転生輪廻
あれからもう1時間程たった今でも、頭蓋骨に当たった弾丸の感触が、今でも気色悪いほど伝わってくる。
何も見えず、聞こえず、触覚でさえ途絶えたこの空間で、始めて本物の"痛み"を感じた。
もしかしたらここが地獄なのかもしれない。いやそんな単純であったなら、それでも良いかもしれない。
この空間での記憶は無いはずなのに、何故か僕は"懐かしい"と感じた。
ついさっきまで勤めていた"本部"のように……
<やっと目覚めましたか。>
(!?)
背後から老爺と云って差し支えない細い声が脳内に響く。
まだ喋れず、感じず、聴こえない、はずなのに脳に聲が響く感触は、僕を安心よりも先に怒りへと誘った。
<なぜ、そんなに怯えてるんです?結構フレンドリーに接してあるでしょう?>
(いや知るかよ!なんでこれがフレンドリー……………)「……だと思ってんの?せめて五感を返してから言ってくれよ」
<本音を隠しきれてないですよ>
「うるせ〜。」
老人は、僕の悪態に呆れることも激怒することもなくただ一点を見つめて話を続けている。
<あなたはまだ、真実を知らない。今死なれては困るのです。>
視界が一気に広がり、木材の割れ目が太陽の日差しを通す。古い小屋であるこの場所は、本部急襲が起きる前のいつしか殺害依頼を受けたあの時のままであった。