1-1-3-2 笑顔
夕暮れ前、俺は、気がつくと貯水池の脇の廃ビルの屋上にたどり着いた。1人になりたい時に、いつも訪れる場所だ。
そこには、やっぱりスピカが待っていた、
「遅かったわね。コフィは、嫌なことがあるといつもここで泣いてる。ほら、サンドイッチ。朝から何も食べてないでしょう?」
俺は、スピカの顔を見ずに、屋上の縁に座っているスピカの隣に座った。
スピカがサンドイッチを小さく千切った。
俺は、ほっとした気持ちを悟られるが嫌で、スピカと目を合わせたくない。
「いらないよ。何も食べたくないし。なんで俺に構うんだよ。無様に悪魔に魅惑されたのを馬鹿にしにきたのかよ」
「アハハッ!ほんとそうよね。バカみたいに骨抜きにされて。間抜けな顔をビデオに撮っておいたから、見る?」
「やめろよ!恥ずかしい!おい、頼むから!」
「あははは!お腹痛い!うそよ、うそうそうそ。ビデオなんか撮ってる訳ないじゃない。焦りすぎ。いいから、早くこれを食べなさい」
スピカが笑いながら俺の口に無理やりサンドイッチを詰め込んできた。
俺は、仕方なくサンドイッチを食べる。一口食べると、空腹なことを身体が思い出したみたいだ。貪るように一気にサンドイッチを食べた。
スピカが水筒からコップに水を入れてくれた。
「ちゃんと水も飲むのよ」
俺は、スピカの手からもぎ取るようにコップを取ってゴクゴクと喉ならしながら水を飲んだ。
それから、やっとスピカの顔を見た。
「ありがとう。俺、生き返った気がする」
スピカが眩しいくらいの笑顔を俺に見せた。
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