35話
「シャルローゼ、1週間後に爵位を渡そう。パーティーの準備も進めておきなさい。」
「はい。わかりましたわ!」
パーティーの次の日、私はお父様に呼び出されてそう言われた。
1週間後に18歳の誕生日があるからね。
18歳になれば後見人がいなくても爵位を継げるから、大体は18歳での継承が多いかな。
アーネストが18歳で継がなかった理由は、もともとアーネストじゃなくて分家からの養子がリンドガルト家を継ぐ予定だったかららしい。
でもその養子が酒場の娘と駆け落ちしたから、アーネストに回ってきたんだって。
そのためアーネストは通常より5年遅く後継者教育が始まったわけ。
それで、爵位を継ぐのが遅くなったとか。
さて、自室に戻ってきたわけだけど、私は今日やることがなかった。
理由は、昨日終わらせる予定だった仕事がキリが悪くて、キリがいいところまで終わらせようと思ったら3日分の仕事をしてたって言う。
昨日はあれだけ机の上に積み上がっていた書類も全てなくなっているけど新たなものが今日は入ってこないから机の上は綺麗だった。
「お嬢様、久しぶりにお出かけでもされますか?」
落ち着きがなく部屋の中をぐるぐる回りながら「暇だわ〜。」と言う私を見て、フィリーナがそう提案してきた。
それいいかも。最近街に行ってないからね。
やっぱり上に立つ人間として領民とコミュニケーションを取るのは大事ってね?
「そうするわ!そうね、ずっと城下町にいたし、エステリア領で買い物でもしようかしら。」
「かしこまりました。準備いたしますね。」
「あ、メイド服じゃなくてこの前新しくあげたドレスを着てちょうだい。」
「はい、着替えてまいりますね。」
フィリーナはそう言って、馬車を用意してもらいに行った。
護衛はどうしよう。フィリーナがいるからいなくてもいいかな。フィリーナは戦闘もできる万能メイドだからね。
私も外出用のコートを選び、それを着て部屋を出ると、ちょうどフィリーナが私の部屋に戻ってきた時だった。
この前あげたドレスっていうのは、パーティーで着てもらったものではなくてフィリーナのために買った緑色のワンピースドレス。
フィリーナのためにオーダーメイドした、丈夫な生地のドレスなの。
フィリーナは雇用上メイドだけど、実質侍女だから最近は遠出する時はドレスを着てるかな。
高位貴族の間には侍女はドレスっていう風潮があるの。
財力を示すことにもなるわ。自分の侍女にこんないいドレスを着せられるのよって感じ?
だから、たまに貴族と変わらないドレスを着てる侍女もいる。
フィリーナには素材はいいけど派手ではないドレスを着せてるわね。
馬車に乗ってエステリア領につくと、広場に停めた直後に子供たちが真っ先に馬車へと駆け寄ってきた。
やっぱりこの馬車目立つからね…。
馬車を降りると、子供たちが我先にと話しかけてくる。
「シャルローゼ様!ねえねえ、綺麗な花が咲いたよ!」
「新しいケーキ屋ができたんだ!美味しいから来てみてほしい!」
わーっと話しかけてくる子供達にうんうんと相槌を打ちながら、ちょっとずつ歩き出した。




