1-3-1-9 豊穣
村の中心の広場に石化した切り株があった。ライラが切り株にそっと触れながら言った。
「これは、一万年前に枯れた巨大樹の切り株。魔法をかけて保存しているのよ。
木が枯れる何千年前から村のシンボルだったらしい。失われた女神の木って、呼ばれているの」
スピカが不思議そうに聞き返す。
「失われた?」
ライラが淡々と説明する。
「元々は、豊穣の神様を祀った木だったの。
でも、一時期、村人がその神様を忘れて、違う神様を信じた時期があったんだって。それで、その神様がどこかにいってしまったの。昔々のおとぎ話だよ。
今でも村人は、神様が戻ってくることを願って、歌や踊りをお供えしてるんだ。人間って勝手よね。でも私、その歌と踊りが好きなの」
広場に巨大な壁画があった。その壁画に描かれているのは、鳩やライオン、月と星、女神だった。
あれ、この穏やかな顔の女神、確かにアスタロトに似ている気がする。
やっぱりピーちゃんが言っていた通り、この村では今もアスタロトの帰りを待っているんだ。
俺は、変わり果てた禍々しいアスタロトを思い返す。あまりにも違いすぎる。
広場で壁画を見上げていると、部下を連れた女性が話しかけてきた。
「おやおや、客人かな、ライラ?そうか、ホラ吹きザイドのな。
私は、この村の村長アーシヤだ。なんだ、お前、角が生えているじゃないか。まさかお前も悪魔の手下じゃないだろうな。
祭りが終わるまで牢屋にでも入れておくかい?」
いつもお読み頂き、ありがとうございます!
もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
評価ポイントをいただけると、ありがたいです♪
毎日投稿して、応援を形にしてまいります。
これからもよろしくお願いします。




