窓からは湖も見える。陽がほとんど沈みかけていて、薄く燃えてるような空と山並みがすごくロマンチックだ。


「うおー、どれも美味そうだなー!」

「えっと……並べば大丈夫ですか……?」

「ええ、不安でしたら私に倣ってくだされば構いませんわ」

「酒って無いかなー」

「未成年の私に聞かれても困りますの。さぁ、参りましょう」

「は、はい」

 鹿倉さんについていきつつ、一応は周囲を警戒。マイナくんは居なさそう。


「まずはこれ貰い!」

「私も頂こうかしら。ノンノン様は?」

「あっ、頂こうと思います」

「前菜って他ももらって良いのかな」

「ええ、もちろんですわよ。そちらでしたら私も頂こうかと」

「じゃ、じゃあ私もそれで……あっ、あれはカルパッチョでしたっけ……」

「その通りですわ。そちらに変えます?」

「い、いえ、大丈夫です……聞いただけで」

「食べきれなかったら俺食べるからいいぜー」

「近藤先生に甘えて、頂いておきます?」

「えっと、じゃあ、お願いします……」

「メインディッシュは何になさいます?」

「肉も魚も何でもあるな……肉じゃがもあるんだなぁ」

「わ、私は、ハンバーグにしますね」

「ハンバーグいいなぁ。俺もハンバーグにフライにしちゃおっかなー!」

「他には何になさいます?」

「えっ、あっ、一旦私はこれくらいで……」

「承知致しましたわ。私は……」

「ふたつで悩んでる? 両方貰っちゃえば?」

「いえ、それですと食べ過ぎかもしれませんし……」

「残しそうになったら俺食べるから平気だって!」

「……まぁ、そういう事でしたらお言葉に甘えて……」

「わ、私のトレイに乗せます……?」

「結局、なんかいっぱい取っちゃったなぁ!」


 前菜を選び過ぎたかも……? ヒロシさんが主菜もなんだかんだ種類たくさん取っちゃったから、トレイの上がいっぱいだ。


「さて、席は約束がありますので来ていただいて構いません?」

「あっ、はい」

「うぃーっす! てか、俺も一緒で良いんだ?」

「ええ、恐らく問題無いかと。ですけども粗相は無いようにお願いいたしますの」

「おっけー!」


 お誘い……誰からだろう? 一瞬疑問が浮かんだあとに、もしかして、と思い浮かぶ人がいる。

 賑やかなフードホールの一角に、仕切られた個別のスペースが用意されていて、その中の一室へ向かう。

 ――ヒロシさんを会わせて大丈夫なのか、すごく不安……!


「ごきげんよう、お待たせしてしまいました? 宮音様」

「いや、来たばかりだ」

 そう、やっぱりミヤネくん。

 今、私はスマホを持ってないから、ミヤネくんが声をかけてくれていたのかなぁって。気を使ってくださっていてありがとうございます……


「でしたらよかったですわ。さ、ノンノン様と近藤先生も席にどうぞ」

「あれっ、王子様じゃーん。ちーっす」

「……何故、あなたがここに?」

「えー! なんか講師って事で呼ばれたんだよ!」


 フルートのお姉さんがヒロシさんを知っていたから、もしかしたらミヤネくんも知ってる仲の可能性があると思っていたんだよね。でも、実際に知り合いなのはちょっとビックリ。

 ヒロシさんはミヤネくんの隣に座る。


「お知り合いでしたの?」

「……まぁ」

「てか、宮音と鹿倉って仲良しだったんだ?」

「どうでしょう。私は宮音様の事は存じておりましたけども」

「申し訳ないが、僕は昨日に会った事しか印象がない」

「宮音様に憧れる女子は多いですからね。構いませんわ」

「アレ? んじゃあ宮音が呼んだ理由って?」

「客人として招いた彼女を、任せきりにするのが申し訳なくてだな」

「……えっ、ノンノンって宮音のお客さんだったんだ!?」

 はい……かねがね間違いありません……頷いて答える。


「わ、私は、ミヤネさんの先生、土田先生に呼ばれまして……」

「ああ、迷惑をかけた分、もてなしているんだ」

「……そういう事でしたのね」

「へー、やっぱり宮音って義理堅いなぁ」

「当然の事をしているだけだ」

 ミヤネくんは水を一口飲む。


「それで、何か困っている事や心配な事は無いか?」

「い、いえ。その、鹿倉さんのおかげで、すごい助かっていて……」

「俺も鹿倉にめっちゃ世話になってるーありがとー」

「大した事はしておりませんわ」

「連弾のパートナーだからという事だが……レッスンの方はどうしている?」

「私としては学びになっておりますわ。ノンノン様と致しましてはいかがでした?」

「えっ、あ、はい。色々と負担ばっかりさせて申し訳ないなぁと……」

「気になさらずとも、とは何度も申してますが、ノンノン様も努力していますわ」

「い、いえ……私がメロディー? の方を弾くのってそれで良いのかなぁとか……」


 連弾ってプリモ(高音部、メロディー担当が多い)とセコンド(低音部)に分かれるのだけど、初心者なのに大事な部分をやってるのが申し訳なくて……


「支える、合わせるというのを私は学ばせてもらっていますから、構いませんのよ」

「あはは、どっちかっつーと伴奏の方が大変だからなぁ」

「ふむ……しかし、それなら埋め合わせとしていつか、僕でよければレッスンに付き合おうか?」

 ミヤネくんが鹿倉さんに申し出る。私のせいで本当に申し訳ありません……


「いいえ。申しました通り、私はノンノン様とのレッスンで十分に学ばせて頂いておりますわ。埋め合わせだなんて、ノンノン様に失礼ですわ」

「えっ、いえ、でも、私以外だったら、もっと色々できたかと、私も……」

「別の事を学べたというのは確かですけれど、ノンノン様とだからこそ学べる事もありましてよ?」

「あれ、鹿倉って結構ノンノンの事大好き?」

「そういう事ではなく、知らない世界を知る事ができた、学ばせて頂いていると申しあげているんです」

「はぐらかすの好きだなー金持ちの癖なのかな」

 ヒロシさんは笑う。


「ともあれ……感謝しているのは確かだ。ありがとう」

「あ……私からも、ありがとうございます……」

「どういたしましてですわ」

「あっ、たぶん俺もだ。ありがとー」

「そうですわね」

 それから少しの間、静かに食事をとる……


「……その、下世話で申し訳ないのですけども、伺いたい事がありますの」

「……なんだろうか?」

「宮音様は明日の舞踏会、いかがされるのかしら、と」

「……参加した方が良いのだろうけども」

「ノンノン様は?」

「えっ? えっと……」


 私はミヤネくんを見る。


「土田先生としては、キミと一緒に参加すると良いという事なのだろうけど」

「や、やっぱりそうでしょうかね……? で、でも、ど、どうしますか……?」

「差し出がましくて申し訳ありませんが、宮音様となりますと参加した方が良いかと存じますけども……」

「やっぱ世間体的な奴ー?」

「それはどうでもいい。しかし、合宿の関係者には世話になっている方々も多くてな。参加しないのは厚意を無碍にするので申し訳ない」

「マジかよ!? えっ、高一だよな!? 俺、その歳でそんな事考えた事無いぞ!?」

 わ、私もありませんでしたー……

「まぁだから――とはいえ無理強いはしないが、キミはどうだろうか?」

「え、えっと……」


 私でいいんですか……?

 それが一番不安。自信が無い……むしろ、鹿倉さんのような人が絶対に相応しいと思うんだけども……そう思って、鹿倉さんをチラッと見る。けど、鹿倉さんは目を合わせてはくれない。


「まぁまぁ、不安なのはわかるけども大丈夫だって! ノンノンも可愛いから自信持ってオッケーだって!」

「えっ、い、いえ、そ、そんな……」

「アッ、わりぃ。おっさんが可愛いって言うのってセクハラなんだっけ……」

「そ、そんな事ありませんけど……!」

「とはいえ、気負うのは無理もありませんの。私でよければ後程に指南致しますわ」

「あ、ありがとうございます……お願いします」

「何から何まで、ありがとう。感謝する」

 鹿倉さんがいなかったら私、どうなってたんだろうなぁ……


 ……


「アレ? 鹿倉大丈夫? それって3皿目だよな?」

「……そ、その通りですけども」

「無理して食わなくて大丈夫だからな?」

「手にした分はきちんと頂きたいだけですわ」

「えらいなー。うちの嫁とユミもいっぱい食べるんだけどさ、鹿倉は無理するなよー」

「もちろん、承知しておりますわ」

 そういえば鹿倉さん、お昼のバーベキューもいっぱい食べてたなぁ。やっぱり運動するからかな?



 ――



 夕食を食べた後、ミヤネくんとヒロシさんと別れる。ヒロシさんはお酒を貰いに行くって言ってるけども、大丈夫かなぁ……


「確認なのですけども、ノンノン様は食事、足りました?」

「あっ、はい。ちゃんと食べられました」

「そうですか……? 人目を気にしてあまり食べられない等ありますから、遠慮なさらないで構いませんのよ?」

「私、小食なほうで……」

「承知いたしましたわ。それでは、部屋に戻りましょうか」

「……あの、もしかして、その……」

「……なんでしょう?」

「鹿倉さんは、もう少し食べたかったですか……?」

「……」

「よ、よかったら頼んでも――」

「いえ、私は不要ですわ。足りました。十分に頂きましたので」

「は、はい」


 鹿倉さん、もっと食べていいですよ! なんて私は言えなかった……

※よければブックマーク、あるいは評価を頂けると幸いです

※2026年1月18日(日)に京都文学フリマに出店します。

 綺麗な本を作るので楽しみにしてください。

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