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コスモスのバス停から駆け出す、負けヒロインにすらなれない私

作者: k.k.

 彼の負けヒロインにすらなれない私は叫ぶ。

「間に合えぇぇーーーーっ!!!」

 カバンの肩ベルトを握り、人目をはばからずスカートを揺らして道を走る。

 授業で短距離ビリ、マラソンは時間切れ、それでも溢れる想いに突き動かされて帰路を全力疾走する。

 彼女が今日家に来ると予告をされたのがショックで、帰らずにコスモスの花が揺れるバス停のベンチでぐだぐだと現実逃避していた。

 しかし考え直すとそんな場合ではなく『帰りたくない……』と、さっきまで悩み帰らなかった自分を逆に悔やむ。

 予告したのでないだろうけど、親どころか姉も不在の今なら彼が大人の階段をあがってもおかしくない。

 不安を振り切る様に首を振り前髪を散らす。

「……彼の貞操は、私が、守る!」 

 年頃なので仕方ないが考えるだけでどうにかなってしまいそうで駆ける。

 重要な事に気づいて駆け出したはいいが、すぐに胸が痛くなり息が上がる。けれど焦りが足を動かせて急がせた。

「好きな気持ちは、負けないんだからっ!」

 こんな日が来るのは分かっていたのに、いざ訪れると行き場のない感情にもやもやする。

 この拗らせた恋慕は隠し通すべきで、告白出来る彼女が羨ましく悔しく、0.1%も彼との可能性が無い私は恋人の存在を聞いて眩暈がした。

 もしもと考えて夜に眠れなくなるけれど、好きと口にしたら気持ちに歯止め効かなくなりそうで怖くもある。

 抑えている片思いの切なさや寂しさの分、一度溢れたら凄い勢いで求め、妊ってしまう可能性を否定できない。

 単なる思春期の依存ではなく、ちゃんとドキドキするし、身体に触れて抱きしめたいし、手を繋いだりキスやその先も夢見てしまう。

 この恋を諦めようと他に目を向けたが上手くいかず運命の人は未だ現れない。

 彼女が来ると聞いて胸にしまった想いが何度喉から出てしまいそうになった事か。

「絶対2人きりになんて、させないんだからあぁぁーーーー!!」

 好きなので拒絶されたら死にたくなる事も、真実を口にしたら関係が壊れる事も理解している。

 それでも私が嫌なので彼女を邪魔する事を決める。

 第一彼が悪い子を連れて来るはずがなく、多分彼女は良い子なのだろう。

 けれど邪魔したい衝動は抑えられず、熱に浮かされたまま自宅の戸を開けた。

「ただいまーっ!」

 嫉妬に塗れた声が家中に響き、姉の必死な悪あがきが始まる。

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