混血(ハーフ)の奴隷
8:45
瀧川
「俺はここでずっと宮殿?建設の重労働を課せられてきた。」
地下の通路に着くと、魔族の男が強引ながらも声を上げる。俺が銃を向けたことよりもずっと……思うところがあるのだろう。彼の目には俺たちと同じ、復讐の気迫が宿っている。
「まずそこだ。なぜお前は奴隷になってる、同じ魔族だろ。」
「いや、まず大前提が違う。俺は魔族じゃない。」
彼の言葉は信じたいが、獣のような鋭い牙とボディビルダー顔負けの筋量、そして何よりどう見てもオークにしか見えない見た目ではまるで説得力がない。
「じゃあなんなんだ、お前は?」
そう僕が問うと、待っていましたとばかりのドヤ顔で口を開ける。
「それは俺が人間と魔族の混血、いわゆるハーフだ。」
一瞬、いや今でも衝撃が身体中を行き渡っている。混血とは実に1万個体しかいない希少な民族のようなもので、10年前までは区別すらされなかったほどだ。それに生態系の中では一番キメラに近いものだと言われている。化け物だ。
「信じられない……じゃあなんで奴隷なんかに。」
「……俺たちは希少な分、人間は疎か魔族よりも身体的なスペックが高い。ここ10年前まではエリートとして名を馳せた奴らが少数なのをいいことに魔族の奴等に差別され、……今ではこの様だ。」
奴隷というなら人間が大半だとは思ったが、まさか混血とは、味方にすればこれまでにない強力な戦力が加わる事になる。
(俺らの仲間になってくれ。)
そう言いかけた途端"キィィィィ"という物音がした。双方音がした通気口を見ると、そこには盗み聞きをしていたであろう宗輔が、こちらを覗いていた。
「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
混血の男と僕が、初めて息が揃った瞬間である。
8:38
宗輔
「まだあるのか。」
壁を掘れば掘るほど出てくる資料の山に、容易の二文字はなかった。地図、職員の情報、先代の脱獄日記……etc。
どれもこれもが100枚単位で見つかる。壁のそこら中が削れ切ったコンクリートを見つめると、今までの苦労が目に染みて分かる。
3分という時間が1時間に感じた発掘作業はひとまず収束し、資料の調査に移る。書いてあることをまとめてみる。
"・6階建、法隆寺をベースにして心柱を中心に直径60mを目標に、混血と人間が共同で作った宮殿は、元々は魔族と共用する物だったらしいが、魔族がこれを占拠し、宮殿の改修を担当した奴隷たちが脱走を企て、通気口を逃走経路として作った。
・地下通路は元々通っていたトンネルを改造して作ったものである。
・そして混血のスパイが宮殿の職員の中にまじっている。"
ひとまず今わかるのはこのくらいで、後は奴隷同士の関係や職員の汚職行為が書いてあるくらいのものだった。
資料を纏めたその時、今まで見逃していた一枚の資料が目に留まった。
《奴隷番号251455、処刑まであと30日。》
この資料を読み解くのにさほど時間はかからなかった。251455とはつまり、本部所属以前の瀧川の事である。