裏切り?
〜現在〜
大体の経緯が滝川の口から明らかとなった。本部の製造の銃そして探鳥の団員であることを裏付ける紋章。
(この状況だけで裏切りが最低でも2つ明らかになる。
まず1つ平和主義者なのに武器を持っている。しかも人間製の物を所持しているということは"探鳥が本部から武器を盗み出した"ということになる。考えたくはないが探鳥が我らを裏切る姿勢を見せている。ということ。
2つ目は探鳥の魔族を暗殺することを許可した。ということ、それも本部が厳密な審査を行った結果の暗殺という判断である筈、
つまり暗殺は意図的であるということ。そして探鳥の暗殺許可はとどのつまり本部も裏切りをしている。しかも探鳥と違い現在進行形………。)
「もう考察は済んだか?」
滝川が少し堅い表情を浮かべ、どこまでも続く裏道を見つめていた。
「あぁ、大体の状況はわかった。ただ分かったところでっていう状況でもある。」
「そこで何だが。」
滝川が少し表情を緩めて云った。
「俺たち、本部から独立しないか?」
「………え?」
少し戸惑いはあるが、その提案に乗りたい気持ちもある。悩みはしたが、やはり答えは一つしかない。
「いいぜ、なんか本部の闇も見ちゃったし、どうせ復讐するなら自分で好き勝手したいしな。」
「その言葉、待ってたぜ。この任務を済ませたら、独立の準備を進めよう。」
滝川は安堵しているようだった。目の奥に安らぎの気持ちが漂っているを感じる。
少し進み、山道のような獣道の先に演説会場がぼんやりと見える。5階建だろうか、白くヨーロッパの建築洋式を転用したような、凛々しく、雄大な建造物には驚きを隠せない。とりあえず僕たちは、およそ100メートルまで距離を縮めて、作戦を練ることにした。10分程の議論の末、概略までは何とか完成した。
「まず側面の警備何手薄な排水溝を伝ってトイレまで上り、会場に繋がる配管からおおよそな全体図を把握し、対象を狙撃。という流れだ。」
「排水溝をのぼるのはなかなか勇気がいるが、どうもこうも言ってられない今なら、最善の策だな。」
周りの林が揚々と風に揺られ、草の一つ一つが敵に見えるほどの緊迫した今、極限まで冴えているこの視覚が魔族の声を捉える。しかもすぐ近くからだ。
(おい滝川、なんか魔族の声が聴こるぞ。)
心の声で察したのか、滝川は物音を立たずにハンドシグナルでの会話にシフトチェンジした。
"どうする?"
"とりあえずで声のする方向へ偵察した方がいいんじゃない?"
"10メートル以内に入らない範囲で慎重に行こう。"
作戦に支障が出るかもしれない魔族の声、その正体は、警備の魔族からのものではなく。正門に立ち塞がる民衆のデモ隊であった。
(何か魔族の未だ明らかになっていない政治の情報があるかもしれない。)
その好奇心の元、魔族の動向に目を輝かせ、林に生い茂る草の向こうから、二人揃って傾聴するのであった。