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第4章 ~絶対国防圏~(4)

 久しぶりの投稿になります。

年末から先月まで同居の父の闘病と逝去で心が折れていました。

また不定期更新ですが、再開させていただきます。

宜しくお願い致します。

*************************************************


 「北伐軍第二軍団より、緊急要請通信・(折れた(ブロークン・アロー))が発信されています!!」


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 キルナ要塞線をほぼ全線に渡り制圧・占領し、主力部隊の攻める最終目標・クーアラントの首都ヘルシニアに向け進軍を開始しようとしていた北伐軍別動隊の通信士官が、思わず魔信機の前の椅子から飛び上がるように立ち上がり、狼狽えた大声を上げた事に仮設司令部内が騒然となった。


             ~ 緊急通信・折れた(ブロークン・アロー) ~


   それは、ここ15年は発信されていない、また、発信されてはならないものだった。



 その意味は、部隊が全滅寸前で、ありとあらゆる友軍に可能な限りの援助を要請する(最後の)救援要請である。この通信を受信した場合、ビザニア帝国軍の正規軍はおろか諸侯軍・貴族私兵部隊や町の衛兵隊ですら直ちに最大限の援助と加勢を義務付けられた(絶対助力義務)を紐づけられた恐るべき通信である。


 「間違いではないのか?!もう一度確認せよ!・・・っ痛!」


 外で出発準備中に報告を受け、幕僚連を連れ司令部建屋に慌てて入ってきた別動隊総司令官のモルト伯爵上級将官が走り寄ってきて、作戦図や地形図を広げた大テーブルの角に腰をぶつけて悶えつつ叫んだ。余程慌てている様子だ。

 彼らと一緒に仮司令部にすっ飛んできた、中央要塞攻めの元囮役で現在は合流した第三軍団の司令官ハルトン法衣子爵中級将官や幕僚長ゴルツ名誉男爵下級将官らはそんな騒ぎには目もくれず魔信機の音量を上げる。「聞こえんわ!静かになされいっ!!!」


  「ガガッツ・・・・さ・・の援要請通信・折れた(ブロークン・アロー)、折れた(ブロークン・アロー)、こちら北伐第二軍団。繰り返す、折れた(ブロークン・アロー)・・・・全め・・恐れ・・・ガッ・・・・ザーーー・・」


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 「(折れた(ブロークン・アロー))だと!!オテルの奴め、いったい何をしている!!」


 聖都・ヘルシニアを目視できる小高い丘の上に布陣し包囲攻城戦の真っただ中で指揮を取っている最中に、伝令として全力で走り寄ってきた真っ青な顔の通信士官から報告を受けた北伐軍総司令官モルガン選帝侯元帥は馬上で思わず振り返って怒鳴った。

 だが、「落ち着いてください、閣下。」と(息子)から声を掛けられ辛うじてそれ以上の罵声を飲み込む。


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 「通信参謀は直ちに通信の真偽を確認、それとは別に携帯型魔信を持った通信小隊を第二軍団進軍予定進路のナッキュ湖近隣の街道に3部隊騎乗で派遣せよ。軽騎兵小隊も6部隊を3手に分けて露払いに先行させ、接敵の有無を通信小隊に常時連絡。15分置きに連絡を取り、もし連絡が途絶えたり異常があれば直ちに報告せよ。通信には規定にある特別な暗号符号を使用。間違えた者からの通信があればそれが敵の可能性大。気づかぬ振りをして泳がせる、直ぐに報告せよ!さあ、急げ!時は金貨よりも貴重だぞ!!」


 怒れるモルガン大将軍の隣で、馬から降りた総参謀長のクルト・モルガン法衣伯爵上級将官が冷静かつ堂々と指示を出す。その姿を見て、浮足立ちかけていた幕僚達も落ち着きを取り戻して(さすがはモルガン選帝侯家の血筋)と信頼を深めた。


 だが、クルトは顔にも態度にも出さないが内心では本気で拙いと考えて次の策の実行を思案していた。

 ありえない事とは思いつつも、最悪の事態を想定して事前に立案していた撤退作戦である。


 (軍人とは、最良の結果を期待しつつも、最悪の結果に備えねばならない。)

それを、概念としての理解ではなく常時認識して(行動)していた。


 それだけでも、クルトは血筋で将官になった貴族軍人の範疇に含まれない真に天才的な名将であった。傍系でありながら父のフィリップに愛されるのも当然の事と周りも思っている。って言うか、後を継いでほしいと親族一族寄子部下から全周包囲位の人望がある。


 そして、彼は単に情誼に厚いだけではなく、必要であれば非情にもなれる強さを持っている。


 (補給が受けられねば、戦勝どころか撤退も不可能だ。(折れた(ブロークン・アロー))が真実ならば、第二軍団は壊滅、または救援され全滅は免れたとしてもこちらへの補給も合流も難しいだろう。・・・このままでは、継戦能力は保って5日。ならば、情報を集め精査し2日様子を見て状況が絶望的と判断したら、変わりは幾らでも居る平民士官に指揮を任せて移動速度の遅い重装歩兵や魔動機に足手まといの軽装歩兵と特科部隊を捨て駒として残して時間を稼ぎ、迅速に撤退できる将官・貴族士官と騎士に軽装にした騎兵のみで北国街道を残りの魔晶石をつぎ込んでバフをかけて一気に南下し別動隊に合流するしかない。残留させた殆どの部隊は全滅か降伏するだろうが、幸いここには帝国正規軍部隊のみで、モルガン選帝侯家の諸侯軍は居ない。今回の敗戦で父は一時的に政治的には苦しい立場になるだろうが、モルガン選帝侯家の腹は傷んではいない。寄子貴族の縁者と帝国騎士階級の者達さえ見捨てず撤退すれば、(家)の求心力は維持できる。)


 きわめて貴族的な発想ではあるが、専制君主国のビザニア帝国ではそれが当然であり平民の命など統計上の数字としか認識されていない以上、これが最善の判断である。


 (とにかく、情報を集めることに全力を尽くす。判断は、その上でだ。)


 クルトは、協力を仰ぐため叔父のシャンパーニュ将軍に伝令を出した。




 


 肝心のオテル将軍率いる北伐第二軍はとうなったのか?

次回に乞うご期待。

 宜しくです。

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