戦争という名の虐殺
魔族の軍隊は、正規兵、民兵含め合計80万を超える大軍隊を誇る。だがその数故の障害や不祥事が起こりやすいという一面もある。
今回も例外ではない。民兵を使用するということはすなわち、敵に(スパイを送ってください。)と言っているようなもの……
今この中にいる魔族は、一部の幹部とその他数体を除く全てが探鳥の諜報員で構成されている。
その軍隊にまともな戦いをする力など存在するわけがない。
数分後には、虐殺という言葉が似合うほど、凄惨な戦場と化した。
そこに人情などあるわけがなく、ある個体の中では目玉を掘り抜かれ、全身が縛られた状態で人間の住処に丸2日放置された。憎悪が魔族に向けられるのは当然だがそれでも、倫理観を捨てたわけではない。
10輝線に入った今でも、戦争は慣れないものだ……。
この戦い、やや不明瞭なところがありはしたが一旦は終結したと言っていいだろう。
大体一時間がたった頃だろうか、暑苦しい獣道を抜けた僕らに本部が放つ少し眩い光がさした。
「やぁ大変だったみたいじゃないか。」
瀧川の声が久しく感じた。
「大変なんてもんじゃないだろ、戦場なんて。」
「まぁな。」
「で、そっちはどうだったんだ?」
そう言った途端、瀧川の表情が強張った気がした。
滝川は戦場に出払った僕の代わりに任務をこなして帰って来たのだ。暗殺なんて喜んでやるものではない。それも戦場の比ではない犠牲が付きものの仕事なのだから。
「……2人死んだ。」
「そうか、よく生きて帰ってきたな。」
今は慰めるしかない。本部の意向として友達との部隊を組んで挑むのだ。目の前で殺された時の衝撃ときたらなかっただろう。
少し時間を空いてから、滝川が口を開く。
「明後日の昼時に名古屋領で政治家級魔族主催の演説があるらしい。」
その言葉に全てを察した。その任務に出るのだろう。今はそっとしておこ、
「俺とお前での共同任務だってさ。」
「………え?」