8話
3日後。
昨日と一昨日に行った雑貨屋とカフェではケーキ屋の店主としたのと同じような内容の話をしたから割愛。
ブティックでは面白い話を聞くことができた。
「ごきげんよう、調子はどう?」
「シャルローゼ様!お世話になっております。おかげさまで、売り上げの伸びが恐ろしいほど伸びておりまして。」
ちょうどお昼時を選んで来たから今お店の中にお客さんはいない。
このお店は少し内装が狭いのだけど、十分な広さがあったから庶民服と少し高級な服を置いたらどうかと勧めた。
いわゆる“庶民の憧れ”的な存在を目指す作戦。
そもそもで庶民服のブティックなんてないの。
この店も下級貴族向けの物ばかり売っていた。
それを良質な庶民向けの服を売る店に改革した。
他のお店でも勧めたように目玉商品を置くことを勧めたら、この店では白黒ボルドーの3色展開のシンプルなブラウスを目玉商品とすることにしたらしい。
また、このブラウスはほぼ原価で売っているんだって。
このブラウスと少し高めであるワンピースやスカートを一緒に買うことでスカート類が少し割り引かれると言うシステムだった。
「あなたが考えたシステムなの?よくできていると思うわ。セールや割引に弱い人って多いもの。」
「あ、いえ…。実は、娘が考えたのです。目玉商品に3色展開のブラウスを置こうと思っていることを言うと、ギリギリまで安くしてスカートとセットで購入することでスカートを少し割引にしたらどうかと言われまして。」
え、すっごく優秀な娘さんじゃない。
すでに経営戦略をわかっているかもしれないわ。ファッション限定かもしれないけど。
「そういえば、女性騎士団を作るっておっしゃってましたけど順調ですか?」
「ええ、今は宿舎を建てているの。最終的に23人が正式に入団することになったのよ。」
そう、4人は親に反対されるとかで入団できなかった。
「そうなのですね!ちなみに騎士団の名前とかは決まっているのですか?」
「いえ、独立した騎士団ではないの。白龍騎士団の女性騎士隊って言う位置付けね。だから名前は第16隊になるわ。」
「まあ、恥ずかしい…。そうですよね、白龍騎士団所属になるはずですよね。うちの歳の離れた従姉妹が、夢が叶うかもしれないと張り切っているんですよ。」
お客さんがいないのでしばらく世間話をしていると、店長はこんなことを教えてくれた。
「実は今、王都で小説が流行っているのですが…、これがかなりタチが悪いんです。娘と王都に行った時に娘にねだられた恋愛小説なのですが…。」
店長の話を要約するとこう。
特待生として貴族の通う学園に入学したヒロインである平民の娘が皇太子と恋愛する。
要はメイとアランの話を美化できるだけ美化した物。
上巻と下巻とある話で、上巻の内容は主に学園で2人が恋愛する話なんだけど下巻はそこに皇太子の婚約者である悪徳令嬢が登場してヒロインを虐めるという内容だった。
上巻は恋愛小説として大人気だが、下巻は評判が悪くバッシングが多いらしい。
特に貴族から。
「なるほど…。でも、別に良いわよ。これが殿下とメイ、私のことであるというのはなんとなくわかるでしょうけど、自分の評判くらい自分で操作できるわ。こんなので私の評判が落ちるわけないじゃない?」
帰り支度をしながら聞いていたんだけど、帰り際にそう言うと店長は「その通りです!」と笑った。