6話
次の日。
お父様から渡された大金を前に、私は頭を抱えていた。
「アーネスト〜、どうしよう。どうやってもお金が足りない。」
「シャル…。君は何をしようとしているんだい?」
「女性騎士の育成!」
お父様から言われたのは、このお金を使って何か事業をしろって言うこと。
私は、女性に継承権が認められたことに目をつけて女性騎士を育てようと思ったの。
でも、新しく宿舎を建てないといけなかったり鎧をオーダーしないといけなかったりと物凄く費用がかかるの。
お父様から大体600枚の金貨を貰ったんだけど、計算の結果どれだけ費用を詰めてもちゃんと規格に沿った建物を建てたり性能の良い鎧を作るためには750枚は金貨が必要だった。
建物は最大35人入るサイズだから70枚あれば建てられるけど、鎧は素材にも拘りたいしゆくゆくは私直轄の騎士隊にしたいから見た目も拘りたい。
素材は1人分につき大体12枚くらい。
工場への依頼は急がせる場合1人分で13枚くらい。
高性能の鎧を作るのにどれくらいかかるかお父様に聞いたら返ってきた答えがこれ。
さらに、デザインも拘りたいからデザイナーへの依頼で30枚。
「ちなみに、騎士の募集はしたのか?」
「したわ。集まったのは27人よ。そのうち剣術とかの経験がない方が12人。集まった人のうち大体はうちの領内に領地を持つ傘下貴族の娘だったわ。」
「多いな!?」
少し前にミニ飢饉があって、生活が苦しくなった家が多いからね…。援助はしたけど、なかなか立て直すのが難しい家もあるみたいだった。
「う〜ん…ちょっとお金を増やしたほうがいいわ。」
◇
と言うことで、私は投資をすることにした。
エステリアの中央商店街があるんだけど、そこのお店で経営が困難になった店に資金援助と経営指導をするの。
商店街内の建物は全て立地がいいし、何代か前のエステリア公爵が商店街を作った時に競合店が少なくなるよう店を誘致したから、色々改善させたら業績は上がると思うの。
中央商店街の大通りに店を構えている時点で優良店であることは間違いないもの。
そして、売上の一部を納めさせる。売り上げ高に応じて割合を上げてね。
それを、私は金貨200枚使って4店舗に行った。
ケーキ屋、ファッションブランド、雑貨屋、カフェの4店舗。
そもそも金貨が2枚あれば、一般庶民は1ヶ月何不自由なく暮らせるほどの価値がある。
一般店舗の1ヶ月の売り上げ平均は金貨8枚ほど。
1店舗につき50枚の金貨があれば建物全体を改装して従業員5人を約1年雇うことができる。
商店街を歩いて実際の客足を確認した私の見込みだと、200枚の金貨は4ヶ月で回収できそうだった。
◆
店の様子を結構な頻度で確認して行っているんだけど、カフェとファッションブランドは今すっごく伸びていて月の売り上げはそれぞれ金貨40枚を超えていた。
右肩上がりでどんどん伸びているから近いうちに50枚を超えそう。
ケーキ屋と雑貨屋も25枚は超えているから4店舗とも優良店であったのに変わりはないわ。
ちょっとアドバイスしただけでここまで伸ばしたんだから経営者すごいわよ。
私はカフェとファッションブランドから売り上げの30%、ケーキ屋と雑貨屋から20%もらっていた。
本当は10%でも多いかなって思っていたんだけど、私が女性騎士隊を作ろうとしているって話がどこからか伝わっていたらしくて応援も兼ねてそれだけ納めてくれたらしいの。