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仮面のロックンローラー  作者: 黄色ミミズク
夢のような世界に迷い込んでしまったんだけども、私はモブ役じゃないんでしょうか?
140/155

140・住んでる世界がやっぱり違う

「そういえば……近藤先生、大丈夫かなぁ……」

「……失念しておりましたわ」

「ほえー? 私は大丈夫ですよー?」

「土田先生の事ではありませんわ。別の先生の事ですの」

「はわー、よかったですー!」


 ピアノ講座が終わって、私たちはお昼ご飯を取りに――今日は外でバーベキューのような感じらしい、その場所へと向かっている所だった。


「……念のため、確認しますか? ノンノン様」

「は、はい……したいです……」

「土田先生はいかが致しましょうか」

「たぶん大丈夫です! 迷子になるので連れて行ってください!」

「承知いたしましたわ」


 そういうわけで鹿倉さんの引率で、ヒロシさんの下へ。


 ……


「先生? 近藤先生? いらっしゃいませんー?」

「わぁ! お部屋の散らかり具合すごいですねー!」

「やっぱり……お酒臭いですね……」

「私、お片付け得意なんですよ! エッヘン!」


 リゾートのコテージだというのに、ダメ人間にかかればあっという間に灰野先生の音楽準備室みたいになれるんだなぁって逆に感心しちゃう。

 土田先生は意気揚々と片付けをし始めているけども、まぁいいか。


「昨日より散らかっているという事は、無事にお戻りになれたという事なのでしょうけど……」

「まだ眠っているのかなぁ……?」

 寝ているならそれはそれで安心……


「――ッ!」

 急に鹿倉さんが息を飲んで固まった。

 その視線を追うと……爆睡してるヒロシさんがいた。


「あ、寝てました……ね」

「えっ!? そ、そうですけど。の、ノンノン様!?」

「えっ……? どうかしました……?」

「えっ!?」


 ヒロシさんが全裸だったりしたなら私も慌てるけど、よかった。

 シャツもパンツも着ている。


「フゴッ……んああ……??」

「――ッ!!」

「ん……おはよ……」

「し、失礼致しましたわ!!」


 そのまま鹿倉さんは部屋から走り去ろうとする。


「ノンノン様! 早く出ましょう!!」

「な、なんでですか……?」

「殿方の肌着姿を乙女が見るものではありませんのよ!!」

「えっ、肌着……?」

「おパンツの事ですわよ!!」


 ……え? 鹿倉さん、今、なんて……?


「鹿倉ぁ、静かにしてくれよぉ……目ぇ覚めたばっかりなんだからよぉー……」

「キャー!! 非が私どもにあるのは存じておりますけど、おパンツ姿で来ないでくださいまし!!」

「あっ! 鹿倉さんは男性のおパンツ姿を見るのは恥ずかしいんですね!」

「ういー……? なんか一人増えてる? どもー……」

「あ、こちらこそどうもー! 土田ですー!」

「キャー!! 鹿倉ですの!! 申し訳ございませんでした!!」


 バタン! と鹿倉さんがたまらずにドアを閉めた所で少しの静寂が訪れる。


「ノンノンさんは大丈夫なんですねー! おパンツ姿!」

「えっ、あー……えっと……」


「そんなに見られるとやっぱり俺も恥ずかしいかも。うへへへ」

「――ハッ! すみません……」

「着替えるから待っててなー」

「はーい! 行きましょう、ノンノンさん!」

「はい……!」


 今更になって、どんどん私も恥ずかしさがこみ上げてきた……



 ――



「腹減ったー」

「私もお腹空きました!」

「歳を重ねても童心のままですのね……」

「うへへー」

「えへへー」


 たぶん、この中で一番大人なのは間違いなく鹿倉さん。どうしようもなく鹿倉さん。

 ともあれ、賑やかな会場に着いた私たち。

 お肉の良い匂いを中心にそれはそれは贅沢なお昼ご飯になりそうだ……


「あ、あの……」

「……どうされました?」


 このまま土田先生と一緒に行けば灰野先生と絶対に合流する。あの灰野先生に。


 私はヒロシさんと灰野先生が一緒に居たらマイナくんと鉢合わせる可能性が高くなると思うし、鹿倉さんの心労も酷い事になると思うんだ。

 だから、可能であればヒロシさんを隔離したいんだけども……


「私、席を取る、とか……食べ物、取ってくるとか、必要かなぁって……」


 土田先生を灰野先生なりに引き渡してもらいつつ、自然な形でヒロシさんと分断できるかなぁって!!


「申し出はありがたいのですけれど、お一人でできます?」

「も、もちろん、近藤先生と……」

「えっ、俺ぇ?」


 鹿倉さん、すごい怪訝な顔をしている。

 ダ、ダメかなぁ……


「もしかしてノンノンさん、近藤先生とふたりきりになりたいんですかー!?」

「えっ!? ち、違いますよ!? そ、その――」

「娘の同級生に俺ってばモテちゃったのかなぁー」

「ち、違いますよぉ……」


 なんでそんな話になるんだろう……恥ずかしくて顔を覆う。


「その……まぁ承知致しましたけど……」

 鹿倉さんはヒロシさんを真っすぐ見据える。


「紳士的な振る舞いをお願いしますわよ?」

「は、はい……?」


 ヒロシさん、鹿倉さんからの信頼が無い……


「私たちは席を確保致しますので、食事の方をお願いしますわ」

 とりあえず、すぐに灰野先生に鉢合わせる事は無くなった。ヨシッ!


 ……


「うおー、結構たくさん盛ってくれるのなー」

「た、食べきれますか……?」

「そんときゃタッパーに詰めようぜー」

「だ、ダメになっちゃいますって……」


 お肉類はグリルの傍にはスタッフさんが居て、お願いをすると取り分けてくれるっていうすごいスタイル。

 セルフで焼く、焼肉とは全然違ったすっごいリッチなもので、これがマイナくんのデフォなんだなぁ……


「嫁にもユミにも食わせてやりたかったなー、俺一人だけ贅沢しちゃって悪いぜー」

「そ、それはわかりますけども……」


 考えてみると、私がこんなすごい時間を過ごしているなんてママもパパも予想してないだろうなぁ……

 学校の友達の、近藤さんや渋谷さん、月野さん、松本さん、後は熊谷くんや新井くんに鷹田くん……馬園くんは友達なのかなぁ?

 皆に秘密でのこんな贅沢、気おくれしない事はない……


「てか、ノンノンも実はお嬢様だったんだなー」

「えっ!? ち、違いますよ……!」

「いやいや、大丈夫だって。秘密にするからさー」

「ぐ、偶然で来てるだけなんですよ……」

「ハハ、オッケーオッケー」


 ……私の事はまぁいいとして、でも、本当にちゃんと秘密にできるかなぁ……?


「そういやユミの好きな食い物って知ってる?」

「えっ? えっとー……」

「嫁もなんだけど、スタミナ系の飯が好きでさー」

「スタミナ系……?」

「ニラとかニンニクたっぷりの。けど、いつからかユミってば臭いを気にし始めててよー」

「え、えっと……」

「小学生の頃は鷹坊一家とでも普通に食ってたのに、最近じゃ明日は予定あるからニンニク抜きってなっててさー」

「そ、そうなんですね」

「ノンノンはやっぱ臭いって気にする?」

「それは……気にしますよ……」

「友達が臭ってたらやっぱダメ?」

「ダメ……ではないですけど……」

「そっかー」


 やっぱり、マイナくんの事を秘密にしてもらえるか不安だから隠しておこう……


 ……


「あれー? 土田先生はー?」

「それが、ご友人をお見かけしたのでそちらで召し上がるとの事で」

 計画通り……! 圧倒的計画通り……!!


「マジかー。まぁいっか! 両手に華は変わんねえし!」

「この後の講座のためにも、私は同伴しているだけですからね……!」

「あの、お料理……とりあえず、どうぞ」

「お持ちくださって感謝致しますの。まぁ、どれもとても美味しそうですわ」

「鹿倉に叱られる前に、野菜もたっぷり持ってきたぜー」

「叱るなんて、そんな事致しませんわ。少々苦言を(てい)すだけですわ」

「マジかよ。もっと肉持って来ればよかったぜ」

「……気遣ってお野菜を持ってきてくださり、感謝いたしますわ」

「やったぜ」

 ヒロシさんにはやっぱり皮肉って伝わらないね……


 とりあえず、いただきますをして食べ始める。

 野菜ってこんなに甘かったっけ……? お肉柔らかすぎ……! ソースも絶品過ぎて、いくらでも食べられそう。大変。


「ノンノン様、これを」

「あっ、ありがとうございます……」

 鹿倉さんがナプキンをくれる。


「はー、やっぱり鹿倉ってママの才能あるよなー」

「お褒めに預かり、()()光栄ですわ」

「いやさー、うちの娘もすっごい面倒見良くてさー。俺がだらしないせいなんだけどさー」

「わ、私も、ユミさんにはすごい、お世話になってます」

「そっか? ユミもノンノンにはすごい世話になってるって聞いてるけど」

「い、いえ、勉強とかをちょっと教えてるだけで……」

「やっぱ、女の子って人の面倒見るの得意なのかなーって」


 人による所が大きいと思うから、それは何とも言えないなぁ……


「ノンノンは知ってると思うけど、鷹田ん所……嫁同士が親友で、まぁ今は色々大変でなんだかんだ家族ぐるみの付き合いしてるじゃん」

 鷹田くんのお家がどうこうは知らないけども、近藤さんと鷹田くんが仲良しなのは知ってる。


「そんなわけで、ユミはさ、ずっと鷹坊の面倒見てて」

「鷹坊って……えっと」

「ん、ああ、コウイチの事だよ」

 鷹田くんの名前、コウイチくんって言うんだ……


「それでさ、ユミの奴が、そのうちに鷹坊の嫁になる時を思うと、なんか、ほら、世話焼かれるの残り少ないかもって甘えたくなって――」

「……あ、あれ、ふたり、今は付き合ってないって、言ってたような」

「えっ!? マジで!? えっ!?」

 ヒロシさんの反応にビックリ。……というか、言わない方がよかった事だった……?


「えっ、じゃあ今はどうなってんだろ……えー」

「そ、その、親が、子どもの、そういうのを気にするのは良くないと……」

「いや気になるって……鹿倉はどう思う?? 俺どうしたらいい??」

 鹿倉さん、ビシッと言ってあげてくれませんか……


「ユミ様とコウイチ様は許嫁(いいなずけ)という事ですの?」

「中学入ってから付き合い始めたから実質そうだと思う」

「そうなりますと、肝心のお二人の仲というのは親御さんから見ると心配になりますわね……」

「俺、ふたりのためになんか上手くやれる自信無いけど、なんかできないかなぁ……」


「ま、待ってください……」

「どうされました?」

「鹿倉さんは、親が関わるの、大丈夫なんですか……?」

「えっと……自由恋愛というのは存じておりますけども、許嫁が一般的ではありませんの?」


 え、うそ。


「鹿倉さんは……許嫁、えっと……」

「まだお会いした事はありませんが、素敵な方と伺っていますわ」


 世界、違い過ぎた……違い過ぎた……

※よければブックマーク、あるいは評価を頂けると幸いです

※2026年1月18日(日)に京都文学フリマに出店します。

 綺麗な本を作るので楽しみにしてください。

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