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第4章 ~絶対国防圏~(3) ナッキュ湖畔の戦い

続けて投稿させていただきます。

拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。

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「昔学んだ、ベルリンのリヒターフェルデ プロイセン王国陸軍士官学校の教科書通りの展開だ。ハンニバル率いるカルタゴ軍とローマ帝国軍の会戦の焼き直しだな。」


 裕太は眼下に見えるビザニア帝国軍第二陣部隊の混乱ぶりを見下ろしつつ呟いた。


「士官学校では、模擬試験で2年下のマントイフェル将軍あたりがこう言う作戦が得意だったな。一次大戦後、食うに困っていた時、義勇軍(フライコール「フォン・オーフェン」では、彼に世話になったっけな。」


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「うわああああ!!何が起こったんだぁ!」「とにかく火を消すんだ!焼け死ぬぞ!」「馬を鎮めよ!蹴り殺されるぞ!!」


 前方も後方も塞がれて立ち往生して身動きが取れず、更に悪いことに密集体形で行軍していたため周りの友軍兵にもみくちゃにされてビザニア軍は最早壊乱状態である。


「撃て撃て撃てーー!!!」「ヒャッッハーーー!!! 殺せえェェェー!!」「ファイアーランス!!」「サンドバレットオオー!」「スオミの敵討ちだ!容赦するなぁぁ!!!」


 クーアラント非正規軍(仮)はここぞとばかりに油を投げ、スリングを撃ち、弓矢にボルトに弩弓まで乱れ撃ちに撃つ。


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 「くそっ!長槍隊、崖上の敵を刺し殺せ!」「弓系隊、何をしているか!撃て!」


 ビザニア帝国軍の騎士士官が大声で叫んで命令するが、密集体形で行軍してきた長槍隊は槍を取りまわすことも出来ずに炎に包まれて絶叫しつつ転げまわり周囲の歩兵や弓兵たちも巻き込んで大混乱に拍車をかける。

 

「敵に反撃の機会を与えるな!今が押し時だ!!湖に叩きこめ!!」


 裕太は魔信で全軍に攻撃を続行するように命令する。


「おらー!キツイとこ一発叩き込めえェー!!」

「冒険者達、押せ!ただ、押すのじゃ!」


 (暁の長槍団)のグスタフ団長と、ロンバルディア王国冒険者ギルドのサブマスター・クロック翁が皆に発破をかける。



 「ぎゃあああ!!!」「熱い!熱いいいい!!!」「助けてくれえェェー!」



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     最早街道は全線に渡って火の海となっていた。




 「今だ!長槍隊、敵を湖に押し込むんだ!」


 裕太が命ずるが、それ以前にビザニア帝国軍兵は火を消そうと本能的にナッキュ湖に自ら飛び込んでいく。



 動きを大幅に制限する重い鎧や、釣りの重りの様な剣やウォーハンマーやメイス等の武器を腰に下げたまま。



 フィヨルド的な湖に。



「アブッツ、深・・・」「ぼふっつ・・」



 ビザニア帝国軍兵達は、飛び込んだ先からナッキュ湖に消えていく。



 まるで、池に投げ入れられた小石のように。



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 街道上では、油を浴びて火達磨になった軍馬や荷駄馬たちが、悲壮ないななきを上げながら走り回り同じく火達磨のビザニア帝国軍兵を跳ね飛ばし踏みつぶして暴れまわっている。


 ビザニア帝国軍兵は次々と火に包まれ、頽れていく。


 火を消して生きようとして、ナッキュ湖に沈んでいく。


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 「・・・・・酷え・・」「・・ここは地獄かよ・・・」


 崖上のクーアラント非正規兵たちが、あまりの光景に攻撃も忘れて見入っている。



 「トラシメヌス湖畔の戦いの応用拡大版だな。まぁ、本家は火は使わなかったが。」


 裕太は火炎地獄と化した街道を見下ろし、誰にともなく呟いた。


 「軍人として敵を殺しに来た以上、自分が殺されることも甘受すべき。」



・・・・・・・・裕太(マイヤー砲兵中将)の顔は、荘厳とも言える厳しさを醸し出している。


 その身に纏った独逸陸軍中将の軍服の襟元にある、騎士鉄十字章が炎を反射してキラリと光っていた。


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 「なぜここに敵がいる?!クーアラント軍はヘルシニア強襲に対峙しているはずなのに!」



 第二陣の司令官・オテル上級特科将官が火達磨になり崩れていく部隊を見て絶叫する。


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 後方の安全地帯を移動する大前提で、迅速な行軍の為に重装騎兵や重装歩兵隊の装備を脱がせて荷駄隊や非武装の御用商人達の荷馬車隊列に搭載させていた為、ビザニア帝国軍部隊は急襲に対応できずに次々と壊滅していく。しかも、基本内陸国のビザニア人に水泳の技能はない。



 「武装を捨てて服や靴を脱いでから湖に飛び込むんだ!鎧や剣は重りでしかないぞ!」



 南方に海のあるミルヒ自由国で幼少から過ごしたオテル将軍は、海上交易も学んでおり水泳の技能があったため周りの兵達に大声で呼びかけた。


 しかし、周りを火炎地獄に囲まれ退路も断たれ、完全に恐慌状態に陥ったビザニア兵達は聞く耳も持たずに着衣武装のままナッキュ湖に飛び込んでそのまま吸い込まれるように消えていく。



 此処が後方の安静地帯であると言う大前提が崩れ、敵の張った罠にかかった現状を、オテル将軍はハッキリと認識し可能な限り損害を減らす為決断を下した。


 もう無理だと。



 「もはやここまでだ。全滅する前に皆、裸になって湖に飛び込むぞ。泳げない者は木片や木の樽・箱でも何でも持っていくんだ!通信士官、魔信で可能な限りの部隊に伝達!とにかく泳いで、生き残って湖の対岸に転進せよと!」


 オテル将軍は周囲を固めている幕僚や護衛兵達に、厳しい顔で命じて率先して裸になる。

 

 周りは戸惑いつつも、最高司令官自ら範を示している以上慌てて従い馬を捨て鎧を脱ぎ捨て裸になって、先頭を切ってナッキュ湖に入っていく上官に続くのだった。






なるべく早く続きを投稿いたします。

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